本稿では、国を跨いで活動する方々を見てきた私から、一般論としての納税義務の発生の仕方について話をしてみようと思います。正解が書いてあるわけではなく、こんなところに引っかかりやすく、何から手をつけたらいいか分からない人はこのあたりをとりあえず押さえておけばいいのではないか、という勘所の話になります。
目次
大原則:国内源泉所得はまずはその国で税金がかかる
その国に住んでないから納税義務がない、と考える人は多いし、実際それに当てはまるものは非常に多い一方で、絶対に納税義務がない、とまでは言えません。一般論として、どこの国でも国内源泉所得(その国に根差した経済活動に由来する所得)はその経済活動が行われた国で税金がかかる、と思っておいた方がいいと思います。もちろん住んでいてそもそもその国内源泉所得に対して税金がかかっていないなら、住んでいない人にもかからないと考えるのは概ね正しいかもしれません。ただ、この国内源泉所得、という概念は分かりづらい面があり、不動産で発生した所得、国内で働いて稼いだ給与、国内の銀行口座の利子、などになります。お金を支払った人、お金を受け取った人、お金が動いた理由、これらによって所得は様々に分類されることになります。
大原則:一国で税金を納めても他国で免除されるとは限らない
国によっては、自国以外で発生した所得には課税しません、というスタンスをとっているところと、外国で発生した所得も課税します、というスタンスをとっているところがあります。住んでいる国が後者の場合、当然住んでいない国で発生した所得も納税義務がありますね。え?そうすると二重で課税されませんか?というのは正しく、実際に二重で課税されることもあります。ただ、二重だとそれはそれで取りすぎだよね、というので二国間で調整する仕組みがあることもありますが、その仕組みで完全に解決する、とまでは言えません。また、住んでいる国が二つ以上ある場合もありますよね。そのときも、住んでいる割合で単純に按分されるわけではありません。
中原則:国籍によって発生する納税義務はある
通常は住んでいる国から納税義務について考えるので十分ですが、中には国籍によって発生している納税義務、というのもあります。典型的には日本人の贈与税・相続税、米国人の所得税などでしょうか。住んでいなくても、あるいは人生のほとんどを過ごしたことがなくても、場合によっては課税されることがあります。もちろん最後はケースバイケースですが、それくらい法律の解釈の幅自体は広くしてあるということです。ご家族の中に他国籍の人がいる、と言う場合、意識しておくといいかもしれません。税負担が重い、と感じて国籍の離脱をする人も中にはいます。
小原則:税務申告は自己申告が多い
多くの人にとって難しいのは、納税義務があると言われても、税務申告が自己申告である国ばかりなので、ほとんど縁のないところの税金の仕組み、場合によっては法改正には疎くなってしまうことです。もちろん都度その国の税務のプロフェッショナルに見てもらうことは理想的ですが、費用もかかる話ですし、そもそも納税義務に気づいていなかったらそんな石橋を叩いて渡るような対応を思いつくものでもありません。よほど巨額の取引でもしない限りは、びくびくして調べ回るようなものでもない、のかもしれません。とはいえ義務は義務、一人ひとりが判断するしかないものではあります。
小原則:判断に困ることは実際多い
納税義務があるかないか、どのような税金が発生するのかがはっきりと分かればいいのですが、実際は判断に困ることが多いと思います。日本に住んで日本の証券会社でアメリカの株式を買った場合と、日本に住んでアメリカの証券会社でアメリカの株式を買った場合は発生する税金に違いが生まれるでしょうか。アメリカに住んでいるが日本の証券会社にはそのことを伝えずに日本の証券会社でアメリカの株式を買った場合は、果たしてどうでしょうか。気にし始めるとキリがないかもしれませんが、実際には最適化もできるかもしれないし、現実的な解決に落とし込まないといけないかもしれない、そんな分野です。
まとめ
国を跨いで活動した瞬間、法律が入り乱れていつの間にか分からなくなった、ということはあります。国ごとに考え方も違いますから、勝手な解釈をぶつけてしまわないことは大事です。丁寧に取り組みすぎて、あるいは不安に感じて本来やりたかったことを躊躇してしまっては元も子もありません。最後の原則ですが、税金は基本的には増えたもの、にかかります。だから、増えた分をとっていかれることは悔しいかもしれませんが、増やす活動そのものを続けていく、ことを止めることは好ましくありません。しっかり増やしてしっかり納める、その上で効率的な税負担について考える、ということに尽きます。