今回は海外から香港に来て滞在する人が考えることの多い、香港永久居民(パーマネントビザ)という選択肢について話をしてみたい。

香港の人口に占める日本人の割合

そもそも、香港にはどのくらいの日本人が住んでいるのであろうか。

在香港日本国領事館(外務省)で把握する「在留届」に基づく日本人の数では、約2万人程度となっていることはよく指摘されるものの、在香港の日本人の体感ではもっと少ない、というのも共通認識だ。理由は様々だろうが、在留届は来港時には出す意欲が高いが、帰国時にわざわざ領事館を訪れる人が少なくなるし、在香港日本領事館の数字にはマカオ在住者も含まれている。

ちなみに、日本国の旅券法では「外国に3ヶ月以上滞在する場合は管轄する在外公館に届出なければならない」こととされている。世界最強と言われる日本のパスポートでもって旅行する場合も、ビザなし渡航は概ね3ヶ月以内に限られるので、旅行以上のアクティビティをその国でする場合は、在留届を出す必要がある、と認識しておくとよい。海外で生活することは個人の自由ではあるが、万が一の際、最終的な身元を保証し、安全を確保してくれるのは在外公館、ひいては日本国であることを忘れてはならない。転出時にも「転出届」を忘れずに出そう。

さて、香港政府が把握する香港居民に占める日本人の数はどうだろうか。

以下の統計は5年おきに更新されており、最新の数字は2016年時点となっている。

Source : https://www.bycensus2016.gov.hk/en/bc-mt.html

これによれば、

香港居民に占める日本人は約1万人

ということらしい。中国籍を除けば、国籍別にもトップ10入りしている状況だ。ちなみにそれ以外を見渡すと、東南アジアの人が多いのは、主にはヘルパー(家政婦)として来ている人だと推測される。その他はアメリカ人やイギリス人が多い。

つまり、日本人は香港全体からすれば約0.1%であり、決して多くないし、新型コロナの影響もあって永久帰国を選んだ人もいるだろうし、駐在員の人員カットも進んだだろうから、おそらく今は8,000人くらいではないかというのが雑な予測ではある。次回の統計ではこの表には載らないかもしれない。

香港永久居民の人口比

さて、少し横道にそれたので香港永久居民の話に戻ろう。香港へ“住む”ということであれば香港居民となる申請をイミグレに出す必要がある。大まかな分析をしたものは香港政府のリサーチにもある。その中で、非永久居民と永久居民に分類されるが、こちらも2016年の統計では、永久居民が約650万人となっており、人口全体が約710万人であることを考えると、

永久居民は香港人口の9割以上

を占めるという計算だ。中国香港籍が約600万人くらいと考えると、

他国籍での永久居民はおよそ50万人

と考えておけば遠からずといったところ。うち日本人の永久居民は5,000人もはいない、という数字感。

パーマネントビザ(PR)の申請方法

香港永久居民として扱われるために、家族が既に香港に縁があるかどうかは影響するが、ここでは、これまで全く香港に縁がなく、一から香港永久居民(パーマネントビザ)を目指す人を想定する。

パーマネントビザを最初から取得する、というのは現実的ではない。香港の今のルールでは、香港居民としてスタートした後、ビザの延長を経て、7年を連続して経過すれば、パーマネントビザへの切り替えの資格を得ることとしている。一般的な就労ビザであれば、2年+3年+3年、あるいは2年+5年などのような形で7年を経過することが多いようだ。ビザの形態や延長頻度は人によるが、とにかく7年を継続することが最も大きな壁である。

一方、7年が過ぎれば自動的にパーマネントビザに切り替わるかというとそうではない。非永久居民用のビザを持つ人は、永久居民としての資格を示す書類をもって、再度イミグレに赴き、申請を行う必要がある。

7年の間にしっかりと香港で仕事をし、生活の拠を築き、税金を収め、行いをよくしていれば、基本的には永久居民として認められる、とされる。

仮にそうだとしても、パーマネントビザの取得の意思がなければ、別に申請しなくても構わない。私の知り合いにもそういう人はいるし、パーマネントビザは認められなかったが、それでも香港居民として居続けることを許可されている人だっている。

最初の1−3年くらいはやはり香港という場所で生活するお試し期間であり、3−5年で様々なライフスタイルの変化も経験し、5−7年は永久居民に向けて準備する、そんな印象をそれぞれのフェーズにいる人からは受ける。7年というと初めは少し長いと感じる人もいるが、気づいたらそれくらいになっていた、という人の方が多い。逆に7年は辛抱しなければならない、というような思いが芽生えるのであれば、きっと7年経った後に香港にいたくないと感じるのではないか。そんな人がパーマネントビザにこだわる必要があるのか、よく考えた方がいいかもしれない。

