「いつ投資を始めるのが良いと思いますか」
こんな質問をする人が多いのは想像に難くない。実際そうである。
不思議なことに、私の経験上、金融市場の状態に関わらず、絶えず現れる。
相場が絶好調であっても、相場が絶不調であっても、である。
本稿では投資の始まりについて焦点を絞って話をしてみたい。
目次
躊躇する人ほど利益を欲しがっている矛盾
不思議なことに躊躇する人というのは怖がっている場合と、狙いすましている場合とがあり、そしてそれらは同時に起こっていることも多い。
ある意味でリスク回避的な行動ではあるが、一方で、相場が急激に下がったタイミングで投資を始めたいというのはリスク選好度合いが高いとも言える。
「下がったら買い」というのは最高値で買っていないという、投資家自身に対する、ある種の気休めであるというのはある。
短期的な結果と中長期的な結果は異なる
いつ投資を始めるのかによって短期的な結果は異なる、と個人的にも思う。
始まりは誰しも上々な出来であって欲しい。人によっては数ヶ月くらいは投資熱が残っていて、利益が出るか出ないかに一喜一憂している場合がある。そこで数パーセントでも良い結果を確認できれば、後は放っておいてもよいと考えるのだろう。
一方で、いつ投資を始めるのかによって中長期的な結果はあまり変わらない、と思うし、実際そういう統計的な事実は多い。
当たり前だが、短期的な振れ幅と長期的な振れ幅なら長期の方が大きい。
例えば、今後数ヶ月でドル円が5円動く確率と、今後数年でドル円が5円動く確率、後者はほぼ100%くらいではなかろうか。
つまり、短期的に成し遂げたいことと、長期的に成し遂げたいことでは取り組むべき重点が違っていることを意味している。
心の準備ができたら?
投資にリスクがないわけでない以上、躊躇することを他人がとやかく言うべきではない。
それに、躊躇することが格好悪いわけではない。
その人にしてみれば、高層ビルのガラス張りの床の上に立っているのかもしれないし、バンジージャンプでも始める気分なのかもしれない。感じ方は人それぞれである。
心の準備をどのように済ませるかも人それぞれである。
何回かに分けることで安心することもあるし、あるいは吉日を占う人がいたっていい。
ただ、始めてみたらそれほど身構える必要のなかったものである、と感じる人も多い。
投資行動というのは慣性の法則のような面があるのだ。一度止まったものは力を加えなければ動かない。
だったらいつでもいい?
Today is not a bad day to start investing.
投資を始めるのにいい日も悪い日もない。というかいつがいいか考えている時点で、そのときは恐らく最悪の日ではないのだろう。
最悪の日というのは、今日はやらない方がいい、というのが誰の目にも明らかだからである。
そういう日は年に何回も来ない。
だから極論、投資を始めるのはいつでもいい。
どう投資するのがいいのかを検討する
投資をするかしないかで悩む人は、そもそもどうやるかが決まっていないことが多い。何をしたらどういう結果がもたらされ得るのかを知ることが大事である。
投資とはすなわち株である、のような発想に立ってしまうと一見博打に見える。博打に見えるならそれは悩んで当然である。しかし、そもそも投資の選択肢はもっと多い。
投資を通じてどのような結果を得ることが目的であり、そしてそれをどうやるのがいいのかを検討するところから始めたい。
投資をすべきでないお金を区別する
いつ投資を始めるべきか悩む人は、実は投資をすべきお金と投資すべきではないお金が区別できていないことが多い。区別できていないから一抹の不安がよぎり、悩むのであり、それは自然である。
自分の持っている資産の中で、投資をすべきではないお金はいくらくらいあるのだろうか。さらに言えば投資をすべきではないお金とはそもそもどういうものなのか。
投資をするかしないか考える前にできることの一つである。
いつ投資を始めるべきかに対する答え
投資を始めるのにはきっかけが必要だし、そして動機も必要である。なぜそうするのかがはっきりしないまま取り組んだ結果、短期的には成功するものの、中長期的には後悔している人の方が多いかもしれない。それに、相場が絶好調だと怖くなって手を引き、相場が絶不調だと怖くなって手を引く。手を引こうと思えば引けてしまうことは大事なことではあるが、非常ボタンを必要以上に早く押してしまう人が多いのもまた事実である。
投資はリスクと向き合うことである。
リスクこそがリターンの源泉なのであり、必要以上のリスクをとることはないが、必要なリスクはとることである。
それが理解できたとき、たぶん投資を始めて構わない。