海外に移住をする人の場合、生活面で落ち着くことが優先され、資産運用が二の次になることも少なくありません。長期に及ぶ資産運用をしっかり設計して海外移住に臨みたいものです。

口座開設は必要か

海外においても日本同様、お金を管理するのはまずは銀行口座、その次に資産運用の口座となります。普段遣いの現地の銀行口座と資産運用専用の口座をそれぞれ用意することが理想です。

普段遣いの現地銀行口座

ご自身のお金はどこかに入れておかなければいけないわけですが、まずは普段遣い銀行口座を用意します。いつでも気軽に入出金ができるものですね。基本的には現地で銀行口座を開設しておくのがベターです。何かトラブルがあったときに支店窓口に行って解決する、ということも想定されるからですね。

新興国にお住まいの場合、資産を現地通貨に換えてしまうと、預金保護が得られなくなったり、高インフレにさらされたりしますから、香港で国際的に通用する銀行口座を開設しておく人もいるようです。

一方、日本の銀行口座も可能であれば維持しておくとよいでしょう。海外移住をした後も細かな支払いが発生するなど、日本円が必要になる可能性はゼロではないからです。生活の比重が海外に移るにつれて日本の銀行口座の扱いを考えればいいのです。

資産運用専用の口座

日本に住んでいたときは日本の証券口座等を使っていた人が多いと思いますが、海外移住をした場合は基本的には新規売買ができません。

即座に口座を閉鎖せよと言われる訳ではありませんが、売買ができないのであれば資産運用に用いることはできないのです。日本の住所を登録したまま、という人もたまにいますが、海外移住をした場合は、基本的には閉鎖しておくのがいいと思います。

近年であればNISAやiDeCoなどの税制上の優遇がある口座で資産運用を試みた人もいるでしょうが、これらの優遇もなくなり、利用ができなくなる、というのが基本的な考え方です。

したがって、海外移住という選択肢においては、海外移住後に資産運用専用で利用する口座が必要になります。

もちろんオンラインで開設できる口座はいくつもありますが、長く利用することを想定するのであれば担当者がつく口座の方が後々何かトラブルが起こったときのリスクヘッジとなります。

また、海外の資産運用口座の方が一般的には売買できる金融商品の種類が多いので、その点においてもメリットはあると言えるでしょう。

年金づくりを早めにスタートする

年金に関しては日本人でかつ日本に住んだことのある人であれば、日本での年金が働いた年月に応じて得られます。

日本にいてすら「消えた年金問題」などが起こるわけですから、ご自身の加入記録は必ず確認しておきましょう。国毎の強制加入年金については、社会保障協定を結んでいる国同士であれば二重に払う必要はありません。

また、海外移住後にも日本で任意加入により、年金保険料を払い続ける道もありますが、多くの人は海外での自分年金づくりに励みます。その方が国の制度に依拠せず、自分自身のライフスタイルに合わせた柔軟な設計にできるからですね。

日本での年金に関しては、各自請求の手続きが必要であり、支給開始となった後は、年1回届く「現況届」を在留証明書と一緒に返送することで生存確認となりますから、忘れずに行いましょう。

生活が落ち着いてから、という人は少なからずいますが、海外移住する年齢がそれなりに高い場合、残された時間は決して多くありませんので、可能な限り早く年金づくりの設計をすることが望ましいとは言えるでしょう。

海外移住のストラクチャーを検討する

もし仮にあなたが既に日本で財を成した人なのであれば、日本で築いたものをどのようにしておくかを検討する必要があります。

不動産はどのように管理するか、自らがオーナーを務める企業の株式はどうするか、など日本でいたときとは異なるソリューションを用意すべきかもしれません。可能な限り網羅的に、そして総合的に評価をしてグレーな部分のないよう、ストラクチャーを組む必要があります。

お金のマネジメントを誰かと一緒にする

海外に移住しようという人は比較的サバイバル能力が高いので、自分で何もかもやろう

とするケースが散見されます。もちろんこれは大切なことで、海外にいると周りに頼れる人物(特に日本人)が少なくなりがちなこともこれに拍車をかけるでしょう。

しかし、お金に関することはできれば信頼できるアドバイザーを見つけておくのがよいと思います。

日本とは異なる環境において、日本の習慣のまま過ごしていると、必ず想定と異なる事態が起きます。生活費における支出割合の違いやインフレ、教育費、レジャーなど、全般にわたって認識を改めるべきポイントがあります。

もしこれから海外移住をしようと考えている人であれば、事前にシミュレーションをし、そして現地での生活を始めたのちにも継続的にチェックをすることが海外生活を成功に導くカギになってくるでしょう。まして、海外に骨をうずめる覚悟すらあるのであれば、家族以外にも何かあったときに聞ける人がいるのは大切です。

そしてお金の悩みから解放されたとき、本当の意味で海外生活を楽しめるかどうかはあなた次第、ということになります。

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