金利が上昇すると、国債も投資対象になりやすくなりますが、そのときに押さえておくべきポイントをまとめて見たいと思います。

国債という金融商品

国債は基本的には一番安全な金融商品と言われます。国が発行している債券で、元本割れがないとされるからです。このことは日本の財務省のホームページにも書いてあります。ただ、基本的には、とつくのは、国が潰れない、ということを暗黙の前提としているからでもあります。

その意味では、すべての金融商品の価格形成において、国債の金利がベースにある、と言えます。なぜなら、リスクがあるものとないものの間には価格差が生まれることが自然であり、リスクの程度に応じてその価格差が縮まったり広がったりすることになるからです。

国債は売買しやすい

金融商品の売買のしやすさは、市場での流通量に由来します。だからたとえ上場していても中小企業の株式は売買しづらい一方、国債は大量に発行されているため、金融市場でも毎日のように取引されています。単純に投資対象として買ったり売ったりしている人もいれば、担保として保有していたりする人もいます。仮に大量に発行されていても、最初に手にした人が誰も手放さなければ市場は形成されません。様々な人が様々な目的で取引を行っていることが金融市場の成立のためには重要なのです。

誰もが認知していて、かつ価格を決めやすい、という点で、国債は他の金融商品にはない特徴を有しているわけです。

安全でも損失はあり得る

元本割れがない、という点について既に書きましたが、このことは損失が出ない、ことを必ずしも意味していません。

国債には年限があり、国債の価格は年限の長いものほど大きく変動しやすいという特徴を持っています。一般にはこれは金利リスクとして認識されています。国債の場合、社債のようにデフォルトの可能性というより、金利リスクがもっぱら議論の対象になる理由です。だから、例えば買ったときより金利が上がれば、評価損は出ることもあるし、実際に売却すれば損失になり得ます。

また、安全な金融商品であるがゆえに、リターンは低く、中長期的にはインフレには勝てない可能性が高い、と考えられます。もちろん銀行預金よりはマシかもしれませんが、インフレに勝てなかったのであれば、損失という数字が目には見えなくても、やはり資産価値としては目減りしていることになります。

あと、当然ですが、外国の国債に投資していれば外国為替差損が出ることはありますが、これは直接国債での損失というよりは、為替による損失になりますけどね。

国債でもキャピタルゲインは出る

逆に言えば、国債だからといってキャピタルゲインが出ないわけではありません。例えば買ったときより価格が上がることはあります。(なお、個人向け国債ではそれはありません。)国債の価格は買ったときより金利が下がれば、評価益となるからです。あるいは割引債のような形で購入したのであれば、利息がない代わりに、時間の経過とともに満期が近づくので価格が上がり、評価益となります。

債券は株式より安全か

国は株式を発行していないので、少し広げて債券と株式の話をしておきます。企業が資金を集めるのには様々な手法がありますが、主に債券と株式です。企業が倒産したときに、残っているものを清算して分配しますが、まず債券保有者に優先的に支払い、それでも残ったら株式保有者に支払う、というのが基本形です。

だから、債券の方が安全というのはその点では正しいでしょう。一方、債券はある種の借入ですから、無借金経営を保つ企業もあるように、債券をあまり発行しない企業もあります。無借金経営の企業の株式と、債券を大量に発行している企業の債券とどちらが安全か、と言われると要検討なのは言うまでもありません。

国債の安全神話を信じるべきか

色々話を聞くにつれて国債はリスクが相対的に少ないのではないか、と感じた人もいると思いますし、実際そういうセールストークに納得して国債を買ったことのある人もいると思います。

一方で、国債は中長期にわたってずっと持ち続ける運命に陥ることがほとんどです。逆に短期の国債保有を勧められることはあまりないでしょう。(手数料が十分とれるほど利回りがないことも一因です。)もちろん中長期目線での投資は推奨されますが、数年もすれば経済環境が変わり、金利水準も変わります。先ほどのインフレの話も同様、中長期には思っていたとおりの結果になるのか分かりません。

また、国債を買うなら当然政府の財政状態を気にすることになります。少し目線を変えて、地方政府ならどうでしょうか。一般には国債よりも地方債がリスクが高いとされます。実際、日本でも地方自治体が破綻したことはありますよね。だから、公の組織だから破綻しない、というのは正しくありません。

それに少し目線を変えて、国ごとのに財政状態は違います。借金が多い国もあればそうでない国もある。税収の内訳も違います。世界を見れば過去に何度も経済破綻している国もあります。国債は安全、と一言でまとめてしまうにはやや難があるわけです。国債だったら大丈夫、と思う前に、様々な国の国債の状況について見てみるといいかもしれませんね。

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