FIREという言葉が社会で定着し始めたようです。ただの絵空事に終わらせないために、FIREの実現にはいくら資産が必要か、という話をしてみたいと思います。
目次
FIREとは
FIREとは、Financial Independence, Retire Earlyの略で、経済的な自立を達成し、早期にリタイアすることです。もちろん中には、仕事が好きで生涯現役を目指すという人もいると思います。そういう方にとっては、働かなくても生きていける(=経済的に自立している)状態になった上で、一つのライフスタイルとして仕事を積極的に選べることでもあります。
セカンドライフや不労所得も似たような文脈で使われる言葉でしたが、FIREは、若者がより主体的にライフスタイルの選択をするための目標として定着してきているようにも思います。
終身雇用、定年退職の希薄化
かつては大企業に入り、終身雇用に守られながら定年退職を迎えることに一つの成功の形があったのは確かですが、今の若い世代にその感覚はなくなってきています。ただ働いているだけでは、将来への安心が会社や社会から提供されることはないのです。だから、より主体的に自分自身の目指すライフスタイルをイメージし、実現に向かって歩み始める必要性が出てきています。
FIRE実現のために必要なこと
FIRE実現のためには、年間支出(毎年の生活費)をカバーするだけの収入が資産運用によって確保できることが必要です。その状態になれば、働かなくても生活水準を維持でき、かつ資産を取り崩すこともないのです。老後の蓄えをしっかりして、それを老後には貯蓄を取り崩して生活する、というのとは違います。貯蓄を取り崩す生活は、生活を切り詰めねばならなくなるプレッシャーを感じる人もいますし、長生きするリスクにも対処しづらいからです。
FIRE実現のために目指すべき目標は資産額または収入額として表せるのは確かです。
ただ、もっと重要なことは、その目標値を年間支出額から逆算することにあります。この年間支出額とは、あなたが十分だと思う生活水準を保つのに必要な金額であり、誰かと比べるものではありません。あなた自身がどのようなライフスタイルを送っていたいのかを明確にする必要があるわけです。
年間支出が見積もれたのであれば、その金額を25倍した金額をFIRE実現のために必要な資産として用いるのが一般的なようです。25倍の根拠になっているのは、トリニティスタディによる4%ルールなので、こちらの記事も参考にしてみてください。
年間支出が200万円なのであれば、資産としては5,000万円必要、年間支出が400万円なのであれば、資産としては1億円必要、ということです。
運用益をどの段階で受け取るのか
FIREの目指す方向が毎年の生活費をカバーするだけの運用益を確実に得ることなので、そこに至る過程は見えるわけで、10%FIREだとか、五分の一FIREのように感じることは可能ではあります。そのときすぐに、運用益を労働収入に代替させていくのか、運用益を積み上げて(=受け取らず)FIREした後に受け取るのかは選択肢としてはあります。
前者は、資産運用を通じた“収入”を積み上げるので、直感的に理解しやすく、後者は資産運用を通じた“資産”を積み上げるので、金額的に大きいので人によっては長い道のりのように感じます。FIRE前には少なくとも生活費以上の労働収入があるはずなので、資産運用の効率からすれば、運用益を積み上げる=資産を増やす方がよい、とは言えます。
ファイナンシャルプランニングをスタートする
結論から言うと、FIREの中に、資産を増やそう、資産運用しよう、というどこでも聞くような話が含まれているのは事実です。それって結局、素人では投資で失敗するだけでは、という反論もあり得ますよね。
実際、FIREに至るにあたって単年度の投資成績や、どのような運用を行うかで“軌道”が変わるのは確かではありますが、一方で目指すべき目標が変わるものではありませんよね。それはあなた自身の”ナンバー=数字”なので、数字が変わるときはあなたの目指すものが変わるときだけです。
目標が変わらないとしたら、短期間でFIREしようと思えばそれに合わせた選択をすべきだし、それに伴うリスクもあるわけです。時間をかけてFIREに至れるのであれば、途中での軌道の微妙なズレは致命的ではなくなる、といった具合です。これらを知ることができるのはファイナンシャルプランニングというプロセスのみです。
ポイントは、FIREとあなたの目指すライフスタイルが一致していることであり、だからFIREを目指しているのだ、だから資産運用をしているのだという動機づけができていることです。そして、プランニングするのは、「投資で増えるといいなぁ」などという漠然としたものではなく、必要な“軌道”を逸脱することなく、いかに目標に近づく確率を高くするか、という話です。
FIREを実現してどうなるのか
そうはいっても汗水流して稼いだお金の方が大事で、リスクの伴う資産運用なんて、、と言う人はいるわけです。それ自体はその人の価値観なので無理に変えようとする必要はありません。その人なりに「目指すライフスタイル」の実現に向けた道を考えればいいだけです。
ただ、ファイナンシャルプランニングを通じて、今のままでは目指すライフスタイルに辿り着ける見込みがない、という人もいるわけで、それは事実として知っておくことも重要です。
FIREを目指す人には様々な動機がありますが、
- 安心
- 自由
に多くは帰着します。
人間誰しもストレスや不安を感じながら生活していたくはありません。むしろ自分の好きなことを好きな人とする、笑っていられる時間の方を大事に思います。
それは決してだらけきった生活などではなく、お金の心配がないなら選ばないのに、お金の心配があるために選んでしまっている選択肢というのは多いのです。好きな仕事をすること、プライベートな時間を自由に過ごすこと、大切な家族のために割く時間を増やすこと、新しいことにチャレンジすること、住む場所や環境にとらわれないこと、など価値を感じることは人によって違っています。
お金と人生は表裏一体なので、お金のことを考えるのが苦手な人は、人生のことを考えてみるといいと思います。そこにきっとあなたなりのFIREの形があります。