アメリカを始めとして各国で利上げが行われる中、未曾有の低金利環境は終焉を迎えることとなった。リセッションも気になる中で、投資家の目に止まりやすいのは社債であるが、果たしてこれを機に投資対象に含めるという発想は保守的なのか、考察してみる。

債券の種類

まず第一に債券と債権は異なる。もちろん不良債権などに投資をするビジネスも存在するが、一般の投資家が手にするのは債券の方である。つまり、国家や地方公共団体、銀行や一般企業など、いわゆる発行体が、事業に必要な資金を借り入れるために発行している有価証券である。

債券にも色々と種類はあり、国債、地方債、銀行債、社債など、発行する主体に由来する名称もある一方、シニア債、ジュニア債、劣後債、など弁済の順位等に由来する名称もある。社債のなかにも永久債や偶発転換社債など、様々な特徴を持つものがある。

と言われても多くの人は理解が及ばないことが想定されるので、債券の基礎はやはり国債からスタートすると考えるべきである。

米ドルであれば、まずは米国の国債の利回りを参照する。これは最も信用リスクの低い(債務破綻しない)と考えられるものだからである。

2年物、5年物、10年物などが標準だろうか。残念ながら日本の国債は日銀によりイールドカーブコントロールされていて、債券の勉強材料としてはあまり参考にならない。

通常は、満期までの期間が長いほど利回りが高い、という現象が観測される。

ただ、米国の国債利回りですら、2年物よりも10年物の利回りが低いという逆イールドなども観測されるのが昨今である。

社債にはこの国債にはない信用リスクがある分、利回りも上乗せされていることになる。この上乗せ幅は当然ながら個社が持つ信用リスクの大きさによる。

債券投資において利回りを求めることはより大きなリスクをとることに繋がっていることは理解したい。

このように、債券そのものの持つ様々な特徴や金融市場環境に合わせて利回りが変化していると考えればよい。

金融市場は効率的に出来上がっているため、市場価格にはそれ相応の理由が存在するのである。

小口での社債購入

現物の株式と違って、現物の社債というのは常に金融市場で売買をされているわけではない。社債の発行量というのはそれほど大きくはなく、売りたい人と買いたい人がマッチングする必要がある。発行した企業としては発行したときに投資家が買ってくれさえすれば、あとは投資家同士でいかに売買をするかの話なので、それほど影響はない。

しばしば、小口での購入ができる社債というのもあるにはあるが、一般には200,000米ドルを最低取引金額に設定しているケースが多い。

この金額が高いと感じるか低いと感じるかは人にはよるが、小口と呼ぶのには少し大きい気もする。

個人の投資家であれば、一定以上の資産を持つ、プライベートバンク利用者などが主な買い手となることが想定される市場である。

小口でも買える、ということが選択肢が少なく、高値掴みに繋がる可能性もあるのは要注意である。

社債投資信託やETFなどの選択肢

社債を一本、二本と買い進める投資家も中にはいるが、債券でとりたいリスクが明確であったり、あるいは投資ポートフォリオを構築するのであれば、投資信託やETFなどの方が売買がしやすいというのが挙げられる。

前述したように買いたいと思ったものが市場に出回っていなければ想定したよりも高く買ってしまう可能性があるし、逆に売りたいと思ったときに買い手がいなければ想定したよりも低い価格で売らねばならない。これが流動性リスクである。

投資信託やETFの場合には、ほとんどの場合、毎日売買を受け付けてくれる。それでも市場環境に配慮はしなければならないが、小口での取引も可能である。投資信託やETFのなかでは、様々な債券に分散投資がなされているため、個社の破綻リスクも抑えることができる。

営業トークを鵜呑みにしない

  • 債券投資は株式投資に比べると保守的である
  • 債券投資は安全で確実なリターンが期待できる

どれもよく聞く話ではあるが、一見正しく、ただ現実の投資家の選択はそのようになっていないことがある。どういうことか。

根本的なバイアスとして、投資家はフェアなものを探すのではなく、利回りの高いものを探してしまっている、というのがある。

利回りが高い=安いものというのは、単に割安なのではなく、想定より粗悪である可能性がある、というのはスーパーでの買い物と何ら変わりはない。

そこに投資家としてどれだけの目利き力を発揮できるかということかもしれない。

最初に触れたとおり、債券にも様々な種類がある。どのようなリスクをとる投資なのかは投資する債券による。適切なポートフォリオを組めば現物社債よりも保守的なポートフォリオを組める可能性はある。

多くの債券には固定利息が存在するし、満期が存在するため、比較的リターンのブレは少ない。だが、債券に投資をしていれば損失が出ることはない、という誤解も多い。

まとめ

タイトルに戻って、現物社債への投資が保守的かと言われると、実際は多くの投資家にとってはただのリスクテイクでしかないケースはある。とったリスクの割には期待リターンが低い、ということもよく起こっているように思う。

こと、個別の社債を見ていくとなれば、社債の特徴をよく理解することはもちろん、市場価格が他と比べてどうか、という観点から得られる情報も多い。債券の性質からして頻繁に売買することも恐らくない中でどれだけ冷静に判断できるかがポイントになってこよう。

そうまでして現物社債にこだわる理由がそこまでない人というのは実際多いものである。

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