パーマネントビザのメリット

さて、パーマネントビザを得ることでどのようなメリットがあるのか。いくつか代表的なものを挙げてみる。

  • ビザの延長が不要
  • 就労制限がなく、転職、起業、副業が自由
  • 香港での選挙権が得られる
  • マカオにパスポートなしで行ける
  • 不動産取引時の税金(Stamp Duty)の優遇がある
  • 銀行口座開設や金融商品など受けられる金融サービスが増える
  • 様々な政府補助金の対象となりやすい(COVID-19では電子消費券の配布)

中国籍に帰化せずにして、永住権+市民権としての機能を概ね備えており、そして多国籍の人に平等に機会が開かれているという意味で、パーマネントビザのメリットは大きい。

パーマネントビザのデメリット

パーマネントビザには上記のとおりメリットがあるが、同時に、香港市民としてより強く認識されるわけで、そこには義務もあり、あえてデメリットと考えることもできる。

  • 陪審員制度にあたる可能性がある

日本の裁判員制度同様、香港には陪審員制度があり、ランダムに陪審員が選ばれる。広東語がうまくないので、、という理由で断ることを考える人がいるようだが、香港市民としての義務でもあることを認識する必要がありそうだ。

  • 中国本土の人と結婚にあたってのプロセスが変わる

中国本土の人と香港で出会って結婚し、子供が生まれることもあるだろうが、永久居民なのか、非永久居民なのかで、結婚にあたってのプロセスが現状は異なっているとされる。もし、中国本土の人との将来を考える場合には、どのようなステップを踏むのが一番良いか考える必要はありそうだ。

パーマネントビザの失効・喪失

さて、香港のパーマネントビザを取得したからといって、国籍が変わるわけではないので、日本人であり続けることは可能だ。就業の自由なども得られることから、一時的に香港を離れることも可能ではある。諸外国の永住権においては、長期にわたってその国を離れることを認めていないことも多く、3年連続して香港を離れないこと、としている香港の在り方は、そもそも人の往来の激しいハブとしての役割を担って来た地域らしい、とも言える。

3年連続して香港を離れないこと、の部分については、3年のうちに1度でも香港に来てさえいればパーマネントビザを維持できる、とも解されることがある。そのため、香港以外に実質的に住みながら、たまに旅行で香港を訪れて飲茶を楽しみ、パーマネントビザを維持すればいい、と解釈する人すらいる。本質的には違和感のある解釈な気がするが、パーマネントビザは市民権に近い面があるので、離れていることも許容範囲となり得るというのが現状の考え方ではあるようだ。ただし、どこまでいってもビザではあるので、最終判断は政府に委ねられている。

ただし、逆にいえば3年以上全く香港に関わりもせず、訪れもせず、ではさすがに様々なメリットを与え続ける意味はないので、失効のタイミングがやってくる。新型コロナの流行により、香港は厳しい入境時の強制隔離政策を維持したし、各国でもロックダウンが見られたことから、普段であればふらっと香港を訪れていた彼らも残念ながら余計なコストを払ってまでパーマネントビザを維持することについては消極的だ。逆に3年が経ってしまって失効を言い渡されたが、不服申し立てをして裁判(Tribunal)に進むケースも出てきてはいるようだ。永久居民の判定において考慮する点についても回答しているので参考にしてみるといいかもしれない。

なお、失効した場合でもビザが完全になくなるわけではなく、Right of Abode(永久居民)からRight to Landというビザのステータスに自動的に切り替わり、選挙権等の一部のメリットが失われることとされる。ビザが維持される以上、パーマネントビザの維持にこだわるかどうかは自分自身と家族のライフスタイルに照らして考える必要がある。

香港永久居民である意味

香港には様々な人がいるし、人の生き方は様々だ。香港永久居民とはやはり文字通り香港に永久に居続ける意思のある人である、というのは一丁目一番地だろう。たまたま香港に長くいることになってパーマネントビザを取得した人、あるいはパーマネントビザを意地でも取得したくて修行した人、いずれにしても香港を人生の一部として(もっと言えば香港に重きをおいて)考えられないのであれば、パーマネントビザにこだわることにそれほど意味はない、とは言えそうだ。年齢を経れば経るほどに、香港を墓場として選べるかどうか、そんなことにも思いを馳せる人が増えてくる。