資産を失うことが楽しいということは決してないが、投資をしていればいつかは必ず来る当たり前のことでもある。

例えば株式市場は長期で右肩上がりかもしれないが、ときどき下がる局面がある。

そういうものなのだ。

本稿では、金融市場の調整を好きになる方法について挙げてみよう。

テクニカル分析

金融市場には価格の推移を示した足跡としてチャートが形成される。テクニカル分析にも様々な観点があり、およそそうらしいと思えるものすらある。

その中でもいくつかのインディケーター(指標)を確認し、それらがより多く相場の転換を示すならば、そこは金融市場の調整が終わるときである、というのである。

テクニカル分析の良いところは、“割り切り”にある。インディケーターがそれを示しているから、どんなに落ちてくるナイフのような金融相場であっても逆張りができる。確かにシンプルだ。そういう人たちがいることを確認してみるのは一興だ。

ストラテジストの存在

株式市場が下落するたびに、今後の相場の予想を立てる人が大きな証券会社には必ずいる。彼らをストラテジストと呼ぶ。彼らはもう10%程度は下落の余地があるものの、長期的には持ち直すため、良い買い場である、と言う。

注意深く見守りつつも楽観的だというのだ、何とも頼もしいではないか。なぜ誰一人としてGO TO THE HELLとは言わないのか、不思議に思うことすら許されない。そしてストラテジストの予想が当たったかどうかは問わないルールである。それもまた一興だ。

この世の終わりだという人たちの存在

つい先日まで何も言わなかったのに、相場が下落を始めた瞬間、ほれみたことかと言わんばかりに、金融市場の崩壊を叫ぶ人たちが現れる。確かに金融市場にはたまにショックがある、大きいものも小さいものも。

しかしながら、その度に戻ってきた歴史があるし、一見すると水飲み休憩でもしているようなものなのではないかと思われる。この世の終わりは予言通りに来たことはない。来ては困るわけだが。

過去の例を引き合いに出す

人々が先行きに不安を持ち始める頃、突如として過去の例を引き合いに出す人が現れる。現在のチャートは、2000〜2001年と酷似している。過去に米国債の逆イールドが起こったときは、そこから1年後にリセッションに突入している。1970年代のオイルショックの頃はこうだった。スペイン風邪が流行ったときはこうだった。

などである。申し訳ないが、私も同じようなことをしゃべる有象無象の一人である。

真っ赤な銘柄リストと困り果てたトレーダーの写真

金融相場は同じ方向に向かうことがあり、全面安となれば分かりやすい。銘柄の騰落率は真っ赤に変わり、ほらほらあなたのポートフォリオが毀損されてますよと話しかけてくる。あるいは金融ニュースのトップ写真には、困り果てたトレーダーが現れる。何のことはない、仕事を淡々と続けている人の方が多いに決まっている。

ジェットコースターの例え

金融相場は時に残酷であり、時間をかけて上昇したのち、ほんの数日で落下することがある。しかも落下する日はいつか来る。分かっているのに乗っているのだから、ジェットコースターと同じなのかもしれない。損失を出すのは辛いかもしれないが、思い切って声を出してしまえば、何のことはないかもしれない。ただの冗談である。

人間の行動原理

資産が増える瞬間よりも資産が減る瞬間の方が人間の行動としては現れやすい。

慌てて何かをしようとする人もいれば、指を咥えて見ているだけ人もいる。かたや冷静になって明確な判断を下す人もいる。自分がどのタイプの人間なのかを知るのは、金融市場の調整局面であることが多い。

調整局面の方が話題は多い

はっきり言って、金融市場が順調に右肩上がりを続けていさえすれば投資家というのは実に静かなものである。私とて何も語るに及ばない。何なら邪険にされる。なぜなら株式にアロケーションしたのなら、株価は上がった方が良いに決まっているからである。

しかし、一旦金融市場が調整を始めると、人々は投資をする意思決定をした自分に問いかけ始め、自信を取り戻すのに一生懸命になる。

投資家がパニックになってもなだめるのに様々な手を駆使しなければならないし、時には賢明な判断に向かうよう、食い止めねばならない。

普段話さない人から連絡がくる

別に投資家と名乗っておらずとも、何らか投資をしている人というのはそれなりにいる。普段は自分で好きなことをやっているので相手にもされないが、金融市場が大きく動いたときほど、独り言のような連絡がくる。

とことん自分で考え詰めた結果、人に話さずにいられなかったのだろう。自分の決断に誰かにうんと言って欲しい、あるいは誰かに一応聞いたという言い訳が欲しい、ただそれだけである。

一般の投資家というのは、世の中に情報が行き渡ったときにアクションをし始める。だとしたら、金融市場に向き合う私からすれば、非常に良いインディケーターかもしれない。近いうちに相場の動きは変わる。

もっと下がったものを探す

資産運用を行っていれば、資産の下落局面は必ずある。

インデックスで分散投資をしたからといってこれがなくなるわけではない。別のところに投資していればこの下落局面でも何の損失もなく過ごせたかもしれないし、あるいはもっと損失を被っていたかもしれない。

もっと下がったものを見つけることができれば、自分はそれほど運が悪くなかったのだと慰めることができるかもしれないし、いずれにしても調整だと思えるのであれば、もっと下がったものにリバランスしてあげればいい。次はきっと別のところの損失の方が大きいかもしれないのだから。

金融市場の調整を楽しむ

さて、金融市場の調整は、楽しもうと思ったら楽しめるものだと思えてきたのではないだろうか。調整局面に世の中で起こることは大体決まっている。ただ耐え忍ぶものとしてではなく、一興と思って過ごしてみるならば、次の調整局面が待ち遠しくなるに違いない。

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