かつての香港には海外投資を目論む投資家のために、ツアーが組まれていた時期があった。当時参加した人の経験談によると、一つには得られる情報に限りがあった、だから最前線に行く魅力があったのだという。そして半世紀もたたぬうちに、インターネットが普及し、誰でも世界中の情報が手に入るようになった今、果たして香港への資産運用ツアーが復活するのか、考えてみたい。

資産運用ツアーの謳い文句

そもそも一体どんな目的で資産運用ツアーに参加していたのだろうか。

  • 海外に目を向けて、投資の選択肢を増やしたい
  • 既に海外投資を始めており、具体的な活用方法を学びたい
  • 個人旅行では訪れにくい金融機関を回りたい
  • グローバルな金融知識を持つアドバイザーと話してみたい
  • 同じ志向をもった投資仲間と交流したい

謳い文句としてはこんなところだろうか。

今でも投資サークルや投資サロンは生まれては消えていっている。怪しいものも怪しくないものも。投資をする上でどこから情報を仕入れるのかによってその後は大きく変わっていくのだろう。そのこと自体は間違っていない。ただ今は、日本にいながら例えば米国株に当たり前のように投資ができるようになり、もっと違った視点で海外投資が見えているのではないだろうか。

資産運用ツアーで得られたもの

コロナを経て、資産運用ツアーなるものは急減したが、一部にはあったとも伝え聞くところではある。とはいえ、かつてのようなブームはない、というのが業界人の共通認識ではあろう。むしろ、過去に資産運用ツアーに参加し、香港に何らかの痕跡を残した方々が、その足跡を辿る時期に来ていると言ってもいいと思う。

果たして当時の取り組みはどのような形で結実しているのだろうか。もちろん、昔話として楽しく語る方々はいるものの、どうだろう、過半数を超えるくらいの人たちにとっては、思っていたのと違う結果になっているような気もする。

  • 全然資産が増えなかった
  • 手数料ばかり高かった
  • 担当者がいなくなってしまった
  • よく考えたら無謀だった
  • 何一つ特別ではなかった

そんな声も多く聞く。一方で、資産運用ツアーがきっかけとなり一財が築けた、という声はあまり聞かない。

とはいえ、海外に資産を持つ以上、年齢を経る毎に出口戦略のことは気になる。体が思うように動くうちに、若かりし頃の出来事に整理をつける、そんなタイミングに来ているのかもしれない。

香港の金融サービスも10年もすれば様変わりする。自らが取り組んでいることが時代遅れになっていないか、チェックすることは大切であろう。

日本と香港で違う点

かくいう私も同じ金融業界で働いてはいながら、日本から香港に渡ってきた人間である。そう、日本と海外は違う、日本と香港は違う。今の私の仕事を日本で同じようにできるか、というとそうではないと思う。そのあたりの感覚がどこから来るのだろう。

香港という土地を表現するときに「生き馬の目を抜く」人たちばかりの厳しい業界だ、という人は少なくない。確かに、税金の安いこの場所には、稼ぐことしか考えていない、というか稼ぎ続けることに何よりも一生懸命な人が数多くいるのも事実ではあると思う。が、まぁそんな厳しいことばかりではなく、楽しく日々を生活していくことだってできる。器用になればいいだけのことだと思う。

香港全般というより、香港の金融に絞って話をするならば、国際金融都市としてこれほど希有な立場の場所はないと思う。通貨が米ドルにペッグしている以上アメリカと無縁ではないし、歴史的な経緯からイギリスと無縁ではないし、そして今は地理的な観点から中国本土と無縁ではない。最も立ち位置が曖昧であり、そして機動的である、そのことは香港の金融の今を根底から支えている。

ただ、ツアーで来てそれを感じられるものなのか、私にはよく分からない。海外というのは観光で来るのでは分からない素顔があり、住んでみて、そして働いてみて初めて分かるものがある。飲茶を楽しんで夜景を見ながら美味しいお酒を飲む、その少しでも先のバリエーションとして資産運用ツアーがありなのか、なかなか腑には落ちない。

結論

観光以上のものを求めたいというニーズは引き続きあると思うが、資産運用ツアーとて、観光ツアー同様、決められた場所に行き、予め用意されたものを見に行くことにはなる可能性がある。そこで見るものが、本当の香港ではないかもしれない、ということは頭の片隅においておきたい。それでもいいのだ、という人は一定数いると思う。自分の目で見て歩くのが好きな私だってたまにお手軽なツアーの良さを感じることはある。ただ、もっと他に見るものが香港にあるのではないか?少し考えてみたいと思う。

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