2022年は為替の動きに翻弄されている人を多く見る。実際20数年ぶりの円安水準に来ているのだ。大きく動くときというのは通常であればあまり意識していない人も認識して、「自分も何かした方がいいのではないか」というアクションにつながるものだ。ここでは円安で得する人、損する人についてまとめてみよう。

そもそも円高、円安とは

円が高い、円が安いと口にしている人は多いものの、実はイマイチ腑に落ちていない人が多いのも事実ではないだろうか。ちなみに、1ドル=100円と、1ドル=120円ならどちらが円安か。もちろん後者であるが、数字だけ見れば、120の方が大きい、だから円高だと思ってしまう人もいる。

円高、円安というのは、円の、他の通貨に対する相対価値のことを言っているため、対ドルに対して円安、対ユーロに対して円高という言い方をする方が間違いはおきづらい。ただ、主要な複数の通貨に対して、総じて円が安いという状況が訪れるとき、単に円安というのである。

2022年は典型的な円安局面である。が、円安の度合いというのは、相対する通貨によって当然ながら異なる。同じようにユーロが安くなっていれば、円が安くなったとしてもユーロに対して円はあまり変わらないことになるからである。

円安で得する人

外貨建てで資産を持っている人

日本に住んでいたとしても外貨建てで資産を持つことはかつてより容易になった。外貨預金でもいいし、外国の株式や債券でも構わない。とにかく日本円でさえなければ円安の恩恵は受けやすい。

海外に資産を持っている人

また、日本に住んでいたとしても海外に資産を持つことはできる。海外で流通しているのは外貨であり、日本円ではない。そのため海外に資産を持つことで、円が安くなると資産価値が増えたように見えるし、実際に資産を売却して日本円に戻した際には利益が出ることになる。

外貨を稼いでいる人

海外に住む、海外で事業をする、などで外貨を直接獲得している人は実質的に稼ぎが増えたように見えるのも特徴である。現地で働いて現地で消費をすればあまりその恩恵は感じないかもしれないが、日本に来て消費をしたりすると円安で得をした感じにもなろう。

これから日本の資産に投資しようとする人

円が安くなったのであれば、同じ外貨で獲得できる日本円は増えることになる。したがって、日本の資産の価値が同じなのであれば、簡単に言えば同じ外貨でより多くのものが買えたり、安く買えるという感覚になる。もちろん消費するものでも同じだが、資産価値を持つものならば、バーゲンセールであり、それは日本円だけを持っていた人が享受できないものである。

円安で損する人

円建てで資産を置いたままにしている人

日本で稼ぎ、日本で暮らしているだけならば為替の影響は体感しづらいものであるのも確かだが、為替の動きが大きくなり、輸入物品の値段が上がったり、ビジネスの流れが変わったりすると、円建てで資産を持っていたことが何か機会を失わせたような感覚にもなる。

日本にだけ資産を持っている人

海外に住んでいたとしても日本に資産を残してくる人は多いが、せっかく海外にいるのに普段は全く利用しない日本の資産をそのまま無意識に放置した結果、資産が減ったと感じる人は多い。意識していれば対処できたのに、というケースもあるわけだが、その後悔の念を持ってしまうと、次に海外へ資産を移転するのを躊躇ってしまうことにもなりかねない。それでいい場合と悪い場合があるのは言うまでもない。

海外旅行を趣味にしている人

サービスの中には外国の価格で値段が決まっているものも多く、特に海外旅行はそうである。一時的な消費である海外旅行のためにわざわざ外貨を蓄えている人は決して多くないため、思い立って海外旅行にいたときに、ツアー代金が高かったり、現地での食事やお土産に対して割けるお金が少なくなっていることに気づくのである。

外国のものをよく買う人

海外に出て行かない人であっても家具や車などは海外のものを好んで買う人はいる。個人で輸入している場合も、輸入品を買っている場合もそうだが、国内産のもので我慢せざるを得なくなる可能性はある。

円安に対してどのように反応すべきなのか

冒頭、急激な為替の動きに大しては様々な人がアクションをする、と書いた。実際、円安によって得をした、損をしたという感覚を持つと、さらに得をすること、さらに損をすることまで人間は想定し始める。果たしてそのような思考をしてよいものだろうか。

今の外国為替の世界の大部分は、変動相場制を採用している以上、為替変動のリスクはいつも変わらず存在しているのである。ただ、あなた自身が知らなかったか、知っていたが意識していなかったかというだけの話である。

ひと昔前に比べれば多くの人が貯蓄から投資に資金を振り向けており、しかもその資金はアメリカなどの海外投資に向かっている。資産を形成していくなかで成長する国や企業に投資をするのは当然である一方で、為替リスクにさらされやすくなっているのもまた事実である。

為替は二つの通貨の相対価値を表す。もしその相対価値が動いたのであれば、動いた事実をまずは受け止めるべきであり、一時の気の迷いみたいなものですぐに戻ってくる、などと考えてはいけない。”戻ってくる”という考え方が正しくなく、“常にお互いの位置が変わる”のが当然なのである。だから、円安が動いた事実なれば、次に円高が起こればそれは事実であり、“戻る”という概念では表しづらいものなのである。企業のように利益を上げる方向に自然と向かいやすい=株価が上がる、というものではない。繰り返すが、あくまで相対価値である。

短期間に為替が動くと得した気分、損した気分になるが、その後為替が変わらなかったとしても、数ヶ月すれば実は気持ち的には落ち着く。そもそもあなた自身が為替に影響力を発揮できるわけではないのだから、事実を受け止める以外に策はない。数ヶ月前にこうなることを知っていれば、などと考えても仕方ないのである。

衝動的な感覚を取り除いた上で、為替変動のリスクが自身にとってどのような意味をもつかを知るのは良いことであると思う。もちろん環境が変わったら変わったで対処する人もいるが、それがあなた自身の理想とするライフスタイルを遠ざけたのであればチェックすべき類のリスクであるとは言える。円安、円高にとらわれることなく、実現したいものを実現するにはどうしたらいいか、突き詰めるべきはそこにあるのだろう。

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