香港のIFAとは、香港の金融当局から正式に認可を受けて活動する、独立系のファイナンシャルアドバイザーのことである。様々なブログでも取り上げられる香港IFAではあるが、実態としてはどのようか。

香港のIFAという職業に興味を持つ人はいるが、分かりにくさも付きまとう。業界の構造をよく知り、IFAとしてのサクセスストーリーを思い描きたい。

興味を持つと言っても人それぞれだが、

  • 香港のIFAとの契約を考えている人
  • 香港のIFAになりたい人
  • IFAでの転職を考えている人

あたりは参考にできると思う。

キャリアとしてのIFA

仕事としてIFAへの関わり方は人それぞれである。色々な職種があるが、恐らく以下に大別されよう。

  • 営業員
  • 事務員
  • 紹介者

ただ、恐らく、事務員として働く人で、職場がIFAファームでなければ嫌だ、あるいは、IFAファームで働くことを夢見ている、という人は稀だろう。

また、IFAファームに送客をする紹介者として働く人は、正式にはIFAファームに所属していないので恐らく副業として関わる人が多いことが想像される。

つまるところ、ここではIFAファームに所属する営業員をIFAと呼んで話すことは差し支えないだろう。

IFAで働く人はどのようなバックグラウンドを持っているのか

IFAファームにも実は保険代理店のようなところ、証券会社のようなところ、よろづ屋のようなところ、プライベートバンクのようなところなど様々ある。

よくライセンスの有無について確認することを一つのチェックポイントにすることがあるが、残念ながらそれだけでは表面的な情報に留まる。ライセンスがチェックポイントだと知っているので、あまり使わないライセンスでも取得して構えだけを見せることがあるからだ。

IFAは“ヒト”を見ることで実は多くのことがわかる。IFAで働く人のバックグラウンドはどのようなものだろう。

  • 30% – 他のIFAファームからのジョブホッピング
  • 15% – 保険会社
  • 10% – 銀行
  • 5% – 証券会社
  • 5% – 富裕層担当セールス(ゴルフ会員権、美術品、カーディーラーなど)
  • 5% – プライベートバンク
  • 30% – その他(不動産会社、会計事務所など)

IFAは大手と言っても大した規模にはならないし、なる必要もないので、セカンドキャリアと考えている人は多い。

香港は保険の産業が大きいので、何らか保険のビジネスをしたことがある人は多いし、IFAファームとしても保険販売に売上を頼っている会社はたくさんある。知り合いを手伝ってIFAファームに関わったことがある人もいよう。

他業種からの参入も比較的多いのは、既に別のサービスや商品をクライアントに提供していて、保険や証券などをクロスセルしたいと考える営業がいるからだ。副業的に働いている人も少なくない。

商品の販売でなく、より専門的なサービスを提供するIFAの場合には、得意とする専門の知識と経験を持っていることで大きな差別化にはなるだろう。

IFAで働く人はどのような将来キャリアを目指しているのか

IFAの良さは裁量の範囲の広さにあることもあり、将来キャリアについても実に多様である、とは言える。

単に副業的に働いている人なら本業に専念することを選ぶ人もいるし、IFAで稼いだお金で起業し、自営業として再スタートする人もいる。

中にはIFAとしての仕事を一生やり遂げるために、IFAファームを立ち上げ、より自分の理想に近いIFAの形を追い求める人もいる。

会社を作るところからスタートしてもいいが、ライセンスを取得したファームを買い取ってリブランドするというのも香港では一般的ではある。

会社の経営者兼オーナーは同時に金融事業における責任を取れる存在であることが望ましいとされ、一般には担当とは異なるステータスである、RO(Responsible Officer)として登録を行う。

IFAの報酬体系

IFAの報酬体系はざっくり言えば、歩合制か給与制である。

つまり、IFAファームにもたらした収益の○%を受け取るか、月給△万円という形で受け取るか、というもの。

それに基づいたIFAファームとIFA個人の契約が存在することになる。

IFAファームも企業である以上、売上を上げていく必要があるが、採用している報酬体系をみるとIFAファームの考え方、IFA個人の考え方が透けて見えることはある。

例えばデメリットを挙げてみると、

  • 歩合制で成り立つIFAファームは人数をいくらでも増やせるが、全体としての結束は弱く、人の入れ替わりが激しい
  • 給与制で成り立つIFAファームは会社そのものを宣伝する傾向があり、担当者の顔は見えづらい

といった具合だ。

どちらも一長一短であるがゆえに、結局のところ「会社としてどうあろうとしているか」の部分になってくる。

歩合制のIFAをたくさん採用すればリスク少なく事業を運営はできるが、会社としてのコントロールは弱く、IFA同士の交流はよそよそしいものになりがちだ。

かといって、報酬体系だけで全てが語れるわけではない。歩合制だろうと給与制だろうと、風通しの良い、雰囲気のいい会社はあり得る。同時に歩合制だろうと給与制だろうと、クライアントを金づるのように捉えて、いかに収益を上げるかしか考えない会社はあり得る。

