日本は世界的に見て低金利環境でかつ高税率の国です。このことは、資産を増やす上でも、資産を継承する上でもハードルが高く、「3代で財産がなくなる」とも言われます。海外に目を向けた富裕層がどのような結果に直面するのか、垣間見てみましょう。

税制の網は複雑

一般的に、税制の根幹は全世界課税と域内課税のどちらを採用するかで国ごとに分かれています。資産が日本を出たからといって速やかに日本の税制から解放されるわけではありません。日本は全世界課税を採用しているからですね。

一方、香港は域内課税を採用しており、香港外での所得については問いません。オフショア地域といえど、域内での所得には一定の税金が課されますので、無税というわけにはいきません。

最終的に資産に対してどのような税金がかかるのかは、居住国、資産保有国、保有形態、資産内容などによって変わってきますので、ライフスタイルの中に海外という要素を取り込むのであれば、一人で突き進まずに、税制に対する知識または専門家サポートを得るのが得策です。

オフショア地域の活用

資産を効率的に増やし、保全し、継承する上でオフショア地域の活用は欠かせません。よく知られるオフショア地域としては、シンガポール、香港、スイスなどです。これらは外国人に対しても開かれた金融サービスを提供し、所得税や相続税などの面で非常に簡便でかつ低税率の環境を備えています。

日本人がどこをよく使うか、という視点も確かに重要ですが、世界的に見れば日本人の数はそれほどではありません。イギリス人やオーストラリア人など、長く資産を守り続けている人たちの視点を垣間見てみるのは肝心です。その道の専門家として働く人たちもそのニーズに合わせたサービスを提供しています。

海外移住におけるポイント

どこに住むのかはその人の自由ですから、永住権や市民権を取得して海外に住む術はありますが、いきなり永久移住というわけではなく、会社を設立したりあるいは就業機会を探すことで海外への足掛かりを作るのも一つの手です。

海外に移住したいと思うモチベーションは様々でしょうが、上述したような税制をひもとき、「そろばんを弾いて出てくる」選択肢だったのであれば、まずすべきことは、その土地に馴染むことができるかを確かめることです。

日々幸せに生きるために人間が必要としていることは誰しも大きくは変わりません。家族や友達がいること、美味しいご飯が食べられること、治安が良いこと、言葉が通じること、医療がしっかりしていること、などですよね。

短期的に海外に滞在するのと異なり、長く住むことを考えるのであればこうした生活の諸条件を満たしていることを自分の肌で感じる必要があります。

もしこれから海外に、というのであればもちろん分からないことはたくさんあると思いますが、度胸や気合だけではダメなこともある、と予め心に余裕を持っておくとよいかもしれません。

加速する海外移住

生まれ育った土地を離れるというのは時にプレッシャーではありますが、人生の選択の幅を広げるために、動く人たちはいます。お子さんの教育のため、より柔軟なビジネスのため、自由なライフスタイルのため、富裕層を中心に海外移住は常に一定以上のニーズがあります。日本人の目線で見てもそうですし、中国人、米国人、イギリス人、など世界でも比較的裕福な地域で財を築いてもそれは起こるわけです。

特に先進国ほど高齢化社会に悩まされ、「平等」を掲げた政策が出てきやすいですが、一人ひとりの目からみて、その「平等」は必ずしも公平ではない、と受け取れる瞬間もあるのかもしれません。自分らしい生き方やプライバシーを追求して、海外移住の選択肢が現実的になる人だっています。そういう時代なのかもしれません。

フットワークの軽い層

海外移住するときはよくよく考えて、、、などと説教がましいことは言えるわけですが、実際にはもっとフットワークの軽い層が増えてきているのも実際のところです。

  • そりゃあ法人税安い方が良いよね。別に世界中どこでもできる仕事だし。
  • 治安が大丈夫なんだったら、家族でとりあえず半年くらい住んでみる。
  • 最近知り合いが結構移住してて、いいって言うから行ってみるよ。

といった具合です。

彼らはある種の新興富裕層ではありますが、とにかく人よりも行動するのが早く、一定のリスクを受け入れることに積極的なタイプなのでしょう。高級なものに囲まれるよりは身軽でありたく一見すると倹約家、一方で選択の幅が広がるものにお金を出すことは厭わないのかもしれません。

使うかどうかも分からない国籍を「有事のときに逃げられるようにね」と保険代わりに持っている人すら見受けられます。

海外マネーのコンシェルジュ

日本にいるときですら、お金に関することというのは人には相談しづらいと感じる人がいると思いますが、海外に住むとそもそも相談するかしないかの判断の前に、相談できる人がいない、と感じる人が多いです。不安を抱えないことは大事ですが、結果、お金に関する非効率が増大しているのも確かです。

海外においてもコンシェルジュのような存在を求める人がいますが、自ら四苦八苦するより結果的にスマートな意思決定をすることに繋がっているという背景があるのでしょう。

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