老後の不安の中で近年よく聞かれるものとして、年金が挙げられます。払ったものが返ってこないという数字を見ることもあり、どのように考えておくべきなのか、整理をしてみようかと思います。

日本の年金制度に対する評価

世界各国で様々な年金制度が採用されていますが、日本の場合は、賦課方式と呼ばれ、現役世代の保険料で高齢者の年金を賄うスタイルをとっています。なので、少子高齢化が進むほどに現役世代の負担が増加するという仕組みです。

そのため、若者にとっては負担が大きいと感じやすく、それなのに年金制度の持続可能性が危ぶまれていることに不安がある、と答える人が増えていると考えられます。

世界の年金総合評価指数から客観的に見ても、日本の年金制度の評価は決して高くはありません。少子化が起こったり、あるいは平均寿命が伸びたりすることが十分に加味されていなかった、あるいは加味しながら維持することが不公平感を高めている、と考えられます。負担を適正にし、そして国民が安心できる年金制度であれば、積極的に利用したいと思うのでしょうが、現状はそのように感じていない人が多いのかもしれません。

払いたくないと言って払わないとどうなるか

世代間格差について理解すると、どうせ払っても返ってこないのだから払いたくない、と考えてしまう人はいます。ただ、日本は国民皆年金制度なので、事実上の強制加入です。なので、自分だけはもらう気がないから払わない、ということはできません。

でも実際のところ、支払を行わなければいいだけでは、という人はいます。答えとしては、滞納、という扱いになっていることは知っておくべきでしょう。家賃を払わなかったら滞納、ローンを返済しなかったら滞納、税金を払わなかったら滞納、といった具合で、払うべきものを払っていない場合の用語です。滞納なのだから、当然支払を促す催告が届きます。催告に応じなければ督促が届きます。

それでも応じなかった場合、最終的にはどうなるのか、というとこれについては明確に決まっており、財産の差し押さえ、ということになります。これは、本人の財産だけでなく、連帯納付義務者(世帯主や配偶者)を含むとされます。自分だけの話に止まらない、ということも知っておくべきでしょう。

もちろん、強制徴収までいく例はかなり極端でしょうが、延滞すれば延滞金が発生し、そして年月が経てば(強制加入という性質上)支払額は大きくなる一方ですから、ますます払いづらくなる、というものです。ちなみに、日本年金機構が発表した令和6年度の国民年金保険料強制徴収の実施状況によると、最終催告送付件数103,194件、督促状送付件数58,666件、差押執行件数10,909件となっています。

年金保険料は税金なのか

ここまで整理してみると、年金保険料がまるで税金のように扱われているではないか、と思う人はいます。でも、実際のところ、その通りなのです。保険料のことを保険税と呼ぶことはありますからね。

税金は様々な名目で、様々なところに課せられているのはご存知の通りです。年金保険料というのは払った金額や期間に合わせてその人に還元することを想定した税金だ、と考えられます。

払った税金の全てが自分に還元されるわけではない、ことは(受け入れるかどうかはさておき)理解できますよね。年金保険料も税金であるならば、社会の中で調整され、還元される性質のものだ、ということでもあります。たくさん払った人がより損をしている感じに見える、というのはある意味その通りです。

だから、年金で得をするというときというのは、社会を支える側にいる分よりも社会に支えられる分の方が大きくなったとき、なのかもしれませんね。

ややこしく思う人は、ざっくりとした数字感で言えば、老後に年金をもらい始めて10年経つとトントン、その後は死ぬまでボーナスステージというくらいに考えておいていいと言われます。(もちろんここにも様々な議論がありますが。)

年金保険料は減らせるか

年金制度だけを考えて判断すべきものではありませんが、制度である以上、どのような人にどのような年金保険料負担があるかを鑑みれば、より年金保険料負担の低い状態を目指すことは可能ではあります。学生だったり、あるいは(それほど働いておらず)扶養だったり、ですね。海外に住むと任意加入、というのも日本で稼ぎがない、という意味では負担が大きいわけです。年金保険料の負担が(金額というより比率で)より重くのしかかると考えられる状態になれば自然と負担は減ることになります。

とはいえ、年金保険料が減るということは、社会を支える割合が小さくなる、ということであり、すなわち、社会に支えられる割合も小さくなる、という構図であるのは理解しておくべきでしょう。その分自分で何とかする必要があります。

老後のためにやっておくべきこと

ニュースなどを見て、年金は先々減る一方だ、という認識を持っていて、きっと自分がもらう頃にはゼロになっている、くらいのことを話す人もいます。もちろん将来どうなるか分かりませんが、現状、日本において公的年金制度は社会保障の柱であり、高齢者の生活を支えています。老後について思うとき、最初に考えるべきものなのです。だから、年金制度について悲観する前に、まずは

年金記録が正しいことを確認する

ことは大切です。

年金制度に色々意見を言ったり不安を感じたりする人のなかには、年金記録を見たことがない、見れることを知らない、という人はそれなりにいます。どのように記録され、そして将来どの時点で何をすべきものなのか、は知っておいた方がいいでしょう。かつてのように消えた年金問題が再来することは考えづらいですが、年金は自分の権利だ、と考えるのならばそもそもその権利がどのように付与されているのか、という話です。

年金保険料は税金だ、というのが分かったなら、結局のところ取れるところからたくさん取って、必要な金額だけを分配する、という制度であることに他なりません。だから、公的年金保険料をいっぱい払って老後の生活を充実させよう、と考えるのは少しずれているということなのかもしれません。でも、しっかり働いて高い給与を維持すれば、公的年金制度だけでも老後の生活に困る状況にはならない、とも考えられます。その上で、より老後の生活を充実させたいならば、

自分自身でも老後の対策をする

ことは必要なのでしょう。

公的年金で最低限がカバーされたとしても、その先は自分次第ということです。別に今に始まったことではありませんが、一昔前よりは自分で考えて動かないと随分差がつく社会になってきた、というのは確かでしょうか。いくらくらい必要なのか、それはいつまでに必要なのか、どのような制度を利用するのか。客観的に見て、社会に支えられている側ではなく、社会を支えている側にいる人にとってはこの比重は大きい、ということを認識すべきでしょう。

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