外国為替レートのリスクは極めて大きく無視し難い。一度このことを意識すると、投資における通貨分散について考え始める。しかし、どのように考えれば通貨分散は果たされるのか、今回はそれをまとめてみたいと思う。

予め結論を申し上げておくと、以下のとおりである。

通貨分散を通じてリスク低減をはかることは大事だが、必ず個々人の置かれた環境に合わせてカスタマイズすべきである

さて、実際の考え方に触れてみよう

投資における母国バイアスを知る

投資においては「母国バイアス」というのが存在し、資産の多くは国内に配分されやすい。日本人が最初に触れるのは日本の株式だし日本の不動産だ、逆にアメリカ人が最初に触れるのはアメリカの株式だしアメリカの不動産だ、このことは冷静にみてみると不思議ではあるが、体感としては合っているだろう。一方で、母国から離れて投資の分散を行うことで、相関の低いリターンを得ることができることから、少し投資慣れすると海外投資は一つの手段となりうる。ただし、海外投資には為替リスクが伴う。

次に、

  • 為替リスクとはどのようなものであるか
  • 為替リスクを回避するためにどのような取り組みができるか

を議論したい。

Q1. 為替にトレンドは発生するか?

外国為替レートのリスクは極めて大きいという事実はあるも、果たして米ドルがひたすら弱くなる、といったトレンドを形成することはあるのだろうか。仮にあるとしてトレンドは短期か、長期か、そしてそのトレンドが終わったとしたら単に反転するものなのだろうか。

もし変動率が大きくてもトレンドがないのであれば、最終的には通貨分散の効果は薄いかもしれない。いずれは元の位置に戻ってくるからだ。一方でトレンドがあるのであれば、通貨分散をしておかなければ、時とともに資産が一方的に減るか、あるいは増えるか、という状態に陥る。もちろん増えれば嬉しいかもしれないが、大きなリスクであることに変わりはない。

Q2. 為替ヘッジなしリターンをどう考えるか?

自国通貨を外国通貨に換えて、その外国通貨で外国資産に投資をした場合、外国為替レートに関してはヘッジがない状態、つまり為替の影響をもろに受ける状態になる。外国資産で大きなリターンが出たとしても、為替で大損をすれば帳消しになる。逆に、為替も追い風であればさらに大きなリターンが演出できることになる。投資においては、為替ヘッジなしリターンと為替ヘッジありリターンが存在することを知っておくべきだろう。

実際、投資対象の投資信託によっては、為替ヘッジをしたうえで様々な国の株式に投資をしているものもあれば、様々な国の株式に投資をするからこそあえて為替ヘッジにはコストをかけずに、ヘッジなしで投資をするものもある。投資信託であれば、どのようなリスクに晒されるのかは必ず把握すべきである。

Q3. 為替ヘッジは気軽にできるか?

大手の金融機関であれば為替ヘッジと言えば、先渡し契約や先物、スワップなどのデリバティブ取引が一般的かもしれないが、個人投資家となれば残念ながら現実的ではない、というのが答えだ。つまり為替ヘッジツールを用いて為替ヘッジをするのはハードルが高い。

ただし、外国の不動産に投資をする際に融資を取り付けるのであれば、日本円ではなく、外国通貨での借入を行う、といったことは可能である。この場合は資産と負債における為替のミスマッチを防ぐということになる。結果得られる収益部分は為替のヘッジがない状態にはなるが、資産と負債の為替のミスマッチほどは為替の影響は大きくない。

通貨分散は為替ヘッジというのとは少し意味合いが違う。為替リスクを特定してそのリスクを打ち消しにかかっているわけではないからだ。あくまでシーソーのように片方が一方的に重くなることを防ぐことによって、為替の影響を小さくする行為だからだ。ただ、現実には通貨分散の方が簡単には取り組むことができる。

投資における通貨分散の答えは「カスタマイズ」

どのように為替を向き合うべきか、という点は、どこの国に生活の拠点を置いている(あるいは将来置くことを想定している)かで変わってくる。もしこの点が不確実なのであれば、一般的には基軸通貨である米ドルに寄せるのが最も機動性を残す可能性は高い。

実際、金融市場で取引される商品は米ドル建てのものが多く、投資対象にも事欠かない。例えば新興国通貨に分散をしたとしても、その先に投資できるものが定期預金くらいしかないのであれば少しもったいないかもしれないからだ。それに通貨分散もタダではない。

とはいえ、最初に述べたとおり、為替の影響というのは非常に大きく無視し難いものである。母国バイアスがあるにせよ、一定の資産を持つようになったのであればこの点に関しては敏感であるべきだし、最終的には個々人の置かれた状況を反映してカスタマイズした通貨分散のあり方を検討するのが良いだろう。