数年前に比べると、ボラティリティが高い状態が続いています。このことは資産運用に対してどのようなインプリケーションをもたらすのでしょうか。

2020年3月以降の金融市場において、しっかりとスタンスを崩さずに取り組んでいただいたお客様には、何とか安心を取り戻していただいたとはいえ、実際の金融市場の動きは私にとっても想像以上のものでしたし、今後もどこへ向かっていくのかは見通しづらい部分があります。

仮説を持って臨むことは常に大事なのであえていくつかの可能性について探ってみることにしましょう。

そもそも「ボラティリティ」とは何か

馴染みのない言葉だという方もいらっしゃるでしょうからまずは基本から押さえましょう。

ボラティリティとは、価格変動の度合いを示す用語です。

大まかに言うと、ボラティリティにはヒストリカルボラティリティとインプライドボラティリティの2種類があり、ヒストリカルボラティリティは過去の値動きから算定されるものであるのに対し、インプライドボラティリティは未来の値動きの予想から算定されるものです。

通常、株式はリスクが高く、債券がリスクが低いと言われるのは、株式はヒストリカルボラティリティが高く、債券はヒストリカルボラティリティが低いということを意味しています。

つまり、分かりづらいという人は、要は「ボラティリティ=リスク」と思っていただくのが良いかと思います。そしてリスクは上下の価格変動です。

数値化されたボラティリティ=VIXを知る

ボラティリティはあらゆる資産について存在するのですが、代表的なボラティリティ指標(Volatility Index)である、VIXについてリーマンショック時と今を視覚的に比較してみましょう。

いわゆる、VIXはニューヨーク株式市場の代表指数であるS&P500のボラティリティを表す指標で、日本語だと”恐怖指数”と呼ばれています。(当然ながら様々な株式指数に対してボラティリティ指標はあります。)上記のボラティリティの2種類でいうと、後者のインプライドボラティリティに相当するものです。

何か突発的な市場イベントがあり、一時的に株価が急落する場合、もちろんボラティリティは上昇しますが、持続性はありません。ただ、今回のコロナショックにおいてもボラティリティの高止まり(持続性)が確認されているということです。こうなって来た場合、局面は少し変わっています。

VIXの示すことにより言えることは、株価がもっと上がる、あるいは下がるということではなくて、「株価が乱高下する状態はもう少し続く」可能性があるということです。

株価/債券価格の上昇/下落を追いかける思考を一旦停止してみる

投資家は当然のごとく「勝てる投資」を探し続けます。上昇/下落という尺度ですね。

しかしよく考えてみましょう。ボラティリティが高い状態というのは要は相場が乱高下している状態のことです。そもそも乱高下しているものに対して「勝てるかどうか」という思考で挑むことにどれだけ意味があるのでしょう。明日は勝っているかもしれませんが、明後日は負けているかもしれません。ボラティリティを知るということはあなたが置かれている環境について客観的に知るということです。

船を浮かべるのが同じ海でも荒ぶれる海なのか穏やかな海なのかを把握することは大事です。海が荒れ始めたのなら帆をたたみ、錨を下ろすことを考えねばなりません。あるいは大波が来ても上手くバランスが取れる船なのならば航海を続けることも可能かもしれませんね。

一般にはVIXが20から高くても30以下であれば海が荒れていない状態、それ以上であれば海が荒れている状態なので、個人投資家としては船を海に浮かべる際は覚悟をしなければならないとされています。

長期投資家にとってボラティリティは悪夢でしかない

証券会社にとっては投資家から注目を浴びるときが書き入れ時です。

普段は必死で営業をし、興味を引かなければならないのですが、ボラティリティが高いときは自然と興味を持ってくれ、あるいは投資家側から問い合わせてくれるからです。また、流動性が低下すると取引毎の手数料を取りやすくなりますし、売買を短期間に繰り返してくれる可能性も高まります。

もちろん、投資家であるあなたのことを本気で考えてくれる担当者も中にはいますが、損切りや押し目買いの取引の誘惑に負けてしまうことが最良の結果を生むとは限りません。

「流動性が低い=コストが高い」ですから、せっかくコストを安く長期投資に挑んできたはずなのに、ここで方針転換をすることがあってはなりません。長期投資家にとっては、低いボラティリティで誰も注目していないときが最も良い投資相場であることは間違いないでしょう。

ボラティリティはいずれ落ち着く

歴史にならうならば、ボラティリティが低い状態が平時であり、それは必ずいつか訪れます。

リーマンショックの後ですらちゃんと金融市場は落ち着きました。いつもいつも金融市場に行列をなして取引を今か今かと人が待っているわけではないのです。短期投資家はいつか飽きるのです。

例えば、皆さんの中にも、マスクを買うために何時間もドラッグストアに並ぶ人もいれば、そんなに並ぶのならマスクを買わなくて良いと判断する人もいますよね。行列がなくなるのは、①売り切れてマスクがなくなったとき、②マスクをどうしても買いたい人が買い切ったとき、③店頭に十分なマスクが置かれるようになったとき、ですね。

今の市場はいわば①や②が局地的に起こっているわけです。”できるものなら株式市場もしばらくお休み”したいと思っている人がいるかもしれませんが、これは残念ながらできません。それが株式市場の存在意義です。よって、③が訪れるのを待つのみなのです。

投資するチャンスを今なのかどうかを迷う人は、値動きを見るのではなく、ボラティリティを見ることによって、あなたが本当に市場に突撃すべきタイミングなのか考えてみることをお勧めします。

長期投資家が慌てて短期投資家に変貌することは避けたいものです。

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