2025年4月2日にトランプ米大統領の発表した相互関税の詳細が世界の金融市場を揺るがしました。影響の出た各所のチャートを見てみましょう。
目次
各チャートの値動き
S&P500(米株)
今回の震源地は言うまでもなくアメリカです。自分で地震を起こしているなんてバカげていると感じる人もいるでしょうが、世の中にはそういう人もいるということです。米国の株式は歴史的な高値から反落しています。単に調整局面入りを指摘する声もありますし、今後リセッションになる確率を十分に織り込むべきだという声もあります。

VIX(恐怖指数)
市場が先行きをどれだけ恐怖に感じているか、という指数ですが、週末に向けて最高潮に達しています。一言でいえば、来週どのようになるか分かりません、と市場が答えているわけです。混乱が収まるのには少し時間がかかることでしょう。

日経平均
震源がアメリカなのに、今回はやはり世界への関税発表でしたから、世界同時株安の様相です。日本の株価にも影響が大きく出ていますし、米ドル安も誘発する中で円高も伴っているのが大きいでしょう。これをもって割安とみなすか、意見が分かれそうです。

ハンセン(香港)
今年に入って比較的堅調だった香港の株式にも多少影響が出ています。ただ、それほどでもないですし、こちらも大きな流入が観測されているわけでもなさそうです。中国からは報復関税が出ていますので、今後は余震のご注意を、といったところでしょう。

ビットコイン
もともとピークアウトしていたこともあってかビットコインへの影響は今のところ軽微であった、と言えます。単にリスク資産として見られていたのであれば、動きがより大きくてもおかしくはなかったでしょう。ただ、逆に大きな流れを引き寄せてもいない、とも考えられます。

金
これまでのところ、最も勝者として残っているのは金であると言えるかもしれません。それでも影響はありました。あるいは、投資適格級の債券もまだそこまで影響が出ていないので、これまでのところ安全資産は安全資産の役割を果たした、と言えそうです。逆にリスクを全面に受けていた投資家は大きく被弾したと言えます。

ショックに反応せざるを得ない他国や当局
仮にトランプショックが意図的に引き起こされていたとしても、まるで時計の針を戻すかのように事が進むことは考えづらい状況です。つまり、影響を受けるであろう他国や、あるいは金融当局があり、他人事では済みません。
通常、ショックで金融不安が呼び起こされる場合、各国の通貨当局は流動性供給を行い、あるいは金利を引き下げることによって金融市場の鎮静化を図る、等の方策を取ります。
また、国は景気が悪くなると思えば経済政策を打たなければなりません。
ただ、正直なところ、現在は金融引き締め局面です。なぜならインフレが完全に鎮火していないからです。そしてこれからさらにインフレが燃え上がる可能性すら指摘されています。金融市場の鎮静化を優先するあまり、インフレへのコントロールを失うことだけは避けたい、当局にとって頭痛の種が増えたのは確かです。
いつまで、どこまで続くのか
ショックが起きたとき、もう誰も止められないと人々は言います。
確かに、落ちてくるナイフを掴む人はいませんし、掴むべきでもありません。だから大量にナイフが落ちてくる場所に誰も近づきたがらないのです。でも、いつか大丈夫そうに思えたなら、また人が集まってくる、それが金融市場です。
いつまで、どこまで、という質問に答えるのは容易ではありません。でもいつか、いつの間にか、元に戻っているのは確かなのでしょう。
地震で建物が倒壊した街も、時間をかけて人がまた住める場所に変わっていきます。もちろん被害が大きければ元に戻るのにも時間がかかります。中には還らぬ人もいるでしょう。ただ、残された人にその先も未来があるわけです。
アメリカを信じるものはまた救われるのか、金融市場を信じるものはまた救われるのか、様々な意見が飛び交うことでしょう。
米国離脱の旗は周辺で掲げやすくなった
トランプ政権が大人しいことを誰も想定はしていなかったにせよ、ここまで揺さぶりがかかると、仮に個別に数年先まで約束されたところで誰も信用しなくなってしまいます。このことはやはり、少し前の中国に対して起こったことでもあります。
人々がそこで生活し、ビジネスをするためには、一定の安心と連続性が必要であるのは確かです。ある日突然ルールが書き換えられる、というのではいけません。米国は読めないばかりか、想定していたことと逆のことがある日突然自分の身に降りかかる、というのであればやはり一度は離れる選択をする人はいるでしょう。
アメリカが今後も確かに存在する大国だったとしても、混乱からの離脱に救いの手を差し伸べれば一定の流れはできると言えます。米ドルではダメだ、米国債ではダメだと、最も信頼を置いてきたものから、カネもヒトもまた次の安住の地を求めて動くことになるのかもしれません。荒波の中で上手く舵を取るのがどの国なのか、注目です。
投資スタンスはコロコロ変えないこと
私も含め、もともと投資家として世界への影響力など皆無に等しい人ばかりが集まるのが金融市場です。そのなかで戦っているわけですから、様々な荒波にさらされて当然です。
話題のテーマなので色々雑談めいた話をしましたが、何よりも重要なことは一喜一憂することなく、みずからの投資家のスタンスを貫くことです。そして自らの投資スタンスに照らして新しく訪れた市場の局面はメリットなのかデメリットなのかを見定め、焦ることなく必要であればアクションすることです。
多くの投資家はこの「自らの投資スタンス」が確立していないがためにブレにブレるので、本来安く買って高く売るべきものを、高く買って安く売るという行動ギャップが発生します。
もし焦って動く必要があるのではと考えてしまうのであれば、この機会に、ご自身の投資における快適エリア(Comfortable Zone)を探してみてください。短期的な勝ち負けに関わらず、そこに留まることができれば投資を必ずや長期的に成功へと導いてくれることでしょう。
*本稿の内容はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、具体的銘柄の売買を推奨するものではありません。