以前にも現金比率の話をしたことがありますが、基本はキャッシュ、良い投資機会に出会えば惜しみなく使いたい、という人は少なくありません。もちろん働いて稼いだお金が溜まって初めて貯蓄なのですから、基本はキャッシュ、は正しく、そして良い投資機会でなければ投資をする意味もないでしょうから、その機会を待ち続けるのも理にかなっている気はします。投資、投資、という思考を少し離れて、現金に焦点を当てた話をしてみます。

必要な現金の量を知る

皆さんは手元に一体いくら置いておくのが適切なのか、考えたことはありますか。この観点は必ずしも投資には関係がなく、すごく身近な例で言えば、お財布の中に硬貨と紙幣はそれぞれどのくらいあると良いか、くらいは考えたことのある人が多いのではないでしょうか。硬貨を持つべきかは、その人がどういう買い物をするのかによりますし、お財布の中に現金を入れるべきか、というのはキャッシュレスのライフスタイルなのかにもよるわけです。自分のための買い物だけであれば、いくら、というイメージだが、他人に食事を奢ったりするような性格であれば、もっと現金は多い、かもしれませんよね。実需以外にも見栄の金額が入ってくる人だっています。

資産の管理という意味でも、必要な現金の量はその人それぞれで違います。お仕事が安定している人であれば、現金を使い切って毎月クレジットカードの支払いに追われている人もいるかもしれません。明日にもクビになり得る外資で働いていれば、人よりも給料は高いものの、転職までの間を考慮して、余剰資金は厚めにと考えているかもしれません。

投資の観点で言えば、中長期で投資に回したお金を回収しなくて済む水準の現金を持っておくべきである、というのが一つの回答です。もちろんこれが絶対解だというわけではありませんが、何か大きな出費をする際に、それが突発的でないにも関わらず、投資した資産を中途売却して資金を工面するような動きを自分がしているのであれば、果たして、現金の管理が適切であったか、を是非自問自答してみることをお勧めします。

現金を持つリスク

現金に資産を割り振るのも立派な投資戦略です。戦略ですから意図的に行うことが望ましいと言えるでしょう。受動的に現金を管理している人はいますが、これが能動的にできるようになるとかなり資金効率は上がってきます。現金を持つリスクは、典型的にはインフレリスクであると言えます。今の1,000万円と10年後の1,000万円では買えるモノが違ってきます。せっかくお子さんの教育資金として貯蓄しても、学費が上がることを考慮していなかったのであれば、計算が狂ってしまいますよね。

現金も投資資産ですから、リスクがあればリターンもあります。果たして現金にどれだけ投資すべきなのかは、そのリスクとリターンを理解することからしかスタートしないわけです。

現金を持つリスクが理解できたとして、そこから一気にハイリスク資産に転換しようとする人がいます。もちろんリターンを上げなければならない、魅力的なものに投資をしなければならない。だからといって、十段も、あるいは時に百段くらい間をすっぽかして跳躍しようとすると、上手く行かないという経験をすることになります。世の中に投資機会はいくらでもあるので、現金に距離が近くて、でも現金ではない、というエリアを攻めることを躊躇してはいけないわけです。これまで現金で置いていた理由はそれなりにあるのですから。

現金を保有するスキル

現金が手元にあるのが居心地が悪い、という人もいると思います。人によってはあるだけ使ってしまうから、と答えますよね。あるいは手元にそれなりのお金があるとその分誘惑も多く、ついつい大きな買い物をしてしまう場合もあるでしょう。資産の管理は頭痛の種であり、そしてそれが辛いのであれば、ご自身にスキルが伴っていないことを示唆しています。この場合、苦痛から解放されるためにお金を衝動的に使うのではなく、ご自身の性格を把握し、どういう状態で現金保有すればいいのかに焦点を当てる必要があります。配偶者に管理して貰えば安心だという人もいれば、金庫に入れることで通帳から数字を消すこともできるでしょう。単に普段使い以外の口座を用意してあげるだけで事足りる人だっています。

現金を適切に減らしていく

現金がいきなり増えるとき、というのはありますよね。自宅を売却したとき、退職金を受け取ったとき、宝くじに当たったとき、などが該当します。現金がゆっくり増えていく分には人間は順応しやすいですが、いきなり増えると、何かしなければならないのではないか、と焦る人が出てきます。

あるいは、何とかした方がいいと金融機関などが擦り寄ってくるのもあるかもしれません。このとき、現金を適切に減らしていく計画についてしっかりと考えることをお勧めしたいと思います。今までなかったお金なのですから、今すぐなくてはならないお金ではないのは確かです。ただ、全てを投資に回す必要がないのも事実です。先々の現金の管理についてスキルを身につけましょう。

現金の管理についてご自身が弱いと思うところがあるかもしれませんね。

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