現在の生活には困っていない、老後に対する不安が大きいわけでもない、ただ、我が子にちゃんとした教育を受けさせるのは親として優先順位が高いと感じている、という人は多い。自分がかけるコストはいざとなれば減らせると考えるが、家族のためのコストはできることなら節約せずにいたい、我慢をさせたくはないわけである。

子育てをする上で最も大きな費用は教育資金であるが、この経済的課題に対して皆さんが考えることを少しだけまとめてみたい。

貯蓄で賄う

今でなく将来に大きなお金が必要である、という場合は、貯蓄する、というのが正解ではある。

もちろん困ったらお金を借りるという人もいるとは思うが、想定できる支出ならば貯蓄で対応する方がいい。

働いて稼ぎ、貯蓄を増やす、というのはまずはやっておきたいことではあるが、同時にその貯蓄がどういうリスクにさらされているかを理解する必要がある。貯蓄が確かにそこにあるのだから、リスクとは何か、と思うかもしれないが、実際にはその貯蓄はいつか使うときのために置いてあるのであって、同じ金額であっても今と将来では買えるものが異なっている、つまりインフレが起こることを想定しておく必要がある。

1年や2年であればインフレの幅も大して気にはならないかもしれないが、10年、20年となると大きな差になって現れてくる。ただ大事にお金をとっておいただけで目減りしてしまっていることは知っておくとよい。

学資保険で賄う

学資保険というのは、子どもの成長に合わせて積み立てのような形で支払いを続け、進学のタイミングなどで払い戻してもらう性質のある保険のことを指す。子どもの成長というからには長くて20年、実際には10年くらいのスパンで考えていく必要があるものである。ただ、30年ではないという意味で、十分に長い期間が残されているわけでもない。

学資保険で確保できることは、将来子どものために発生するであろう大きな費用に向けて着実に積み立てができていることにある。もちろん何かあれば保険金としても機能するが、大きな死亡保障がかかっているわけではない。

保険会社としてもまずは確実にお金を返せることを考えて商品設計をしているので、10年以上の期間はありながらもそこまでリスクをとった運用をするわけではない。

香港の保険で考えるならば、通常の貯蓄型保険が6-7%の利回りを想定するのに対し、学資目的の保険だと3-4%になっている。もちろん20年、30年と契約を維持するのであれば前者の方がいいわけだが、現実には、学資目的のお金は10年を超えた時点で換金の必要性が出てくるわけなので、予め少しリターンの目線は下げておく必要がある。

資産運用で賄う

先に触れたが、学資保険はとにかく資金を確保することに重点があるため、リターンはそれほど高くない。それに実際に資金面で足りている状態になっているのであれば、保険ばかりに頼るのではなく、次のステップは資産運用で考えても構わない。

運用が上手く行けば子どもは良いところに進学して、上手く行かなければ費用を抑えて、などと考える人は少ないので、もし資産運用について考えてそういう状態に陥りそうだと感じるならば、ご自身が運用しようとしているお金は本来そのようなリスクをとってはいけないものである、とは言えると思う。

逆に学資保険は早期に解約することを想定していない(つまり解約すると元本割れしやすい)ケースは多く、その意味では証券投資による資産運用の方が、いざとなれば高い費用を払わなくても解約はできることが多い。とはいえ、解約すること自体はすなわち教育資金に手をつける、ということなのでできれば避けたいところではある。

資産運用の場合、余剰ができたときに積み立て、余裕がないときには金額を抑える、というのも可能ではある。結果として目標額を達成できるかどうかはしっかりとプランしておく必要はある。運用による資産の増減も経験することになるので、ゆっくりスタートできると理想的ではある。

確実に用意しておかなければならない部分は学資保険、それ以上の部分は資産運用、ということでもいいのかもしれない。子どもが生まれるまでは資産運用の比重が高く、子どもが増えるにつれて一部を学資保険に移行していく、という対応をする人がいるのも肯ける。

教育資金の負荷

お子さんの教育にどれだけのお金をかけたいか、は当然家庭によって異なる。子どもはできるなら二人、三人と考えている人もいるが、しかし、冷静に数字だけを追いかけてみるならば、子どもが一人増える毎に家計に与える影響は大きくなる。

出産に適した年齢はいつまでも待ってはくれないのに、お金はいきなり降って湧いてこない。もちろん深く考えたところでとりあえず子どもを授からないことには、というのはあるが、もし数字の現実がよぎって不安になるのであれば、まずは子育てが家計に与える影響について前もって知っておくことである。子どもが一人の場合、子どもが増えた場合、いつどのタイミングが一番キツイと感じることになりそうか。自分だけで解決しようとすると行き詰まることにも気付くだろう。

子どもの人生と自分の人生を天秤にかけすぎない

親としての責務を強く感じすぎるあまり、一人の人間として自分の人生に対する優先順位を下げる人が出てくる。いや、もちろん子育ての中で、様々なものを(言い方は悪いが)犠牲にして子どもに尽くす瞬間はあるのは理解できる。ただ、子育ても長期戦である以上、ずっと自分の人生が犠牲になっている状態が楽だと感じる人は少ない。それに、子どもが立派に独り立ちしたのであれば、その後に再び待っているのは自分の人生であり、それに向けて色々なことを考えておくことは子育ての大変さを乗り切るのにも役立つかもしれない。

たとえ家族であっても他人を支えていく、というのはそれなりに重い役割ではあり、天秤が振り切れてしまっている人もいるが、やはりそこにバランスは必要である。時間的なバランスもそうであるが、実はもっとはっきりと分かるのは金銭的なバランスである。子どもにお金をかけたいと思うのと同様、自分に対してかけるお金を十分に確保してあげることは意外と重要である。

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