近年の仮想通貨市場の発展はめざましい。初期に投資を行った人は、大損をした人もいれば、ミリオネアまで一気に上りつめた人まで様々である。

金融機関に勤めているからといって、職業柄、仮想通貨への投資についての意見を聞かれることはあっても、実際に投資をしていると答える人が多いわけでもない。

仮想通貨に対する見方は分かれるが、ここに来て果たして再考する必要があるのだろうか。

仮想通貨への見識

キャップジェミニのワールドウェルスレポート2021では、

およそ72%の富裕層が仮想通貨(クリプト)に投資したことがある

と回答している。これを意外に思うだろうか。

もちろん数十年にわたって仮想通貨自体は存在していたわけだが、その地位が確立し始めたのはここ数年の話である、というのは確かである。

仮想通貨をめぐる規制と、その価値の変動率の高さに関してはまだ課題が多いが、様々なデジタル通貨に対する見識を広め、その可能性に注目することは必要である。

どのようなプラットフォームで取引ができるのか、そしてどのようにポートフォリオに組み込んでいくべきか、は知っておきたいものである。

実際にやるかやらないかはおいておいても、である。

仮想通貨を巡る用語

仮想通貨(Cryptocurrency)とは、交換のための媒体としてデジタルの世界で、非中央集権的に発行される通貨のことである。ビットコインやイーサリアム、ドージコインなどがよく知られているが、実際には数多存在する。仮想通貨と一括りにしてしまってはいるが、実際にはそれぞれが持つ特徴は異なる。

一方、法定通貨(Fiat Currency)とは、政府が発行する通貨で、現代ではその裏付けとなる資産は存在しない。つまり本源的価値や使用価値はないのであって、政府の後ろ盾があるというだけで強制通用力に支えられていることが価値になっている。

ブロックチェーン(Blockchain)とは、非中央集権ネットワークの中で暗号化された台帳に情報を記録する方法である。チェーンにあるそれぞれのブロックには複数の取引が含まれ、新しい取引が発生する度に参加者毎の台帳に記録が刻まれる。

ノンファンジブルトークン(NFT)とは、ブロックチェーン上に保管されるデジタル資産であり、例えば美術品のような物理的なものを代替する。

仮想通貨の種類

投資家にとって取引可能な仮想通貨は実に様々である。安全性を重視するのであれば金融当局から認可の下りた投資機会に限定をする、というのはベストプラクティスにはなってくる。

ビットコイン(Bitcoin)は言わずと知れた仮想通貨の代表格であり、非中央集権ネットワークの中での仮想通貨の広がりの端緒となったものである。

イーサリアム(Ethereum)は、時価総額でいうなれば、仮想通貨では二番手である。非中央集権ソフトウェアプラットフォームにより、スマートコントラクトなどを実現する。イーサリアムの価値は世界のどこからでもアクセスできる金融商品を作り出す可能性にあると言ってもいい。

カルダノ(Cardano)は、イーサリアムキラーとも呼ばれ、より堅固なブロックチェーンを持つとも言われる。他の仮想通貨に比べてエネルギー消費が少ない点もしばしば指摘される。

仮想通貨を知る

そもそも仮想通貨に“投資”をするのであれば、何の目的があってそうするのだろうか。インフレに対するヘッジ?株式市場との相関の低さによる分散効果?もちろんリターンという面も捨てがたいが、仮想通貨にはオランダのチューリップバブルのような要素があることは忘れてはならない。

仮想通貨に関する知識にはジェネレーションギャップがあるともされる。若くして仮想通貨に触れた世代はデジタルの世界に慣れ、そして当たり前になっているし、逆に後から参入した年長者はその技術を理解するのに苦労する。仮に仮想通貨のエキスパートとなれたならば、こうした世代ギャップを家族の中で埋める役割を担うこともできる、と考えられる。

仮想通貨の取引方法

証券投資の世界もそうであるが、仮想通貨には独特のリスクと規制上の取り扱いが存在するため、注意が必要である。

以下のことについて考えていることは有益だろう。

  1. 仮想通貨投資を行うにあたっての投資家要件があるかを確認する
  2. プラットフォームにおける仮想通貨の取引方法を知る
  3. ビットコイン先物に基づくETFなど、規制当局の認可のあるもののみを選択する
  4. 他の資産同様、仮想通貨投資もリバランスをする
  5. 仮想通貨関連の税務申告を正しく行い、必要に応じて税務アドバイザーに相談する

仮想通貨に乗り遅れたと思うか

確かに仮想通貨の価値の軌跡にはいずれかの時点で“上昇”が存在する。しかも場合によっては途方もないリターンをもたらしているケースまである。

このことは後から見れば“乗り遅れた”になるかもしれない。しかしよく考えてみてもらいたい。

あなたは、未開拓で法律も整っていないような土地を買って開発するタイプの投資家なのだろうか。

あるいは

あなたは、市場での取引のエビデンスでもって資産としてのリスクリターンのプロファイルを見極め、ポートフォリオに組み入れるタイプの投資家なのだろうか。

株式投資も同じであるが、過去もあれば未来も当然ながらある。勝者は語り、敗者は無言、ということも多い。

過去と未来が同じであるとは限らない。

あなたが見ている仮想通貨の姿も数年前と今とでは大きく異なっている、そして異なった姿を見た時、異なった見方ができるようになるのである。

投資家として、投資対象として見出せるようになったのであればそのときに投資を検討すればよい、というだけの話である。

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