2022年、新型コロナウィルスはまだ終わりを迎えきっていません。一方で、各国は渡航制限の緩和に向かい、結果としてポストコロナに近い状態が訪れています。

各国の経済政策、金融政策にも大きな転換点が来ており、来るべき変化に対してどのように備えるべきか、2023年の先行きに触れながら考えてみてはいかがでしょうか。

2023年のメインシナリオは?

2022年が多くの投資家にとって苦難の年であったというのは確かです。では、2023年は気持ちを切り替えて臨むことができるのか、という点に関しては、楽観的になりすぎるのには注意すべきですが、何かを始めるのに悪い年ではなさそうです。もちろん2022年の課題であったインフレがすぐになくなるものでもないですし、金利が上がった状態もしばらくは続くことでしょう。様々な金融市場がそれに合わせて調整し、今の状態を形成しています。

米国のS&P500株式インデックスでもピークから25%の下落を経験し、また高利回り債券でも額面100割れで取引されているものがほとんどですから、分散投資のポートフォリオにおいても多少のプラスアルファのリスクをとることは検討に値します。

資産運用を通じて適正なリターンを目指すのにはよい環境だと思いますし、難しく考えすぎず、シンプルなことをしてもほどほどの結果が返ってきそうではあります。投資するものがない、という状態ではなくなったので、逆に言えば安易な意思決定に誘われてしまうかもしれません。

各国中央銀行の動き

2022年の初頭に、1年後これほど金利が上昇していることをどれだけの人が予想していたでしょうか。一時的なインフレと切って捨てようとしたものが未だにマーケットの話題を占有しています。2022年終盤にかけ、利上げのペースを弱めた中央銀行が多く、それはインフレの減速を見届けられると踏んでいるからです。その間にも持続的なインフレが確認される可能性もあり、一寸先は闇と言っていいでしょう。

ただ、本来中央銀行とは様々なデータなどを見ながら、毎回の会合で様々な政策決定を行うものです。これまでフォワードルッキングに様々な行動予測を準備していたこと自体が歴史的に見れば特殊な状況ではあり、いわゆる「正常化」の道を歩んでいることに変わりはないのです。

金利が上がったとはいえ、量的緩和の残滓もまだまだあります。経済への刺激が続いていることには変わりがありませんし、少し前ほどに中央銀行頼みの資産運用をすべきではありません。

米中関係の進展

かつてほど緊張関係が報道されることはなくなった気がしますが、米中関係は未だに緊張を継続しています。はっきり言って良好な外交関係にあるとは言いづらいと思います。かねてからお勧めしているのは、当事者でない限り、政治的な思惑のどちらかへの傾倒をすることは避けることです。非常に揺れ動きやすい両大国ですので、何か一方に賭けるのは賢明ではありません。中国とて別の視点で様々な経済拡大を模索していますので、今どちらが強いから、というのも偏った視点になり得ると思います。

もし米中関係が大幅に改善されるようなことになれば、それは金融市場にとってもポジティブな要素として受け止められると思いますが、それが近未来にやってくることはあまり想定されません。

2023年のブラックスワンは?

2023年は景気の減速、すなわちリセッションの予想がいくらかありますが、現在の金融市場にとってそのことが大きな重しとなるとは限りません。既に2021年のようなブル相場(全面買い)ではありませんが、特定のセクターにとっては難しい年になることは想定できます。分散投資によってリスクは低減できますし、あるいはアセットクラスの中でより吟味をして投資をする局面ではあると言えるでしょう。

それでも起こりうるブラックスワンをあえていつものように予想するのであれば、

食糧危機

かもしれません。実は食糧危機自体は真新しい話でもないのですが、このことを金融市場がどの程度真面目に織り込んでいるか、という観点だけでいえばほとんど話題に上ることはありません。そういう意味でブラックスワンとしてみます。

2022年はやはりウクライナにおける戦争で小麦の供給不安がありましたし、パンデミックによるサプライチェーンの混乱もそれを後押ししました。ただ、危機的な状況には陥ることなく、2022年を終えたとは思います。食糧供給の確保のために、各国の駆け引きが行われた結果です。

しかし、作ったものが運ばれない問題と、そもそも作れない問題は全く違ってきます。世界の人口は今や80億人、気候変動問題も決して楽観視はできず、根本的な解決策を用意することなく、様々な要因が重なって危機に陥ることはあり得る話です。

エネルギーですら獲得競争になるなか、生きていくための食糧は自国民優先にどうしてもなります。需給の歪みが生まれる瞬間が危なく、これは他の分野での衝突も誘発します。

と言ってきましたが、やはり「流言は智者に止まる」となることを祈るばかりです。

インフレと金利のある世界

2023年に投資家が獲得すべき最も大きなスキルは、インフレと金利のある世界に順応することだと私自身は思います。本来はそういう世界なのですから、相場に楽観的/悲観的という話ではなく、これまで歪であった前提条件が元に戻ってきたことを受け入れる必要があります。

インフレがあることを大前提に何をすべきか、金利があることを大前提に何をすべきか、このことを再考するのには絶好のタイミングだと思います。

  • インフレがあると何もしなくても支出は増える
  • インフレがあると資産が目減りしていく
  • 金利があると銀行預金でもお金は増える
  • 金利があると住宅ローンに躊躇する

経済環境が変わったことを踏まえながら、ご自身のプランニングに組み込んでいきましょう。2023年が一人ひとりにとって追い風かどうかは分かりませんが、起こりうる変化を事前に想定していれば、不確実な未来を受け入れながら選択肢を確保しつつ進んでいくことができます。

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