オフショア銀行に口座を作ったはいいが、その後の管理維持に苦労している、あるいはサポート業者に少なからずの費用を払っている人はいる。そうした課題がフィンテック(金融テック)の普及を通じて解決されてきているという話をしてみる。

オフショア銀行口座とは

オフショア銀行口座とは、預金者の居住国外にある銀行が非居住者向けに提供する口座のことを指す。

オフショアにお金を置いておけば、誰にもバレずに税金もかからないから、などという人は一昔前に比べれば圧倒的に減ったと思うが、それでもなお重要と考えられているのは、資金移動の自由度である。国を跨いで資金を動かそうとするととにかく手続きが大変で、時間がかかる、という経験をした人もいるだろう。マルチカレンシーでかつ、どこの国に住んでいても利用し続けられる口座が一つあるだけで人生の選択肢が変わってくる気すらする。デビットカード一枚で、出張、留学、旅行などで世界中どこに行っても自分の口座のお金にアクセスできればなおよしである。

オフショア銀行口座の課題

口座開設に時間がかかる

富裕層の資産管理はプライベートバンクなどを通じて行われることが多いが、居住国と異なる、オフショア口座である、というのも特徴である。その理由の一つは居住地の政治リスクなどの回避のためであるが、居住地でないが故に口座開設を行う理由について丁寧に説明する必要があり、結果として口座開設に時間がかかる例はある。コンプライアンスチェックとはいえ、半年以上も待たされることがあるのだから考えものである。

リモートでの口座開設が難しい

非居住者が口座を持つこと自体は問題ないが、口座開設にあたって銀行の本支店を訪ねる必要があるケースは多い。主には本人確認作業のためであり、そしてもしクロスボーダーで何かサービスを紹介しようとすると、居住国の法令に抵触する可能性があるので、銀行のある国に実際に行くことで少なからずのトラブルが回避できるからでもある。新型コロナでいくばくかリモートに対する技術的な対応がなされたとはいえ、金融機関という業種上頑なな部分である。

預金保険が適用されない可能性

非居住者向けの預金口座となると、預金保険が適用されないケースがある。銀行は安全だと思っている人は多いが、この場合、お金を預けていても全く安心はできない。普段は確かに預金保険など微塵も気にしないし、もちろん金利が高くて選ぶのだろうが、長期的に大丈夫なのかどうかを気にしておかなければならない。住んでいない国なのであればなおさら何か国事情が変わっても気付きづらい。

オフショア銀行の活路

上記に挙げた課題の多くは、実際のところ人力で解決するのが難しいものが多いし、どちらかといえば人力が必要になっているからこそ課題になっている面がある。

したがって、活路はテクノロジーを駆使していかにこうしたプロセスを強固でスムーズなものにしていくか、という話になる。業界的にはデジタルバンク、デジタル銀行というエリアになってくるが、ようやくクロスボーダーでサービスが提供され始めたようである。最低預入金額もなく、口座維持手数料もない。デリメリは必ずあるが、利用者が増えていくにつれサービスも充実していくことが予想される。少なくとも口座開設に要する期間は数日以内であり、リモートで本人確認が行われる。

残念なお知らせ

オフショアゆえに日常資金決済や給与受取のために銀行口座を使いたい、という人は少ないだろう。オフショア銀行に限った話でもないのだが、仮想通貨やギャンブル由来の資金は嫌われることに注意は必要である。資金の出処がはっきりしないことが多いからである。海外送金では資金移動業者もよく使われるが、仮想通貨を一部に扱うところは利用できない。

単に便利だからという理由で利用している人に対しても、きちんとした金融機関ほどこの手の資金が紛れ込むことを警戒する。もし興味本位にでもお金を注ぎ込んでしまったのであれば、新しい金融機関にアクセスする前に適切なコンサルを受けるべきであると言える。

また、公用語が日本語の地域というのは、日本しかない。したがって、日本人としてオフショア銀行口座を持とうと思っているのであれば、残念ながら日本語での対応はまず望めない。少なくとも英語での対応を余儀なくされることは理解しておくべきである。

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