香港保険の代名詞とも言われる、配当付き保険は利回りが高く見える。非保証であるにも関わらず、保険会社による運営に一定の安心感があると捉える人も多いが、同時に疑問が湧きやすいので解説してみたい。
目次
配当付き保険とは
配当付き保険とは英語でparticipating insurance planと言います。保険加入者としては、保険としての保障を提供を受けつつ、保険会社における投資収益の分配を受けることができるものです。
保険加入者は保険会社による投資のリスクを一部引き受けることになるので、その代わりに利益に応じた配当が様々な形(通常配当、特別配当、満期配当等)で得られます。
加入を検討すべき人
配当付き保険とは端的にはinsurance with investment elementsです。つまり、投資の要素を兼ね備えた保険になります。ただし、保険加入者はその投資の内容の大まかな方針は分かっても、詳細は分かりません。
したがって、加入を検討すべき人は保険としての保障を得つつ、中長期的に資産を成長させていきたいと考える人になります。
予算が少なく、それに対して得るべき保障が大きい人の場合には配当付き保険は推奨されません。
配当付き保険の仕組み
保険加入者は保険料(premiums)を保険会社に対して支払います。
保険会社は受け取った保険料のうち、保険としての保障を提供するのに必要な部分以外をそれぞれの保険商品における投資戦略に沿って、様々な資産へと投資します。
投資によって生じた利益については、ボーナス(bonus)ないし配当(dividend)という呼び名で保険加入者に一部を共有します。
投資である以上、これに関しては保証がありませんので、その年毎にあったりなかったりするものだと解釈され、どこまでいってもnon-guaranteeであるという性質は忘れてはいけません。
掛け捨てでない保険
配当付き保険は掛け捨てでない保険として注目する人が多いです。
一方で、保険としての保障を提供するのに必要な費用は当然ながら費用として消えていっていますから、厳密には掛け捨てている部分がないわけではないのです。
ただ、全体としては投資部分によってその保障費用を賄うだけの利益が予定されており、結果として保険加入者の目には掛け捨てでないかのように映ります。
同じだけの保障を得るのに、掛け捨ての保険と掛け捨てでない保険を比べたら一般には掛け捨てでない保険の方が保険料が高いのです。
ただ、人間の心理とは不思議なもので、少し高い保険料であったとしても、やはり目に見えてなくなる保険料よりも後から見て損をしなかったと思える非掛け捨ての方が好かれる傾向はあります。
配当の安定化に向けた取り組み
配当が非保証であるという点は保険契約上それ以外の何者でもないのですが、一方で保険会社として保険加入者に対してはできるだけ安心感を提供する必要があります。
一般には、①投資のリターン、②死亡保障等の申請状況、③税金の状況、④保険契約の維持費用、⑤保険加入者の定着状況などを踏まえて、保険会社は配当を決定します。
最も大きな要素は当然ながら①投資のリターンでありながら、残念ながら将来の投資の結果は予測ができません。
一方で、保険契約における配当は安定的であることがよいとされます。
投資リターンが毎年バラバラでも、配当が毎年バラバラというのは好まれないので、利益が大きく出たからといって配当を増やさず、損失が大きかったからといって配当を減らさないという、平準化プロセスを経る努力をしている保険会社が多いとはされます。
結果として長く保険契約を維持する加入者が多いほど、保険会社と保険加入者の双方にとって長期的なメリットが大きいからです。
香港保険における配当達成率
香港において配当付き保険を提供するにあたっては、保証(guarantee)の部分と非保証(non-guarantee)の部分を分けて、将来的な見込値を保険加入者に提示する必要があります。
このときに出力するものをイラストレーション(illustration)あるいは見積書と呼んでいます。
保険会社はイラストレーションに記載した配当のその後の達成率(fullfillment ratio)を公表する必要があるため、見栄えを意識して達成率100%を目指すインセンティブがあると言えます。
イラストレーションでの試算を高くすれば一時的に顧客の勧誘に成功するかもしれませんが、達成率が低い状態が続けばいずれ顧客が離れていくことは必至です。
本来、保険契約上は100%を下回っても何ら問題はないし、あるいは100%を上回ってもこれも問題はないのですが、よほど余裕ができない限りは100%を維持し、翌年にまた100%を達成するために備える、というのが比較的順当な判断になってきます。
この加減は非常に難しいので、配当付き保険の提供を長年継続している香港の保険会社が好かれるのにはそれなりに理由があるわけです。
よくある質問
Q. 非保証部分はゼロにもなり得るか
確率は低いと思いますが、その可能性がないわけではありません。なお、ゼロ以下にはならない、とは言って差し支えないかと思います。
Q. 過去の配当達成率は本当に参考になるのか
公表されているものは参考にはできますが、新しい商品が出れば基本はリセットです。
どちらかというと上述のとおり保険会社に対する牽制の意味合いの方が強いと個人的には思います。
Q. 見積書通りに配当はある、と考えてよいのか
原理は上述したとおりです。非保証部分に関してはあくまで保険会社が自ら示した目標のようなものです。
Q. どうせ達成率100%を目指すのなら、目標設定の高い保険会社がいいのでは
高く設定するということはリスクをとるということであり、それは顧客に良くも悪くも跳ね返ってきます。
Q. 非保証部分を見せて顧客に高いリターンを期待させているだけではないか
数字を見せびらかしたところで、実際の配当がなければ顧客は離れるので、保険会社同士の競争を促す方向には働いていると考えられます。ただ、どのような目線なのかは商品によるので確認すべきでしょう。