海外在住者が海外旅行保険の加入を拒否されるケースは多いが、なぜなのか。保険のコンセプトを知り、適切な保険プランを検討したい。

海外旅行保険の基本的な考え方

海外旅行保険は、“旅行”と名の付く通り、もともと住んでいる場所から、一定期間離れ、そして戻ってくるまでの期間の補償を提供する。すなわち、日本に住んでいる場合は、日本が起点になり、香港に住んでいる場合は、香港が起点になる、というのが基本的な考え方だ。住んでいる場所で提供される海外旅行保険に入るのがベースになってくる。

ただし、複数の国を転々としながら生活する人や、あるいは二つの国をそれなりに行き来する場合、起点が複数あることも想定できるため、最適なものを選択することが重要になってくる。

海外在住者は海外旅行保険に入れるのか

海外在住者であっても、海外旅行保険に加入すること自体は可能である。ただし、起点となる国へ行って契約する必要があるケースが圧倒的に多いのと加入を断られることが多いのもまた事実である。

日本の保険会社が提供する海外旅行保険に入りたいなら、日本に帰国して契約するのが原則ということである。それに、勝手に起点を設定して、その後一切戻らない、ということであれば、そもそも旅行ではないので、保険料を払い続けても実際の補償が得られない、ということにもなりかねない。

保険の契約においてやってはいけないのは、告知事項に関する虚偽であるため、加入するために嘘をついてもいけないのである。だから、海外在住者の場合は一般には現地で海外旅行保険に入る、または事実を全て保険会社に伝えた上で、受入の可否を問うておくことが大事である、と言える。

海外旅行保険のカバー範囲

そもそも、海外旅行保険とはどのような損失を補償してくれるのだろうか。

一般には海外での入院、医薬品、検査などの医療費、緊急時のアシスタントサービス、個人賠償責任補償、渡航時の寄託手荷物補償などが挙げられる。ただ、補償金額や範囲、請求のしやすさは保険会社によって異なるのが実態である。

短期の海外旅行であれば、クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険が活用できることも多いので、改めて加入を検討するのは、少し長めの留学や、現地での研修、長期滞在を予定する場合が多いかもしれない。

いずれも、渡航が発生していることが補償のスタートであるため、クレジットカードを持っているから、海外旅行保険に加入しているからというだけで守られているわけではなく、実際に出国し、一定の期間内に帰国することが必要になってくる。

海外に軸足を置く活動が増えるのであれば、自然と現地で医療保険や損害保険などに加入するのが現実的になってくるとは考えられる、というわけだ。

海外旅行保険に加入できないケース

健康状態が良くない

過去の入院・手術・既往歴や既に高齢であることを理由に保険の加入を断られる、というのは海外旅行保険に限らず、保険一般に当てはまることでもある。保険会社も一定以上のリスクが認められる人を保険に加入させる理由はない。

海外滞在期間が長い

以下の一つひとつは保険加入を拒まれる決定打にはならないにせよ、受入可否において考慮されやすいポイントである。

  • 海外の現地企業で採用される
  • 日本には家がなく、住民票も国外転出している
  • 海外に永住している
  • 日本への帰国予定がない
  • 海外の永住権、市民権を持つ
  • 外国籍のパートナーと婚約した
  • 自分自身が日本国籍を持っていない

これらは自身がずっと海外にいる予定であることを示唆するものであり、海外旅行保険に加入できない可能性は増えることになる。そもそも、海外にいる目的が旅行でないならば、原則的に海外旅行保険は意味をなさないからだ。駐在員として海外にいる場合も、あくまで日本国内の企業に在籍をし、その企業から駐在を命じられた場合のみであり、海外にあるグループ企業に転職したのではダメなケースがある。

海外旅行保険は最適な選択か

健康状態や居住の実態などはケースバイケースではあるが、仮に日本の海外旅行保険に加入するのであれば、そもそも日本に帰る迄の海外滞在予定期間がどのくらいか、というのが最も基本的なチェックポイントであるのは確かだろう。6ヶ月以内なのか、1年以内なのか、それ以上なのか。

また、海外旅行保険がカバー範囲を見れば分かるとおり、医療に重きを置くのであれば、当然ながら現地で医療保険を探した方がよほど充実しているし、医療保険でも複数の国に適用されるものもある。

もちろん合わせて保険料が変わることになるが、海外旅行保険にこだわりすぎず、様々な保険を組み合わせて、そのときのご自身の状況に最適な保険プランを組むことが大事になってくるのである。

↓ この記事が気に入ったらシェア ↓