好景気になると消費が増えるのか、消費が増えたから好景気になるのか、そこに絡む資産効果、という要素について理解しておきましょう。
目次
資産効果とは
資産効果(Wealth Effect)とは、株価など資産価格の上昇(あるいは下落)により、個人消費が増加(減少)することを指します。
通常、収入が増えれば消費を増やす人が多いとは思いますが、保有する株式や不動産などの資産価格が上がれば、(売却すれば現金化できるため)その分より多くの消費ができると考えるわけです。
儲けたお金もいつかは消費に回ることにはなりますが、資産効果はその増えた資産を直接使わずともお財布のヒモが緩くなる現象、と考えると理解できるでしょうか。
お金があるという錯覚
資産効果はある種の心理的現象であり、それゆえに冷静にコントロールすべきものである、とも言えるのかもしれません。
バブル経済などはその典型ではあり、資産価値が急増したから、あるいは今後急増すると思い込んでいるから、今積極的に消費をする、というものですが、次の瞬間には資産価値が暴落し、その算段は叶わない、ということにもなりかねません。
ない資産を当てにしているわけではないにせよ、実際に増加した資産を売却して現金に換えた上で消費したのとは違う、ある種の虚像の領域があるわけです。
インフレとの関係
資産が増えた、といってもそれがインフレによって引き起こされたものであれば、実質的には増えておらず、消費額は同じくインフレで増えても、買えるものが変わっているわけではない、というのも理解できますよね。
したがって、インフレ環境下では資産が増えて、消費が増えてもそれによってより豊かになったと感じる部分は相殺されているわけです。
ただ、本質的にはインフレ対策が功を奏していることは意味するので、お財布のヒモが締まらないということでもあります。高インフレでも家が買えたりローンが組めたり、プチ贅沢ができたりすることは人生計画において非常に重要だと言えるでしょう。
資産と消費
資産効果が一般的なのであれば、資産額が多いほど、消費額は多い、というのも観測できるはずです。それは直感的には理解しやすいですよね。お金持ちほどたくさん消費している、ということです。(でも、資産効果の理論的根拠は賛否があります。)
資産といっても預貯金が多いだけだと、資産効果は現れづらいのかもしれません。なぜなら、収入が同じなら消費を減らした結果、預貯金はより積み上がっていく性質であり、株価や不動産などの資産価格が増えても、預貯金は増えないからです。
資産効果を感じるのは、資産を伸ばすということが働いて稼ぐ部分以外で起こっているからこそかもしれません。このことは棚ぼた資金の例と似ています。
貧富の差の拡大
富めるものがさらに富むとはよく言いますが、働いて稼ぐ収入だけだとそこまで(人間の労働力という意味で)劇的な格差が生まれるものではありません。
やはりその格差をもたらすのは資産であり、それは複利計算的に拡大していくので、資産効果を感じるくらいに資産を保有できればその後の軌道は確保されるのかもしれません。
投機的指向への影響
資産効果によって消費ではなく投資が増えることがあるか、というのは学術的にはサポートされていないのかもしれませんが、「貯蓄から投資へ」を実現するには相場が良くないといけない、というのは感覚的には理解できます。
資産効果が指すものと少し観点が違いますが、相場が上がっていると投資を増やし、相場が下がると投資を減らす人がいるのも実はよく似ているのではないか、と個人的には思います。
資産効果は、あくまで自分の財布の中の資産価値に現れるのに対し、こうした投機的思考は相場という自分の財布以外での動きに反応するものです。よりタチが悪いと言えばそうかもしれませんね。
資産をマネジメントする
このように資産効果は心理なわけですが、人間は不思議なもので心理に基づいて意思決定をすることがあるわけです。
逆に相場が悪い時も逆資産効果が働く、つまり消費を控える動きが起こるのも知っておくべきでしょう。資産効果は悪か?と言われると実際に経済がデフレや不況を脱却していく過程においては重要な役割を果たすであろうことは確かです。
ただ、資産をマネジメントする、ということはもちろん資産運用の損得ではある一方で、こうした心理のコントロールもしていく必要があるわけです。