古くからある議論の一つに「自宅」が資産だと考えられるか、そうでないか、というものがある。不動産にも投資用か居住用かという違いがあるわけだが、同じ不動産なのになぜ分けて考える必要があるのか、雑多な話をしてみよう。
目次
居住用不動産と投資用不動産の違い
不動産にも土地やマンション、オフィス、あるいはデータセンターなど実は様々な分類があるわけだが、多くの人にとってはマンションないし戸建てのような住む家がイメージしやすいだろう。
居住用不動産とはまさしく住んで生活する場所であるのに対して、投資用不動産とは誰かに不動産を貸して賃料を得ることを目的にしたものである。後者は当然マンションや戸建てに限らない。
居住用という言葉をもう少し広義に考えるなら、自己使用目的と言い換えてもいいのかもしれない。要は、不動産そのものが違うというよりは、使用の仕方が違うわけである。
居住用不動産に対する金融機関の見方
不動産は担保価値があるため、住宅ローンを金融機関から借りることができるのは周知の事実であるが、居住用か投資用かでローン金利が異なることを不思議に思ったことはないだろうか。
自分か自分でないかに差はあるにせよ誰かが住むことに変わりないのになぜ金利が違うのか。それに違うと言っても、金融機関は居住用だと金利を安く、投資用だと金利を高くするわけだが、普通に考えたら賃料が発生している方がローン返済は楽な(つまり、金融機関はリスクが少ない)感じがしないでもない。
諸説あるものの、自宅は最後まで手放したくないので返済の優先順位が高く、貸し倒れになりにくいのが理由である。つまり、持ち主が不動産を手放すことによる資金回収(すなわち、不動産価値の実現)より、持ち主が別のところで稼いだお金でしっかりと返すことを期待しているわけだ。実際、自宅の資産価値が上がったところで、家族が生活し、子供が育った場所を手放したいとはあまり考えない。
自宅は売るつもりがない前提
そもそも資産価値とは何だろうか。多くの場合は、売ったらいくらかというのが答えである。ただ、自宅の場合、売るという選択肢がそもそも頭の中にもないし、実際考えたこともないとしたら果たしてそれを資産と言えるのだろうか。確かに家族に大切な住環境を提供してくれているかもしれないが、だからこそあまりその金銭的価値にまで意識が向かない、という人は多いだろう。
賃貸契約は負債である、という考え方はどうだろう。2年間の契約だとして賃料を払い続けなければならないわけだから案外重い債務を負ってしまっている気がする。もちろん自宅を住宅ローンで買ったなら例えば35年間の返済義務を背負うことでもある。それなりに覚悟が必要である。
賃貸か持家か
居住用不動産は資産か資産でないかの話に絡むのが、賃貸が良いか持家が良いかの議論である。他人の不動産に居座る賃貸はいつまで経っても賃貸であるのに対して、持家は住宅ローンを借りて買ったとしても、ローンの返済が終われば自分のものである。ただし、返済があるうちは全部が自分のものとは考えづらい。
借りていようと持っていようと不動産はメンテナンスが必要であり、いくばくかは費用がかかることになる。当然大きな家の方が小さな家よりはメンテナンスコストは高い。
賃貸にしても持家にしても大事にしたいのは、できるだけ適正なサイズの家を選ぶことである。したがって住み替えるとしたらという選択肢も持っておきたい。不動産を資産だとみなした結果、大は小を兼ねると思って、大きな家を買ってしまうと、費用に悩まされることも十分あり得る。もちろん、世の中の不動産市況次第ではこの適正なサイズの家に住めないことだってあり得るが、適正なサイズの家に住んでいないことは自覚すべきである。
さて、自分が住むことに対して割くべき費用はどのくらいだろうか。案外見積もったことのある人は少ない。
収入を生むものは資産、支出を生むものは負債
資産か資産でないかの議論の中で、もっとも簡潔なのは、収入を生むものを資産とみなすことである。本来、売ったら収入になるのでそういう意味では売ってお金に代えられるなら資産ではあるわけだが、より狭義には保有していることが収入に繋がることが一つの基準にはなる。将来にわたって受け取れるであろう収入を逆算すれば現在の資産価値になるからでもある。
逆に保有していることが支出に繋がるとしたらそれは負債である。たとえ不動産という価値を持ったものであっても、保有していて維持するのに費用を継続的に払っているのであれば負債であると考える方が素直だろう。
不動産に限らず、資産を増やすことは非常に大事であるわけだが、保有すべきは価値が減らないものであり、できれば収入を生むものである。小さな資産であれ大きな資産であれこの原則を守っていれば資産は自ずと伸びていく。
特に居住用不動産は人生の中でも比較的大きな買い物になる人が多い。マイホームで夢を見ると同時に数字という現実とも向き合っておきたい。