スタグフレーションのリスクが再び意識され始めました。家計や資産への影響と取り得る対策について考えてみるべきかどうか、本稿では少し話をしてみたいと思います。

スタグフレーションとは

スタグフレーション(Stagflation)とは、景気停滞と物価上昇が同時に進行する現象です。景気停滞はスタグネーション(Stagnation)、物価上昇はインフレーション(Inflation)なので、それを組み合わせた言葉ですね。

スタグフレーションのきっかけは、戦争などの外的要因による供給サイドのショックである場合が多いとされます。本来経済では需要と供給が上手くバランスを取りながら進むので調整がききますが、供給ショックによりバランスが崩れて立て直しがなかなか進まないわけです。

ハイパーインフレーションと比べてどうでしょうか。一般に緩やかなインフレは好景気の象徴でもありますが、インフレが急進することは景気を冷やす効果があるとされます。人々は消費を渋るようになるからですね。

ハイパーインフレとは、高いインフレの中でも、どちらかといえばコントロールを失ったインフレを指す場合に使われる傾向があると思います。戦争などで自国通貨の価値が暴落をして人々が銀行に駆け込み、取り付け騒ぎが起きているような局面と一致します。ハイパーインフレと呼ばれるようになるころには経済は崩壊しており、スタグフレーションとは少し違っていると言えるでしょう。当事者たる国でハイパーインフレが起こり、そしてその影響を受けた関係する国でスタグフレーションが起こる、そんなイメージでしょうか。

スタグフレーションの弊害

スタグフレーションはまずは景気後退を伴っているという点が注目されます。当然ながら、景気の先行き懸念が出ているのであれば、一般には株式市場は弱気相場になります。実際、過去にアメリカでスタグフレーションがあったとされる1973年、1974年はそれぞれ株式市場が下落しています。日本でいう1970年代のオイルショック後ですね。

景気後退のシグナルが出た場合、金融政策や財政政策を通じて、景気刺激のために緩和を行います。そのため、景気後退の程度は抑えられ、しばらくすれば景気回復となることが想定されます。

一方、スタグフレーションにおいては景気後退とインフレが同時に進行していますから、インフレをいかに抑制するかということになりますが、インフレの抑制のためには、金融引き締めを行います。このことは、引いては景気を冷やすことと本来は同じなのです。

したがって、スタグフレーションにおける金融政策や財政政策は「限界がある」と言えます。景気を解決しようと思えば物価が悪化するし、物価を解決しようとすれば景気が悪化する。このジレンマには残念ながら良い解がありません。

スタグフレーション対策とは

スタグフレーションへの対策が難しいのは、実際にスタグフレーションが起きてからでは難しいということです。

インフレーション対策は一般には、インフレーションが起こる前にやると効果的ですし、スタグネーション対策もまた、同じです。

対策なのですから、言うまでもないですね。

投資活動はさておき、スタグフレーションが仮に起きてしまったとき、家計への影響は非常に大きいと言わざるを得ません。

食品価格やエネルギー価格などは物価上昇においては一時的な要因として扱われますが、それも持続するようであれば影響があります。

普段消費しているもののなかでインフレの影響を受けてしまった場合、やむなく購入を続けるか、あるいは代替のものを探すか、ということになります。一部には買い溜めによりしのげるものもあるかもしれません。

日本でも一部にインフレ傾向が観測できるとされていますが、他の先進国に比べてその程度が低いことは注目に値するでしょう。それは単純にラグを伴っているだけならば、他の国のことを参考にして動くことができますし、あるいはそれでもスタグフレーションの波を受けないとしたら、そのギャップでもってどのような変化が訪れるのかに意識を向けるべきです。

スタグフレーション化では資産の変動率が高いと考えられますから、安全資産としての現金などに逃避することを考える人がいますが、実際には現金がインフレリスクにさらされることになるので、安全策といえなくなる、というところに難しさがあります。

スタグフレーションは一時的か

スタグフレーションは経済の不調を表していますから、その不調の原因がなくなれば元に戻ることが予想されます。したがって、何十年もスタグフレーションということは歴史上は観測されていないわけですが、一時的とはいえそれが数年にわたるのであれば、何とかしたいところです。

もしスタグフレーション対策ができていたとしたら、このタイミングで例えば不動産を売却したり、あるいは外貨建ての資産を解消したり、ということで相殺が可能になるかもしれません。せっかく生まれたリターンですら、あくまで相殺しかできませんが、何も対策をしていなければ自身の購買力が落ちていることを実感するに他なりません。

一方で、長期的な期待インフレに関して言えば、そこまで顕著な上昇は見られておらず、米国をはじめとした足元のインフレがいずれ減速に向かうことは確認できる可能性はあります。実際、2021年のFRBのスタンスはインフレは一時的なものでしたが、今はその持続性について注視しているというものです。ウクライナ情勢や資源価格の高騰などにより先行きに不確実性がもたらされているのは間違いありません。度重なる危機に対して経済は脆弱な状態に置かれているとは言えるでしょう。

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