国際金融取引をしようとすると、納税者番号(TIN)は必須と言っても過言ではありません。正しい対応をするために、どのように情報が扱われるのかを知っておきましょう。

納税者番号(TIN)とは

納税者番号とは、英語だとTIN=Taxpayer Identification Numberとされるもので、納税者それぞれに付与されている固有の識別番号のことです。該当する国の税務当局がこの番号をもとに調べれば、その人の納税情報に辿り着くことができます。

該当の国でTINという呼称が使われているかはケースバイケースです。日本でいえば、個人のTINはマイナンバーが該当しますし、香港でいえば、HKIDカード番号が該当します。法人の場合はまた別のTINが存在します。

金融口座についてはとりわけ口座保有国と居住地国が異なる場合、共通報告基準(CRS)に基づく、口座情報の自動交換(Automatic Exchange)が行われるため、TINを申告することが口座利用者に求められています。

なお、具体的なケースごとに、税務のプロフェッショナルからアドバイスを受けることが推奨されます。

各国・地域の納税者番号を知る

TINはそれぞれの各国・地域が、そこでの納税者と紐づく形で付与するものであるため、一人ひとりに対して世界共通の番号があるわけではありません。つまり、同じ人物でも、X国とY国では納税者番号は異なるわけです。

納税者番号には数字何桁だったり、アルファベットを含めたりと型がありますので、番号を覚えておく必要はないにせよ、型を知っておくと良いでしょう。OECDからガイドラインが出されています。あるいは日本語だと国税庁がリスト化しています。

納税者番号は一般には初めて納税をするときに付与されて受動的に知るケースが多いので、その国・地域で納税したことがなければ持っていないことが想定されます。一方で、これから納税する(あるいはする可能性がある)場合も、事前にTINを取得することができることもあります。

金融機関はどのようにTINを認識するのか

TINは基本的には税務当局による情報管理のために採番されています。なので、金融機関からすれば、TINは利用者本人から聞く以外に特定する方法はないわけです。日本でもマイナンバーの提出は任意なのか義務なのかやや議論がありましたよね。近年はデジタル化が進む中で、シームレスな対応が求められているので、実質的には利用者本人の合意のもと、その国での税務情報は自動的に連結されているケースも増えています。ただ、これが国を跨ぐと全てのデータを送るわけにはいかないので、国際的には自己申告の要素が強いわけです。なので例えば、タイの居住者が香港の証券口座を保有している場合、タイのTINを香港の証券会社に申告することになり、証券会社から報告された口座情報をもとに、香港の税務当局はタイの税務当局に対して情報提供をすることになります。

自己申告だとすれば間違って申告されても金融機関には分からないのでは、というのは当たっている面がないわけではありません。桁数やアルファベットの有無など、一般的な型と違うような場合はシステムスクリーニングができますが、番号そのもので個人情報と照合できるわけではありません。だからこそ、利用者が正しく申告することが義務になっています。

TINが分からなかったら(なかったら)

この記事を読んでいる方もそうかもしれませんが、TINとは何かがピンと来ない人はいると思います。あるいはそもそもTINがない国もあるかもしれません。ないものは申告しようもないので、ないと答えることになりそうですが、適当にないと答えると納税を拒んでいるかのような印象にもなりかねません。(もちろんTINを答えるか答えないかで納税義務の有無が変わるわけではありません。)先ほどのガイドラインを見ながら、ご自身がTIN付与の対象外の存在なのかどうかくらいはチェックができます。あるいはビザのステータスなどによって番号の型そのものが違う、ということだってあり得ます。

TINを申告するのは、税務上の居住者(Resident for Tax Purpose)のときであり、現住国と一致するとは限りませんが、これまた該当するのかを判断するのは本人であっても簡単でないときもあります。まして金融機関にとってはチェックしようもないので、現住所、過去数年以内に住所があるのであればTINが必要、ないならばそれに代わるものとしてパスポート番号等、機能的に同等のものを申告して欲しい、などのリクエストはあり得るようです。

近年は、国籍があればTINがある、という状態に近くなっているので、居住履歴に関わらず、国籍のある国のTINも申告するように言われた、という話も聞きます。国を跨ぐと納税が適切に行われない可能性もあり、とにかく金融機関は法令遵守のため神経質になりやすいといえますので、正しく理解し、丁寧に対応すると良いでしょう。

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