さて、今回は株式相互買取予約権という手法を取り上げ、プライベート事業ないしパートナーシップのケースに事業保全という観点からどのようにアドバイスができるか、ということを考えてみます。

最近は後継者探しに苦労する中小企業の経営者が増えたり、あるいは2人で起業をする若者が増えたりと、プライベート事業に関する話をよく聞きます。今回は、持ち株比率を50%ずつにしていたとして、事業パートナーが病気になったりあるいは死亡してしまったりといったリスクに適切に備える一つの方法を見てみます。

キーワードは

「株式相互買取予約権」

です。株式相互買取予約権による事業保全の可能性を探ってみます。

事業パートナーの不幸はトラブルの始まり

プライベート事業において、株主の突然死、あるいは重病は残された株主にとって事業継続の大きな障害になります。

  • 残された株主は、思うように事業を継続することができるのでしょうか?
  • 亡くなった株主の家族は株式を相続したとして、会社の経営に参画したいと思うでしょうか?また、会社からの収入が突然失われたとしたら生活に支障はないでしょうか?
  • 亡くなった株主の家族が株式を他の株主に売却したいとして、逆に購入する資金が本当にあるのでしょうか?
  • 承継された株式が、意図せずして第三者や競合企業の手に渡ってしまうとしたらどうすればよいでしょうか?

一つの解決策は、亡くなった株主の持ち分を、残された株主の方が買い取る、という契約を相互に結んでおくことです。これを「株式相互買取予約権」と言います。

株式相互買取予約権の仕組み

持ち分がほぼ同じであれば、一方が亡くなったら他方に渡す契約にしていれば、損得は存在しません。ただし、タダで渡すことは本来株式を受け取る予定であった被相続人に対してフェアではありませんから、そのための資金を用意する必要があります。つまり、渡すと言っても買い取るのがポイントです。

では、そのための資金をこれまたフェアに用意するにはどうしたらいいか。

一番は、共同株主を受益者に持つ信託を通じて、定期保険をそれぞれの株主に掛けることです。会社は株主に代わって保険料を支払うことになります。

株式相互買取予約権に定期保険を組み合わせるメリット

各々の株主は、亡くなった株主の持ち分を買い取るに当たって、資金を借りたり、資産を売って現金を用意する必要がなくなります。

買い取りを行うことによって、残された株主は会社の経営権を保持し続けることができます。

残された家族は株式を苦労せず現金化することができます。

相続において保険は“現金”を提供するので便利だと言われますが、流動性の低い資産と保険を組み合わせることで、取引を簡便にすることができるわけです。

定期保険を用いた事業承継の例

ソフトウェアインターナショナルという企業は、ベンチャー企業向けの給与ソフトウェアを提供しています。創業者は田中さんと伊藤さんの2人で、持ち分を半分ずつ、創業から3年が経ちます。事業価値はおおよそ2億円まで成長しました。

田中さんと伊藤さんは事業の継続を確実にするために、それぞれが1億円ずつ、信託経由で20年間の定期保険に入ることで、株式相互買取予約権を設定しました。

数年後、不幸なことに、田中さんがアメリカでバイクに乗っていた際に事故に遭ってしまい、亡くなってしまいました。そのときに下りた死亡保険金1億円は信託経由で田中さんの親族に支払われ、田中さんの持ち分50%は伊藤さんに渡りました。

伊藤さんはもともとの持ち分と合わせて100%を保有することになったため、新たな事業パートナーを探すことが容易になり、また田中さんの家族は1億円を現金で受け取り、家族間での分割も非常に用意になりました。

保険金額の規模が大事

この話において肝心なのは、事業の規模と保険の保障額が一致していることです。当然事業が上手くいけば、企業価値が上昇し、その分買い取ることは幸か不幸か困難になります。企業価値が数億円から数十億円まで膨らんでいく過程でも、保険の保障額を引き上げることが必要になってきます。

もちろん保険料はその分かかりますが、事業パートナーの欠落と、株主の意図しない入れ替わりという、事業存続にとっての最大のリスクを回避することは極めて重要であるとは言えるでしょう。

事業保全について予め考えることの重要性

事業が上手く行っているときほど、万が一のことは考えないのが普通ですが、大切な事業パートナーだからこそ、自らがいなくなったとしても事業が成功することを祈る、そういう手立てを設計したのちに、事業に邁進するということも必要になってきます。

「事業保全」、特に若い起業家には是非考えてみてもらいたいテーマの一つです。