投資をする際には、リスク許容度(level of risk tolerance)を判定する必要がある、というのは概ね世界共通である。いくつかの質問に答えることで100点満点中いくらくらいか、とか、積極的、やや積極的、中立的、やや保守的、保守的などの段階別に分けたりすることも一般的かもしれない。

その結果そのものや、限りあるパターンに分類されていることに納得感がないという人もいる。

実のところ、投資のリスク許容度判定に関しては多くの人が誤解をしている、ということを本稿では触れておこう。

リスク許容度とは何か

そもそもリスク許容度とは何なのであろうか。

確かに、リスクというのは投資家にとって極めて重要な概念である。リスクとリターンは相関している、などという言い方もすることがある。つまり、ローリスクローリターン、ハイリスクハイリターンは存在するが、ローリスクハイリターンを望み難いし、ハイリスクローリターンは受け入れては損である、と考えることができる。

リスクを好む、リスクを避けたがる、それが人によるのは確かだが、そもそも人によってリスクの定義が違う気もしないでもない。

投資にはリスクがある、したがって、どの程度のリスクを受け入れられるかによって投資のスタイルが変わってくる、というのがリスク許容度を判定する意味である。

投資家のリスク許容度は変わる

リスク許容度は様々な質問に対する答えによって判定される。つまり、その質問に対する答えが変わったならリスク許容度が変わることになる。だから、あなたと私ではリスク許容度は違っていて当然である。

隣の友人がやっている、上手くいく投資も私もすればよいのだ、というのは往々にして成立しない。

そしてあなた自身のリスク許容度も様々な要因で変わる。

典型的なのは、若いうちはリスク許容度が高いのでポートフォリオに占める株式の割合が多く、リタイヤメント後はリスク許容度が低いのでポートフォリオに占める債券の割合が多くなる、というものだ。

年齢によってリスク許容度が異なる、というふうにも受け取れる。

これは何となく受け入れられると思っている人は多い。

投資家のリスク許容度は変わらない

次に、投資家のリスク許容度は変わらない、という話。ある証券口座を開設し、リスク許容度判定を行った。それに基づいて購入できる金融商品が決まったとする。では、その投資を来年になって解約するかというとそういうことは多分ない。1年やそこらでリスク許容度が変わったと言えない、という話ではなくて、多くの場合はリスク許容度の変化について考えることがない、というのが正解である。自分はトレーダーではなく長期投資家なのだから、同じことをただ淡々とやり続ければいい、という考え方にすら本来はふと疑問が沸かねばならない。

人間によってリスク許容度は異なるが、同じ人間はリスク許容度はずっと同じである、というふうにも受け取れる。これも何となく実感としては正しいし、現実問題としてこのように扱っていることは多いかもしれない。

リスク許容度が単一で不変だという誤解

リスク許容度を変化させ得る要因は実はたくさんある。例えば

  • 配偶者を失ってすぐのとき、3ヶ月経ったとき、1年経ったとき
  • 巨額の遺産を相続してすぐのとき、3ヶ月経ったとき、1年経ったとき
  • 金融危機が起きると言われているとき、実際起きて40%の損失が発生したとき

などである。要約して、経済的な状況が変わったとき、と言ってもいいだろう。

つまり、自分が置かれている環境によって、さらに厳密にはその環境をどう認識しているかによってリスクに対する評価は大きく影響されることになる。

投資においては感情的になりすぎず、客観的であれというのはよく言われるのに、リスク許容度とはまるで主観そのもののようにすら思えてくる。

先ほどの例でも気づいたかもしれないが、ある事象をきっかけにリスク許容度が変化したとしても、それは時間とともにまた変わっていくことがある。人間は最近起こった出来事を頭の中で重視する=バイアスをかけるものなのである。金融危機が起こってすぐは異様に警戒するし、数年経って誰も警戒していなければ、自分も全く警戒しない、ということになる。

リスク選好は一律論理的ではない

あなたは宝くじをハイリスクハイリターンの投資だと思うか。

宝くじが当たる確率は低く、当たらなければ投下したお金が全て失われることを知っているあなたは恐らくハイリスクハイリターンだと答える。でも、あなたは一攫千金を狙って買うことにしている。

そんなあなたに株式投資のことを話すと、リスクが高いのでそんなものには手を出さず堅実に賃料の見込める不動産と積立型の保険に加入しています、と回答する。

もちろん投下するお金の規模が宝くじは小さく、不動産や保険は大きいので、バランスとしては取れているのかもしれないが、リスク選好としてはダブルスタンダードである、と言わざるを得ない。

リスクは見えなかったら怖くない

例えば、株式を購入してすぐは損益がプラスマイナスで日々動くのを一生懸命眺めて一喜一憂していたのに、一旦マイナスにどっぷり浸かると人は“塩漬け”にしたがる。

ただ、塩漬けにして見てみぬふりをしてしまうと、実はそんなに気にならなくなる、というのもある。何も株式のリスクが変わったわけではなく、ただあなたに見えていないだけだ。

上場株式と未上場株式でも同じようなことが言える。当然だが上場株式の方が流動性が高く、常に価格が動いている。一方未上場株式は売ろうと思っても簡単には売れないので価格はないに等しい。このような性質から未上場株式の方がハイリスクハイリターンなわけだが、価格が見えないがゆえに、安心をして投資をする人がいるのも事実。でも本来、未上場株式はリスク許容度の低い人が投資をすべきものではない。

ファイナンシャルアドバイザーの役割

リスク許容度の判定は投資の成功において重要な役割を持つ。本人が予期していないリスクが顕在化すればそれは恐怖であり、悪い経験としてずっと心に刻まれるのだから。

「あなたのリスク許容度は積極的ですので、積極的な皆さんのポートフォリオはこうなります。」

というのはロボアドバイザーやあるいはラップ口座でもよく行われるが、残念ながら限界もある。フレームワークはフレームワークとして受け入れつつも、一人ひとりの、しばしば矛盾する考え方を巧妙に投資戦略に反映できることが望ましい。

あなたが頑なにこだわる投資戦略は、あなたが本来辿り着きたいと思う生活を提供はしてくれないと気付くことが必要であり、また、投資に傾斜したがために、人生を通じて最も重要だと考えることができなくなってしまう可能性も排除しないといけない。

リスク許容度の変化について本人が判定することは非常に難しい。ただ、判定の材料となるものは本人からしか提供されない。ここにファイナンシャルアドバイザーが第三者として伴走する必要性が出てくるのである。

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