2022年3月、日本円の価値は急落し、1ドル=120円という節目の水準を突破した。過去数十年を遡ってもやはり円安の水準としては注目に値する。通貨という血液の流れが変わりつつあるなかで、慌てずに対処するにはどうしたらいいのか。足元懸念として挙がってきているインフレとともに考えてみたい。

金融政策のダイバージェンス(乖離)

2022年3月、新型コロナ流行以降で初めて米国は利上げを決定し、そして米国内のインフレ抑制のために、緩和的な金融政策の早期の脱却が望まれている。今後も継続的な利上げが予定されており、アメリカは「金利のある世界」へと着々と歩を進めている。

かたや日本に関しては、欧米に比べてインフレ(物価上昇)の影響はさほど大きくない。とはいってもエネルギー価格やあるいは建築資材の高騰などは確実に家計や企業の行動を変えつつある。現状は日本の金融政策を変えるほどにはいたっていないことから、先々の金利見通しも、米国に多少つられつつも、大きくは変わっていない。

このように金融政策のダイバージェンス(乖離)が起こるとき、該当する通貨ペアの為替はトレンドを形成し、そして動きが大きくなる傾向がある。外貨を保有していた人はこの機会に日本円に換えることを考え、そして外貨を保有していなかった人は慌てて外貨の保有を考える。前者は得をした感覚、後者は損をした感覚に基づいて行動を起こす。

これまでも金利のある通貨と金利のない通貨の間では上手く使い分けをすることが求められていたが、金利の差が大きくなるのであればそれは露骨に現れることになる。円安が一気に進行したことは違和感なく受け止められた面はあるだろう。

円安の進行に「まったく違和感がない」3つの理由

東洋経済オンライン

円安がもたらす効果

円安の効果には良いものも悪いものもある。

悪いものの例としては、外貨で購入しなければならないサービスは割高に見えるため、海外旅行の自粛などが現象として現れる。

海外ツアー代金が1割も2割も増したら、国内旅行に切り替えようかと考えるのは不思議ではない。

また、国内で消費するものに関しても、輸入品の値段が上がり、エネルギーインフレとともに家計を直撃してくる。これまでは国産のものが割高で、外国産は安価、という意識もあったかもしれないが、その差は縮まり、それが生活必需品であればあるほど家計へのダメージは大きい。

一方、輸出、インバウンド需要は期待ができる。海外で外貨の生活をする層にとっては、当然ながら日本で購入できる商品やサービスはとにかく安いと感じるようになる。同じクオリティを保つことができたなら需要は大きく増すと予想される。あるいは日本の不動産などに投資をすることを検討する外国人も増えるかもしれない。

高くなる通貨を保有していられるか

外国為替は振り子のようなものである。あるいは天秤と言ったほうが分かりやすいかもしれない。二国間での相対的な違いを表しているにすぎないので、為替の動きはそれぞれの要因で動く。結果としてどちらがより多く需要があるか、という意味ではモノの値段ともよく似ている。

グローバルに資産を持つ上で重要なことは高くなる通貨を保有し続けることである。ここには個人の実力も何もあったものではない。

先に述べたように天秤の片方は重くなったり軽くなったりする。バランスがとれているかどうかを気にしたほうがいいかもしれない。

一方、自分がアメリカに住んでいることを想定してもらいたい。インフレが7%あるのに、銀行に預けても2%くらいしか金利がつかないのであれば、資産はどんどん目減りしていることになる。よりリスクをとって資産の目減りを抑える対応をしなければならない。

もし自分の住んでいる国がそれほどのインフレに見舞われていないのであれば、アメリカに住む人よりも断然心持ちは楽である。比較的高い金利を享受すればいいし、それによって米ドルの価値も上がってくれるのであれば御の字である。

外国為替は比較的誰にでもアクセスできるものであり、上手く通貨分散をして、その先で資産運用をしていればよい。

円安への逆風リスク

待っていればまた円高になるのではないかという期待を持つ人もいる。

下がった株価はいずれまた上がる、みたいな話であるが、株価ですらない為替にこのことを当てはめて、どれだけの根拠があるのか。

急激に円安が進むと、なぜかその巻き戻しに期待をする人が出てくる。確かに、金融市場のセンチメントというのはあり、「売られすぎ」のシグナルは存在するし、シグナルはいつかは消滅する。ただ、このシグナルがどのくらいの期間をかけて消滅するのかは誰にも分からない。シグナルが消滅することがすなわち元の水準に戻ることでもない。アメリカの株式がぐんぐん上がって「そろそろ暴落しそうだ」と思い始めた人が、「いつかは下がる」の罠にハマっていつまでも買うことができないのと同じ現象である。

もちろん円安への逆風が吹くあるいは、そもそもこれ以上円安になるような風も吹かない、こともあり得る。

例えば、米国が米ドル高の抑制に動くことや、日本がインフレの抑制のため利上げに動くことなどもそうかもしれない。

外国為替という、様々な思惑の働く金融市場で何か一点を盲信して人生を賭けることはしなくてよい。

リスクに備える

最初のテーマに戻るが、通貨の価値の下落、インフレは「リスク」である。リスクは実際にそうなるか、そうならないかはさておき、不確実性そのものである。もちろん自分にとって良い方向に転ぶこともあるが、悪い方向に転んだときにその程度を緩和するために行うのがリスクヘッジである。

リスクヘッジにおいて必要なのはリスクの認識である。通貨価値の下落がなぜリスクなのか、インフレがなぜリスクなのか、それを認識しないことには始まらない。そして、次にそのリスクが顕在化したときに、どの程度の影響をもたらすのかをシミュレーションする必要がある。

既に実際に円安になって、あるいはインフレになって困ったことがあるのであればやはりそれはあなたにとって認識すべきリスクであったのだということである。それを具体化してみるといい。

影響の度合いが小さいのであればそのままにしておいて構わないし、大きいのであればそれを取り除くことができるかどうかを考える。

当然ながら一人ひとり取るべき対策は異なる。円安やインフレという社会からのメッセージを受け取って、どう行動すべきなのか、考えるきっかけにしてみてはいかがだろうか。

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