IFAチームの存在

IFA個人は一人でやっていくこともできるが、マンパワーの限界もあるのでチームを結成する場合も多い。この場合、IFAチームはIFAファームの中にあるプチ会社のようになり得る。

ただし、チームヘッドの裁量が大きく働くことがあり、IFAファームで雇われたはずなのに、会社との距離が遠くなる可能性があり、この場合は要注意だ。

もし万が一、チームヘッド個人との契約を結ばされることがあったり、IFAファームとチームヘッドとの金銭のやりとりに不透明さがある場合は、将来の大きなリスクと考え、納得できるかどうかは再考すべきだろう。

どうしても気になる場合は、例えばIFAファームの社長など、チーム以外の人とも会話してみるとよいだろう。あまりに重層的な組織では末端の営業員にとって不利な条件となり得る。

歩合制の特徴

歩合制はなんと言っても実力主義になるため、高給取りを目指すことはできるという意味でも好きな人は好きだ。したがって、一般には歩合制の人の方がガツガツと営業をする傾向がある。やったらやっただけ評価されるので当然と言えば当然だろう。

一方で、稼ぎに直結しないことには消極的になり得る。契約後のサポートが手薄になる可能性、場合によっては連絡すらとれなくなる可能性だってある。お客様のことを考えて、という視点をどれだけ保てるかはその人次第といったところであるが、人によっては手数料がたくさんとれる商品だけを売り歩くことになる。

給与制の特徴

給与制のいいところは、落ち着いた仕事の仕方をできることだろう。

IFAの営業成績はクライアントによってもたらされるが、上手くコントロールできる部分もあればそうでない部分もある。給与制を選ぶならば、まずはIFA自身が地に足のつけた提案をすることができる可能性は高い。

ただ、給与制であっても、定期的な査定はあるわけだから、営業成績は大事ではある。しかし、歩合制に比べると、一つ一つの契約においては焦る必要はない。

給与制の場合、給与を上げるために営業成績は確かに大事だが、一方で転職によって給与を上げるという方法も手っ取り早いという結論になる。

特に香港では転職を常に意識している人ばかりなので、同じ仕事でも給与の高いところへとささっと移ってしまう人はいる。給与制の場合、クライアントとの関係性よりも自分の人生を優先しているIFAは多い、かもしれない。

IFAにとってのオフィス

IFAとしての仕事はクライアントと会うことであり、人によっては会社を訪問し、オフィスを覗くことで納得し、クライアントになる人もいるから小綺麗なオフィスが重要であるという考え方はある。

一方で、IFAの仕事の多くは、会社にいなくてもできることが多く、リモートワークにも比較的対応しやすいと言える。

特に歩合制のIFAの場合は勤務時間も特に決められていないので、オフィスの固定費を払うことすら不要と考えるかもしれない。

得られた収益を使ってビジネスを回しているがゆえに、経費が少ない方が、収益目標に対する圧迫は少ない、結果的にクライアントに請求するフィーも少なくなり得るからだ。不必要な費用はかけない、これもIFAにとっては重要である。

これからの香港で日本人としてできること

遡ること10〜15年前、かつての香港のIFAは日本からくる旅行客がクライアントになり得た。

香港にきて銀行口座を開設し、金融商品を買った後は、美味しいご飯を食べたり、マカオに遊びに行ったり。それだけのためのツアーが組まれたほどだったという。

これにより一儲けした初期の日本人IFAがいたことは間違いなく、当時の残り香で暮らす人も確かにいるようだが、それは結局のところ、日本居住者向けに何を提供していいのか自体に盲目的だった、あるいはただアグレッシブだっただけだ。

結果として波が通り過ぎると業界としては縮小する方向へ向かい、同時に、サービスを受けた側のクライアントも思い描いたとおりに財を築いたかというとそうでもないという現実が10年経った現在には残されている。

日本でもIFAという働き方が一般的となって、クライアントによる業界への理解が進んでいる。香港でも金融規制が厳しくなり、かつてほど荒っぽい稼ぎ方はできなくなり、実力と経験を問われる時代になってきたと言える。

規制の網にかかりたくない人はライセンスを返上して、紹介者の地位に下るという道を選ぶ人もいる。しかし、そのようなお金の流れもまた、時間とともに否定されることになるだろう。

今の香港金融では、クライアントの書類にサインをする人がクライアントの担当者であり、説明責任を負っているのだから。金融業界はよりしっかりとした倫理観を持つ人物を求めている。

これからの香港の業界はより洗練されたサービスだけが生き残っていくことになるだろうから、ある意味では怪しいものがなくなって、面白みはないかもしれない。

一方で、金融都市香港で生活を営む、財産を築く上では、適切な情報に当たることが本来好ましいのであり、そこに日本人独特のニーズを加味したサービスが提供できるのであれば大きなサポートとなるのではないかと思っている。是非とも香港のIFAの次の時代を担う人たちに門を叩いてもらいたい。

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