2024年に新たな加盟国を迎えたことで改めて注目が集まるBRICSだが、今後の世界経済でどのような役割を担うのか考えてみたい。
目次
BRICSとは
BRICSというのは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国からなる新興経済圏・首脳会議のことで、それぞれの国名のアルファベットの頭文字を取っている。構成国の特徴は、広い国土、多くの人口、豊かな天然資源が挙げられ、今後大きく成長することが期待されている。
2024年には、サウジアラビア、イラン、エチオピア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦などが加わるとされたが、サウジアラビアとアルゼンチンについては、その後正式には加盟を表明していない。ただし、それ以外にも40カ国以上が関心を示しているとされ、今後も拡大していく見通しである。
このような展開の中でも、新規加盟国を含め、BRICS+と表現されることもあるが、西側諸国中心の世界秩序(G7等)に対抗するための旗印的存在であるのは確かだろう。
BRICSの勢い
単なる新興国連合と考える人も多いかもしれないが、急速に勢いを増す可能性がある点について、この段階で認識はしておきたい。
BRICSのメンバーの利害が完全に一致するとは考えづらく、統率がとれているものでもないとされているが、経済力と貿易力においてはとても強力な集合体とは言える。BRICSでの共通通貨の導入も一つの目標ではあり、脱米ドル、米国からの経済制裁回避が課題になっているのは間違いなさそうだ。国際協調と言いつつ、既存の国際的な枠組みの中では自分たちの意見が反映されないと感じている国が多いのも背景にある。
世界経済の牽引役へ
現状はBRICSの役割は、経済的な連携が主であり、それぞれの国の経済成長を通じて世界経済の安定に一役を買っていると言える。
先進国との繋がりは当然重要でありながらも、それに依存し、翻弄されることなく、それぞれの国の課題を解決していきたいと考えている。その中で当初5ヶ国は世界経済をリードする存在であり、今後もますます存在感を増すことが予想されている。一国で成長することよりも、お互いに成長を促進し合う関係性にあることが、翻って先進国への牽制になると考えているのかもしれない。
なお、VISTAの国々(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)はかつてポストBRICSとも言われていたが、足元の動きはBRICS+への関心に向かっており、先進国による枠組みへの反発という連帯感が強まっている、と捉えることもできるのかもしれない。
グローバルサウスとの違い
BRICSの主軸がロシアと中国であるのに対して、同じくメンバーであるインドとブラジルが主導するのがグローバルサウスである。名前の由来は南半球の国々の総称としての位置付けだが、現時点で厳密にどの国が加盟している、というものでもない。共通点があるとすれば、大国による経済摩擦、軍事摩擦に対して中立的な姿勢をとり、当事者となることを避けながら、覇権争いによる影響から最終的に国を守ることを考えている点である。
同盟を結ぶことが結果的に緊張を生むという考え方は根強く、グローバルサウスが非同盟の考え方を維持するのかどうか、今後形を変えていくのかで世界の勢力図を変えていく可能性はある。
新開発銀行(NDB)
もともとBRICS開発銀行とも呼ばれていたものであるが、本部が中国上海にある新開発銀行(New Development Bank)がメンバーを増やしているようである。先進国主導のIMFや世界銀行に代わるものとして、グローバルサウスからも期待されている。
BRICSはあくまで軍事同盟ではないことから、経済的な相互支援の観点から、新開発銀行のような仕組みを通じて連携を深める、というのが現実的な展開として選ばれているのかもしれない。
BRICSに注目すべき理由
国家間の連携には二国間のもの、複数国間のもの、国際機関のものなど多岐にわたることから単純な論理を見つけるのは難しいものの、G7とは全く別の視点を提供するという意味でBRICSがどのような視点で物事を展開していくのかは注目しておきたい。
単なる対立構図としてではなく、パワーバランスの変化が政治や経済等さまざまな場面で複雑な展開を見せる可能性があるからである。国際関係の多様な見方は投資家として学ぶべき格好の材料を提供してくれそうだ。