米大統領選挙を意識して投資戦略を決めた人は少なくないだろうが、本当にそれで良かったのか。ブレない資産運用のあり方を考えるきっかけにして欲しい。

米大統領選挙をめぐる投資家の思い

「米大統領選挙がどのような結果になれば、投資環境として良い/悪い方向に働くか」という質問は今年たくさんいただいた。

個人的にこのような質問に対する答えを考えるのは嫌いではないし、議論をすることも嫌いではない。しかしながら、会話と議論を楽しむことはできても、その結果を当てたり、あるいは自分の予言通りに世の中を動かせるほどのパワーがあるわけでもない。

米大統領選挙はビックイベントであり、投資環境に影響を与え得る。

この答えはイエスだ。

共和党と民主党がどちらが主導権を握って政策を決めるかで、得をするセクターもあれば損をするセクターもあろう。

それによって、米ドルの強さは変わるかもしれないし、米国債の長期利回りも変わるかもしれない、中東との関係見直しが起これば原油価格が大きく動くかもしれない。そう、影響がないとは言えない。

ただ、一つの予想が当たったとしても別のもっと大きな出来事があればそれはかき消されるし、そしてまた世界は違う方向に向かう。4年後にはまた米大統領選挙を迎えよう。それは決まっていることである。

そこでまた一人の投資家として同じことを考えるのであろうか。そしてまた株価が上がるか下がるかを当てっこする。少し気の遠くなる作業に思える。米大統領選挙の重要性から学ぶ資産運用のあり方について考えてみよう。

私にとってのファイナンシャルプランニングの仕事の意味

いや、私自身は瞬間的に何百億円というお金を動かす市場運用の世界にいたことがあるので、日々刻々と変わるエキサイティングなマーケットをエンジョイすることに否定的にはなれない。

不確実な未来の中で、確実にリターンをあげ、会社を支えなければならなかったからだ。そう、それはそれで面白い。

ただ、多くの人にとってこの過程は疲れるものだ。本業がある人、家族がある人、趣味がある人、それぞれで楽しんだり苦労したりしている。

私が今なぜファイナンシャルプランニングの世界にいるか、それは金融チャートとにらめっこするだけでなく、お客様と語らい、そして今を楽しく、そして将来に向かって一緒に進んでいくことに意味を見出しているからである。

将来の自分や家族の姿を明確に描いている人は決して多くない

今を生きることは楽しいし、自分が神様ではないのだから、自分の思ったとおりに人生が運ぶとは限らないことを心のどこかで感じている。

しかしながら、時が過ぎていく以上、一歩一歩の歩みをどうするかで未来の自分の姿は決まってこよう。老いることもまた避けられないが、時間をかけて育てられるものの一つは資産だという実感はある。

資産運用はできることからやろう

一朝一夕にプロレベルの資産運用に辿り着くことはできない。全く資産運用をしてこなかったのであれば、その人がいきなり米大統領選挙が投資に与える影響を考えるのは得策とは言えない。

例えば、金融危機ならばリーマンショックのときにそれを経験した人の方が、「実感」を伴って対処がしやすいのと同じだ。そしてあなた自身がプロレベルに達する気合いがあるか、もそうだ。一時期はそう思っても、途中で挫折することだってある。

実際にトレーディングデスクにいたことのある私から言わせてもらうと、「金融マーケットは昨日言っていたことが今日には嘘になる世界だ。」あなたがトレーダーなのだとしたら、それでいい。

しかし、そうでないなら、目先のことを考えずに、長期的に成立する投資戦略にもっと時間を割くべきである。これはできることの一つだ。

もう一つはコストを下げることだ。これは運用に関わらず、当然言える。

何だかよく分からない会費を払っているのであれば解約をすべきだし、使ってもいない部屋があるのに大きな賃貸マンションにいる必要はない。運用にも気が付けば不必要なコストはかかっている。最初からベストである必要はないが、見直すことは誰にだってできる。

資産運用はより良い場所で行うことだ。

上述のコストの話にも若干重なるが、同じ資産運用をしても、扱う口座や国によっては税制の取り扱いが異なっていたりして運用成果が異なる、ということは起こる。

あるいは資産の保全という観点でも、場所選びは重要だったりする。逆に、多少のコストをかけてでも守りを重視すべき瞬間というのはあるものだ。設計は常に大事だ。

米大統領選挙後を思う

ビックイベントは終わったように見える、が終わっていないかもしれない。今年は大きな金融市場の動きを見て萎縮してしまった人もいるかもしれないが、結局のところ、金融市場というのはそういうものだ。そしてそれは数年に一度はやってくるし、そして過ぎ去る。

こういうボラティリティ(変動)を覚悟し、耐えられる態勢であったかどうか。そうでなかったのであれば是非それを構築するチャンスにしてもらいたい。

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