株式市場が好調だと投資家はリスクを高めがちです。ここで改めて米ドル建て社債投資の基本についておさらいしておきましょう。

債券投資の基本的な考え方

これは結構不思議なのですが、資産運用を始めるときに株式投資をイメージする人がとても多いのが実際です。おそらく儲かることと深く結びついているからなのでしょう。

しかし、本来株式投資は相対的にリスクが高い部類に入るため、よりリスクの低い債券投資からスタートすべき、という考え方もあります。ただ、流行りのYoutubeでもなかなか分かりやすい解説に出会うことがないのが債券投資です。リスクは低いはずなのに、理解の難易度は高い、のかもしれません。あとは単純に大きく儲からないので面白くなくて取り上げたがらないという実態もありそうです。

債券投資を考えるにあたって、①債券だけでポートフォリオを構成したいのか、②債券投資をポートフォリオの分散として考えているのか、は実は大きな分岐点になると考えます。なぜなら、伝統的なポートフォリオ理論において、分散の効果を得るには、資産同士の相関関係が重要になってくるからです。要はこれを得たいのか得たくないのか、です。

債券をイメージしたときに、満期まで持ち切ることで元本回収することを思い浮かべるなら①であり、資産価格が変動したときに売買を通じてリバランスしていくことを思い浮かべるなら②という感じでしょう。

この違い、もう少し見ていきましょう。

債券だけのポートフォリオ

企業に投資をする方法は株式だけではなく、企業が発行する社債に投資をすることができます。また、政府や国際機関なども債券を発行していますので、これも投資対象です。

ちなみに、銀行預金は「銀行に預けているお金」ですから、銀行から見れば皆さんから借りているお金、ということですが、債券を通じてもっと幅広く企業に貸してあげることもできる、というわけですね。このいくらいくらをいつまでに返しますという約束は誰かに譲渡でき、それを買ってくるのが債券投資ということでもあります。

個別の債券の買付単位はUSD200,000(約3,000万円)くらいと大きいものが多く、誰でも買えるという状況にはないですから債券だけのポートフォリオを組むにはとにかく金額が必要です。一般の証券会社ではこれをもっと細かく分割して売買できるようにしていたりもしますが、結果的に中間手数料が上乗せされていたり、種類が限られていたります。例えば預かり資産が2億円くらいある状態でトライされると十分に選択肢があってよいと思います。

まれにいくらからできますかと聞いてくる方がいますが、できるにはできるけれど、、という状態で話を進めるのはベストではありません。結果、利回り5%で手堅く組んでも年間1,000万円くらいの収益になりますから、意味のある数字にもなりますよね。

債券投資による分散ポートフォリオ

多くの人にとっては実はこちらの選択肢の方が現実的です。まず第一に、買付単位の大きな債券投資では個別企業の信用リスクが大きくなりがちなので、債券の中でも様々な銘柄に分散することが重要である、ということと、次にもっと重要なことは、株式などの他の資産を組み合わせることが結果としてポートフォリオの安定性を高めるということです。

実はこれは証券投資の教科書の一番最初に出てくるような話であり、同時に多くの個人投資家の方が全くと言っていいほど認識していないことでもあります。何の株式を買ったらいいですか、の前に、ポートフォリオとはどのようであるべきかという話があって然るべきなのです。

債券投資により分散する場合、多くは投資信託やETFへの投資により実現します。これも株式銘柄同様、無数に選択肢がありますから、ご自身のポートフォリオの分散効果、目標リターンを最大にするために最適の選択をすることが求められます。

債券投資にまつわるリスク

冒頭、債券投資は相対的にリスクが低いと話しましたが、投資である以上リスクがないわけではありません。そして一般的にリスクが低い方だ、というだけで、債券の中にも複雑な設計のものや、リスクが非常に高いものも存在していることは知っておいてもらいたいと思います。

債券投資にまつわるリスクとしては、例えば、信用リスク、金利リスク、為替リスクが挙げられます。

信用リスクは当たり前ですが、お金を貸している企業が何らかの理由でお金を返してくれない可能性です。最も大きなものだと倒産して無価値になることですし、それ以外でも利払いを遅延されたり、元本償還が遅れることだってあるでしょう。その間に延滞金が発生するとも限らないのでやはり、予定された通りに予定された金額が返ってこないことはリスクだと言えます。信用リスクは日々市場でも評価されており、例えば業績が悪かったりすると信用リスクが高まりますから、債券の利回りは上昇し、債券価格が下落したりします。

そして金利リスクは、保有期間中に市場金利が変動することにより、債券価格が上下することです。5%の満期利回りで投資をしたけれど、銀行の預金金利が5%以上に上昇したとしたら、わざわざ一般企業の信用リスクをとっているのにその分の利益は享受できません。もちろん、社債の利息にも変動金利型のものがありますので、それにより金利リスクを抑えることはできます。

あとは為替リスクですが、これは債券そのものというよりは、米ドル建ての投資を行うことによって発生するものです。例えば、3,000万円分の米ドル建て社債を買ったとして、債券利息や元本が予定通り返ってきたとしても、そのときに円高になっていれば、投資額に満たない金額しか受け取れない可能性がある、という話です。債券投資は比較的長期になりがちですから、その間の為替変動についてどのように考えるかは予め整理しておいた方がよいでしょう。

最後に

本稿のタイトルを米ドル建てにしてあるのは世界的に見ても債券発行は米ドル建てで行われていることが多いからです。それは統計を見てもらえば分かります(見たことがない人は実際多いでしょう)。

ただ、上記で述べたような信用リスク、金利リスク、為替リスクは国によって変わってきますから、別の企業、別の国、別の通貨で債券投資をすることがポートフォリオにとって良い効果をもたらすことも想定できます。

もし現在のポートフォリオが株式一辺倒、あるいは不動産一辺倒といったものになっているのならば、是非債券という新しいアセットクラスを上手く組み込む方法を一緒に考えていけたらと思います。

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