現役時代にためた資産を老後は取り崩して生活する、というライフプランシミュレーションを見たことのある人も多いはずです。でも、一抹の不安がよぎるのは、それで本当に死ぬまで十分なお金があるのかどうかですよね。なので、年金資産を取り崩さずに年間支出が賄えるとしたら、を考えるのは自然です。今回はそれが非現実的なのかどうかを検証してみましょう。
目次
老後の生活費はいくらか
まずは使う方。
年金収入をUSD50,000/年と仮定すると、円換算(150円/USD)では750万円/年、もし仮に税金で20%持っていかれたとしても、600万円/年が手元に入ってきます。もちろんこれが老後の生活費として十分なのかは人によると思いますが、ここでは
50万円/月は十分
だと仮定して先に進みましょう。
現実的な運用利回りはいくらか
そして稼ぐ方。
年金資産を取り崩さないために必要なのは資産運用です。運用して増えない限り、取り崩す以外の選択肢はあり得ません。当然ですよね。もちろん、働いて得る稼ぎはない、という前提です。
でも、老後に時間があるとはいえ、金融市場の動向次第で勝った負けたをやるのも何か違う気がします。時間があるせいで投機的活動にハマってしまう可能性も否定できません。だから、
資産運用に関しては何も考えない、何も手を動かさない
と割り切って考えることにしましょう。
そして種銭を失うことも全力で避けたいとしたら、
元本が失われていないことだけは確認する
と想定しましょう。
そんなとき気になるのが“現実的な運用利回り”=無理をしておらず、継続的に期待できる利回り、ということになります。
運用をする限りにおいてリスクはゼロではありませんが、元本を守りながらの安全運行をするなら、という話です。これを実現する方法は諸説あるわけですが、ここでは
5パーセント/年
だったら非現実的なのか検証します。
実際の年金運用例(60歳開始と仮定)
ここまでで前提条件が揃っていますので、年間USD50,000/年を得て5%で運用を回して元本を維持するとなると、シンプルな計算で元本はUSD1,000,000(≒1.5億円)必要ですよね。
どのくらいこの条件に近づけるのか、以下のシミュレーションを見てみましょう。(なお、商品は実際に香港で最近提供開始されたものを参照しています。)
少しキャンペーンが効くので、最初に投下する元本はUSD955,000(青1年目)です。
仮に初年度に解約しようとするとUSD800,000しか返ってこないので、すぐに解約する予定がある人は向いていません。
その後、3年経つと保証部分、非保証部分がそれぞれ増加し、USD956,000となるので、とりあえず安心です(緑3年目)。ちなみに、年金として受け取らずにそのままにしておいた場合、5年経つと、保証部分だけでもUSD955,000となります。
今回はできるだけ年金生活を始めたい、という想定のもと、
元本価値を上回った4年目からUSD50,000を毎年受け取る
ことにしています。結果、毎年USD50,000を受け取りながらも解約価値はUSD955,000を超える状態をキープ(黄3年目以降)できているのが確認できますし、わずかながらその後も増えていくことになります。
4年目から毎年同額を受け取って、20回目(23年目)でこの運用から実際に受け取った合計はUSD955,000を超えますよね。この時点で元本回収済(青23年目)です。
その上で年金資産としてはUSD1,705,000が残っている(黄23年目)、ということになります。実に1.8倍近くです。回収した分を含めれば投下した資金に対して2.8倍の計算です。(ちなみに、年金として受け取らずにそのままにしておいた場合は、実に3.7倍ですが、年金は生活のためなのでこの数字は忘れましょう。)
留意すべきこと
この運用シミュレーションにおいても、最初の3年間は受け取らない、という前提があります。もちろん受け取るようにすること自体はできるのですが、それは増える前に原資を回収してしまう行為なので、中長期だと損と言えます。逆に最初の3年に必要なお金は運用に回さず手元に残しておいた方がいいと考えてしまいましょう。
なお、保証額はありますが、元本保証と言ってしまうのは若干語弊があるかもしれません。ただ、毎年受け取って20回経ったあとは少なくとも元本回収ができているということですから、30-40年先のことは分からないとしても、安心の度合いは違うように思います。
既にお気づきの方もいると思いますが、老後にそんなに資産が増えても(嬉しいけれども)残ってしまって困るという人はいます。受け取っても増えていくのだから、例えば、毎年USD50,000の部分はインフレを加味して少しずつ増やしていっても構わないということでもあります。どのくらい受け取っていくのかは都度残高をチェックしながら考えてもよいでしょう。自分で必要な分が工面できると分かれば、お子さんに家を買ってあげたりするのも十分に選択肢になります。
まとめ
今回のシナリオで想定したのは、かなりざっくりとした人物像です。本人もきっとお金にそれほど関心は高くない、大雑把な性格なのかもしれません。もっと精緻に数字を積み上げれば運用資産は少なくて済むかもしれないし、運用にもっと関心を持てば高い利回りを実現できるかもしれない、といったことは考えればキリがありません。ご自身にとって十分な金額がいくらなのか、という計算はライフプランを通じて分かりますので、ご不明な方は是非一度シミュレーションをやってみましょう。