投資案件を友達や知り合いから紹介されたが、良し悪しについて判断基準を持っていない場合、どうしている人が多いのでしょうか。たまに来る相談の中で代表的なものを取り上げてみます。

ロイヤルロンドン社とは

ロイヤルロンドングループとは、1861年に設立されたイギリス最大の相互保険、年金、投資会社のことです。預かり資産にして約1,300億ポンド、保険契約数約880万件、従業員約4,000人(2019年6月時点、公式HPより)です。

イギリスにおける保険の歴史が長いことは有名ですが、その中でもロイヤルロンドンは相互保険(Mutual Insurance)としてよく知られています。日本でも生命保険会社は相互会社がいいのか、株式会社がいいのか、なんて話が過去にありましたよね。

保険に関していえば、イギリスの保険会社だと再保険で登場するロイズ保険組合、リーガル&ジェネラル、アビバやプルデンシャルなどがありますが、後ろの2社くらいの方が一般の方にはよく知られているかもしれません。

年金に関して言えば、イギリスでは年金はQROPS(Qualifying Recognised Overseas Pension Schemes)やSIPP(Self Invested Personal Pension)などの形で、海外に移転させることもでき、国外で暮らす英国人に対するサービスもたくさんあります。私自身もサポートはできますが、当然ながら日本人から問い合わせがあることはほとんどありません。

RL360°社とは

一方、日本語の文脈の中でよく聞くロイヤルロンドンとは、正確にはRL360°社のことであることが多いようです。同社はもともとはロイヤルロンドングループの傘下にあった部門ですが、スピンアウトした後、現在はIFGL(International Financial Group Limited)の一員です。したがって、ロイヤルロンドン社とはもう資本関係はありません。

RL360°社はイギリス領マン島に本社を置く、保険、投資会社です。親会社のIFGL(同じくイギリス領マン島)の傘下には、Ardan InternationalやFriends Provident International(フレンズプロビデント)もあり、それぞれは似たようなビジネスを展開してきました。イギリス領マン島の保険会社は買収を経て、いくつかのグループに統合されつつある、と言えるでしょう。

イギリス領マン島とは

イギリス領マン島(British Isle of Man)とは、イギリス王室属領として独自の法律が適用される、オフショア地域として知られています。

イギリス領と書くと植民地のようにも聞こえますが、国王の直轄地として大幅な自治が認められていることを意味します。その中でも保険会社が籍を置くオフショア地域となっていますが、保険のタイプでいうと、死亡保障が高額で、寿命リスク(Longevity Risk)を管理しなければならないような保険というよりは、年金保険といった実質的には資産運用を行っているような保険に関する強みと歴史のある地域です。

それに合わせて、マン島自体の法律として、契約者保護制度(Policyholder Protection Scheme)というのがあり、マン島金融庁から監督されている立場の保険会社が保険金の支払不能となった場合には、政府が最大90%まで保証することとされています。

マン島はオートバイレースなどでも知られますが、淡路島くらいの島なので、実際に訪れたことのある人は少ないでしょう。私もマン島出身の知り合いがいる程度です。

RL360°の金融商品について

会社として、あるいは地域としての信頼度、評判の考え方は人によるとは思いますが、事実関係を正しく認識することはリスクの把握にも繋がります。

次に、同社が提供する金融商品では、積立型のもの、一括型のものがあり、購入時期によって商品名称が異なりますし、費用体系も微妙に異なるので、ここで詳しく触れません。ただ、仕組みとしては、年金保険のように、保険商品としての性質を持ちつつも、実際には資産運用としての側面が表に出やすいという特徴があります。したがって、オフショア積立投資のような言い方をされているケースがあるわけです。

ただ、証券口座で単に月々の積立を行うのとは異なり、保険契約であることによる費用やデメリットも発生していることに注意が必要です。例えば、途中で積立を止めればペナルティがあるかもしれませんし、選べる投資の選択肢もそれほど多くないかもしれません。

保険契約なのに受益人を指定せずに放置している人も多くみかけます。契約する前に、商品そのものに対する理解を深めることは最低限必要なことと思います。また、解約に走る前にも、同じことが言えるでしょう。

香港におけるサポートについて

RL360°社は保険会社として香港金融当局から認可されていますが、香港におけるオフィスはあくまでアジア地域におけるサポート拠点にとどまっており、香港に住む顧客に対して同社の商品を展開しているかというとそういうわけではないようです。

英米においては、独立系ファイナンシャルアドバイザーの存在が大きく、保険会社の立場からすれば、直接販売するのではなく、IFAチャネルで顧客を獲得しているケースが多いですが、その展開にあたっては各国での法令遵守は欠かせません。日本において勧誘を行うにあたっては金融商品取引業の登録等が必要となってくることは、既に証券取引等監視委員会(金融庁)によって申し立てがなされた例(事例1事例2)があるとおりであり、未だに似たような投資案件に関する相談があることは不思議でなりません。

本来はIFA自身が直接アドバイスを提供することを想定しているものを、重層的なマーケティングにより展開することが責任の所在を曖昧にする可能性があること、顧客にとっても情報の不透明性に繋がり得ることは容易に想像がつきます。

もちろん顧客にとって契約が無効になるような話ではないのかもしれませんが、頼りにしていた担当者がいなくなり、困っている人を見かけるのも事実です。泣く泣く解約をして資金が目減りする人も少なくないと聞きますから、予め適切なコンタクト先を確保しておきたいものです。

まとめ

この手の話によくあるのは、商品の正当性について自分を納得させるのに力を注ぎ、途中のプロセスについて気に留めない、ことが起こりやすいという点です。アドバイザーの立場から大事なことは、商品そのものがしっかりしたものであることはもちろんのこと、それを届けるプロセスもまたしっかりしたものでなければ、最終的に満足のいく結果は得られにくい、ということだと思っています。

資産運用はマラソンのようなものです。始めることは確かに大事ですし、一つひとつのステップはそれほど大変には見えないかもしれませんが、衝動的にならず、中長期で続けるには何が大切なのか、どういうリスクがあるのかを考えてみるとよいかもしれませんね。

もし海外在住のアドバイザーに相談してみたい、という人がいましたら是非私までお声がけください。

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