香港の人口のうち、約4%は駐在員であるとされ、多くはヨーロッパ大陸、北米、オーストラリア、中国本土、シンガポール、その他アジアの国々(台湾や日本、タイ、マレーシア、インドネシア)が占める。

香港のローカルの人々において特徴的なのは、非常に多くの人が不動産や、その他の金融商品(生命保険、年金ファンド、その他海外の流動資産)に投資をしている地域であることだ。

いずれのケースにおいても、シンプルな資産設計よりも、より包括的なエステートプランニング、すなわち、複数の国と領域をまたがって資産を保全するための適切なアドバイスが必要になる。

一番最初に考えるべきことは?

最初にして最も大切なことは、遺産に関して、クライアントの置かれた状況、保有資産や目的を特定することである。ここで必要なアドバイスは多岐にわたり、例えば、個人、そして家族の状況、婚約関係やパートナーの存在、子供、あるいはその他の地域での法的係争の可能性についてである。足れりとできるものはなく、想定される限り最大限のものとなる。

遺産に関してクロスボーダーあるいはローカル税制上の解釈だけでなく、その後の分配や管理についての考え方にも触れるべきである。

コモンロー(Common Law)の国で最も課題になりやすいことは?

一般論としては、コモンローの国では、生前及び死後の分配に関しての選択肢が多く用意されている。死後、遺言(Wills)があれば、プロベートを経て誰かに遺産を渡すことができる。トラスト(Trusts)はプロベートを経ずに分配を実現するし、いくつかの国では相続税の取扱いが変わり得る。

多くのコモンローの国では、受益者に対して分配がなされる“前に”課税が発生する。もし遺言が残されていなければ、その領域の法にしたがって、分配が決定されることになるだろう。

シビルロー(Civil Law)の国で最も課題になりやすいことは?

一般論として、シビルローの国では、法定相続(forced heirship)に従う。これはコモンローの国における遺言がない場合と近似しているが、実際の適用においては、シビルローの場合は、生前の資産の築かれ方や過去に引き受けた相続分によっては障害が発生し得る。シビルローにおいては、受益者に対して分配がなされる“その時に”課税が発生する。また、トラストの役割は限定的かあるいは法的な有効性を持たない場合すらある。

異なる国に行った場合、その分配や税制上の取扱いにおける根本的な違いがあるため、あらかじめ設計したエステートプランは容易にお祓い箱となるし、場合によっては逆に悪さをすることすらあると心得ておきたい。

結婚制度の違いはエステートプランに影響するか?

結婚が成立している場合、動産、不動産はそれぞれその所在や状況によって、相続時に最終的に適用される法律が変わってくる。特に、現物の遺産を動産の形態に変えて保有することができれば、資産の移転においては大きな差異をもたらすことができると言える。

どのようなエステートプランを構築すべきか?

遺言やトラストの利用をした方がいいかは置かれた状況によるし、両方を利用して補完することもまた有効であるケースがある。複数の国をまたがる場合は、とりわけこのエステートプランの構築にあたって、それぞれの国での法律的アドバイスも求めることが必要となる。

遺言の形態を複数の法域にまたがって合わせたものとするか、一つの法域につき一つ作るかという論点もあるが、いずれにしても、適切なサポートを得ることが大切である。

信託や法人(オンショア、オフショア、ミッドショア)を用いて資産を移転する場合、どのようなビークル(箱)を用意すべきかは適用法によって異なり得る。相続の過程でストラクチャーが否定されてしまっては意味がないからだ。自国の信託は認知しても、外国の信託は認知しないというケースだってある。

住所、居住地、市民権はエステートプランに影響するか?

それぞれは本人がどのような税制の中で扱われるかを左右する重要な要素であり、その定義を認識することは極めて重要である。

単に住所を持つことで足りる場合もあるし、何年間住んでいたかを問われることもある。いくつかの国では、税務年度内で何日間滞在したかを問うケースもある。

あるいは居住地という概念と紐づくならば、その地を離れる意思があるかどうかも重要である。そしてその意思で当地を離れたのであればそこはもはや居住地ではない。

香港は比較的簡素な税制のルールを持っているが、だからといって他の法域のルールと無関係なわけではない。二カ国間での租税条約の有無など、事前にチェックしておくべきことは少なくない。

エステートプランはどのくらいの頻度で見直すべきか?

一般には、数年おきかあるいは重要なライフイベントが起こったとき、あるいは法律が改正されたとき、と言える。結婚やパートナーの存在、離婚、出産などライフイベントは多いし、資産に何らか変化が起きた場合も注意した方がいいかもしれない。

プロフェッショナルなアドバイスを求める意味は?

一般の人はコモンローやらシビルローやらという法体系そのものの違いへの関心などほぼないし、ましてそれが自らの人生にどのような影響を与えるかということには詳しくない。新たな法域で過ごすことになった場合、できるだけ早い段階で当地のプロフェッショナルと繋がり、適切な対応をとりたいものだ。その後も他の国と転々とする予定ならば、ある程度グローバルなネットワークを持つ専門家と繋がることは理想的だろう。