過去にない円安だから日本の不動産がバーゲンセールのように見える、というのはセールストークでも何でもない。住んでいる国で住宅を購入するより、別の国で住宅を購入した方が、部屋も広くて安いという現象が起こりやすくなっている。しかし、実際に日本の不動産に投資をするのは簡単なことなのだろうか。どのような課題が待ち受けているのか、ざっとまとめてみよう。

不動産の情報を集める

当たり前の話ではあるが、投資するとして不動産の情報をいかに集めるか、という問題がある。もちろん、過去に日本に住み、賃貸契約や不動産の売買契約を結んだことがあるのであれば幾分か楽ではある。もしそうでないならば、そもそも不動産の契約をするためにどのような手続きが必要かを知っておく必要はある。

また、日本の不動産マーケットがどのようにできあがっているかを知ることも重要かもしれない。海外では古い物件も変わらない価格で売買されているが、日本だと新築の方が好まれる、などである。あるいは人々の居住形態もそうかもしれない。東京とはこのような不動産市場で、名古屋はまた違っていて、などである。

個別の不動産においても、マンションなのであれば単に部屋の大きさだけでなく、駅徒歩何分かや周辺の生活環境、民泊を許可しているかどうか、など、いわゆる1ページに収まっている情報もあれば、聞かないと出てこない情報もある。

実は近くに墓地があったり、事故物件であるかを聞き忘れたり、日本にいて実際に現地で確認していれば気づくものも、海外にいることで思い至らないことだってあるだろう。

日本の物件はインターネット上にはあがっているが、だからといって海外の現地不動産屋さんで取り扱ってくれるとも限らない。海外からアクセスすることにより、良い物件に出会うのかどうか、という観点でもよく考える必要があるのかもしれない。

内見をする

海外から日本の不動産を購入するとして、物件を実際に見に行くかどうか、は悩みどころである。投資用物件なのであれば、物件が確かにあって、そこに入居者がついているのであれば、あとは単に利回りの問題かもしれない。

あるいは、ライブで現地の案内を不動産屋にしてもらえれば満足なことだってある。それでも気になるのであれば、やはり現地に赴くに越したことはない

逆に現在住んでいる人がいるのであれば、そもそも内見に応じてくれるのか(あるいは内見して良いか聞く)のもケースバイケースと言えよう。建物の外観だけなら、Googleマップで事足りる。新しいマンションで、そもそもまだ出来上がっていない場合だってあろう。

売買契約をする

不動産が気に入ったのであれば、契約手続きに進むことになる。宅建免許を持つ人間から重要事項の説明を受け、そして、手付金とともに申込を行う。仲介であれば、仲介手数料が不動産仲介会社に発生することになる。

契約にあたっては、海外在住であれば身分証と、居住証明を現地で取得する必要がある。

引渡にあたっては、現地に赴き、現況確認を行う必要があるとはされるが、この部分をどうするかも悩みどころだろう。売主が不動産会社なのであれば一般のオーナーに比べれば、売却後に見つかる不具合に対する補償も得られるかもしれないが、現況確認を怠っていれば免責になる可能性もある。

ローンを引っ張る

日本にいれば投資用にせよ居住用にせよ住宅ローンという術が利用できるが、海外にいるとそれほど便利な選択肢ではない。

非居住者の立場ではローンを組めない日本の金融機関が多いし、永住権を持たない外国人も金融機関からは避けられる。日本人でもうすぐ帰国が決まっている人、日本企業で一時的に海外駐在をしている人、のようなパターンであればローンに前向きな金融機関もあるようだ。

それに、日本の銀行から借りるにしても、おそらく国内で借りるよりも高い金利になる。

一方、海外の銀行から借りるとして、日本円で借入ができるとは限らない。為替リスクの問題と、あとは借入金利のベースになる経済と住宅市場のベースとなる経済がマッチングしていない問題を自ら管理しなければならない。

総合的に見れば、海外から日本の不動産に投資をするとして、近々帰国が決まっているケース、既に居留資格を保有しているケースを除けば、ローンを引っ張るという選択はあまり合理的でない可能性はある。(もちろんローンがなければ困るという場合は別だが。)

国をまたぐ不動産の売買においては現金の方が当事者全員にとって好まれる、というのはあるだろう。

購入後の面倒を見る

不動産の売買における決済もそうだが、様々な観点でお金のやりとりが発生することは忘れがちである。

不動産取得税や固定資産税などの税金の支払い、管理費や修繕積立金などの継続的な支払いが存在し得る。実際の物件の管理や賃貸付は不動産管理会社に任せるとしても、オーナーの義務としてそういったお金のやりとりを正確に行う必要はある。

できれば日本に銀行があることが望ましいが、そうでない場合は、直接海外送金で対応するよりは、代理人を選定しておく方が現実的かもしれない。

保有物件を売却する

不動産は購入するときの費用ばかりを気にする人が多いが、実際には売却がどこかの時点で発生する。

その場合にも誰かに仲介に入ってもらう必要があるわけで、仲介手数料はかかるし、急いで売るのであれば市況より安くなる可能性はある。

投資用に購入したのであれば保有期間によっては売却利益にかかる税金の割合が変わることだってある。居住用に購入して、それ以降日本に住み続けるならともかく、いずれ売却するのであればそのときの為替レートによっては大きな損失になる可能性だってある。適切な出口戦略をイメージしておきたい。

まとめ

仮に日本に住んでいたとしてもそれなりに煩雑な手続きが必要になるのが不動産の売買であるため、海外在住ゆえの独特の課題については予め把握をしておきたい。

そして課題を網羅的に解決するためにもよくプランニングをして専門家に事前に相談しておくことも有効だろう。

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