日本の社会では長らく高齢化の問題が指摘されており、特に中小企業の経営者に至っては後継者不足に悩んでいるとされます。

人口減少時代において切実な問題であり、それは海外においても例外ではありません。むしろ勢いよく日本を飛び出して海外で事業経営を始めた人は年齢を重ねるにつれてその後継の不在という事象に向き合わなければならないことは言うまでもないでしょう。

今回は海外でも起こる中小企業の後継者不足の実態についてまとめてみたいと思います。

海外では後継者問題に陥りやすいのか

日本人が海外で働くとなると、就労ビザを取得するのが一般的ですが、永住権を取得したり、あるいは会社を設立して投資ビザを取得することで、より海外での自分自身の生活に対してコントロールを持ちたいと考える人はいます。

また、経営が軌道にのるほど、外部からの出資を受け入れたりすることには否定的になります。自分一人が従業員兼社長のようになって切り盛りは上手くしているものの、実は家族は何も会社のことを知らない、ということが起こります。

一方で、バブル期を経験し、勢いよく海外へ飛び出した世代のその後は、意外と保守的に育つ例も多く、実は日本で就職して落ち着いていたりするものです。

結果的に経営者が現役を退くことを考える頃には誰の手も借りておらず、最後もまた自分でカタをつけて廃業、清算するという花道にもなってしまうわけです。もちろん気持ち良く終わりを迎えられるケースもありますが、せっかく築き上げた自分の城を自らの手で崩すのもなかなか忍びないものです。

海外ならではの事業承継とは

日本でも家族経営会社の運営に積極的な人とそうでない人がいるように、海外において家族経営を目指すことはできても、現実には上手くいっていない例もあります。

日本国内に比べると、当然社会全体での日本人比率が少ないわけですから、外から後継者を探すにしても簡単ではありません。

事業承継のためにM&Aをするというのも一つの方法ですが、海外で生き残るためにニッチな経営戦略をとっていることもあり、買い手を見つけるのも難しいときがあります。一方で、金融や飲食店などのライセンスがある場合は「ハコモノ」としての価値を見出して購入し、実質的に起業する人も多いように、何らかの買い手が現れることは想定できます。

海外事業の場合、一国でビジネスをしているケースよりも、複数の国でビジネスを展開するケースの方が多いかもしれません。資本関係も複雑になっているようであれば、経営者の亡き後の相続では、法律面、税制面、手続面どれをとっても非常に厄介な部類の案件と言えるでしょう。できれば生前に事業承継を済ませるか、事業承継対策をとっておくべきことはいうまでもありません。

海外における跡継ぎの育成

後継者問題への解決策は、跡継ぎの育成にある、というのは何も特別なことではありません。ただし、跡継ぎを見つけるだけでなく、育成するところに少なからずの時間がかかるのは注意です。海外だとなおさらです。家族ならばマンツーマンで教えれば何とかなる、と思うかもしれませんが、長年のワンマン経営の後では自分にとって自然なことでも第三者から見れば断片的で分かりづらいことだってあります。事業の中での無駄を削ぎ落とし、誰にでも経営できる状態にすることを最後の仕事にしてみてはいかがでしょう。

また、経営者から株式を引き継ぐということになれば当然ながら株式取得のための資金も用意しなければなりませんから、経営が上手く行っているほど、承継のハードルは上がる、とも言えるでしょう。従業員に優秀な人がいたとしても、お金がないことには会社は引き継げないのです。

つまり、ヒトの面でもカネの面でも少しでも早い段階で手を打っておくことはやはり重要になってきます。あえていつから、というのであれば、引退をイメージする年齢に対して10年前に差し掛かったら、と考えてみてもいいかもしれません。

中小企業の後継者問題の解消にあたっては、原因を探り、会社の現状を把握、認識し、対策を打つことです。身内や家族を後継者としたい場合には海外での事業を彼らのライフプランの中に組み込んでもらえるのかどうかが肝です。

儲かっている企業なのだから最後の最後で渡しても受け取ってくれると楽観的になりすぎないことも大切です。企業の話に限らず、遺産として家族が受け取りたいものは一般には、複雑な資産ではなく、現金であると答えるケースが多いことも理解しておく必要があります。

経営者とは元来孤独な面のある職業ですが、一人で悩んでいると問題は常に先送りしたくなるものです。適切な時期に信頼できる相談役を見つけ、重い腰がさらに重くなる前に動くことも考える必要があります。

また、変に利害関係を残さずにしっかりと事業承継を終わらせた方が、引退後の人生を楽しむことにより時間を割くことができるかもしれませんね。

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