今回は、海外在住中に保険を通じて何らかの保障を得る場合に、考慮すべきことをベストプラクティスというと大袈裟かもしれないが、少しだけまとめてみたいと思う。

雨が降ったらさすのが傘であるが、予め傘を持っていなければ濡れてしまう。海外ではどのような保険=傘を持っていればいいのであろうか。

日本で加入した保険の条件を整理する

ひょっとしたら海外の大学を出てそのまま現地で就職、という人もいるかもしれないが、日本人でかつ社会人であるならば、海外に来た時点でいずれにしても何がしか日本の保険に入っていることが多い、と思う。その場合、税金面だと生命保険料控除がなくなり、あるいは医療保険であれば日本で治療を受けることが少なくなる、特約でつけた死亡保障の増額なども海外居住者では受け付けられないことがあるなど所与の条件が崩れていることもあり得る。

まずは日本で加入した保険の条件について洗い出しを行い、“海外生活”という独自のファクターを含めた上で再検討を行うことが必要になる。しかも、生命保険の募集人の大多数は日本にずっと住み続ける人物のため、残念ながらいくら親身になってくれたところで、このパートについての知見を持ち合わせていないことが多い。

会社を通じてカバーされる保障について整理する

現地での永住権を持たない日本人が海外にいるというのは、一般的には立っている階段の高さが少し違う。

というのは、例えば、海外駐在員であれば、日本と同等の生活を維持できるための給与であったり、あるいは家族に何かあったときですらカバーされるような保険に入っているなど、ある種の特別な対応がなされている。住み慣れた場所でない以上、現地企業で働いているにせよ、少し厚めの保障にしているのはあるべき姿かもしれない。日々の生活という意味であれば医療保険が一番考えられる。カードを持っていればキャッシュレスで様々な病院にかかることができるならまずは安心だろう。場合によっては国外でより良い治療を受けることも想定して保険に入るべきかもしれない。そのとき日本の病院は逆に海外保険でカバーされるのか。国外への出張に際しては、団体で旅行保険に入っているかもしれない。

自分に何かあれば家族は日本に帰るかもしれないが、それでも家族が現地で様々な整理をして過ごすだけの死亡保障は支払われるだろうか。会社で与えられるものには足るや否やの議論は直接はできないかもしれないが、自分や家族の状況に照らして“十分”と言える状況なのかは考えてみてもいいだろう。

海外滞在が短期なのか長期なのか

さて、“今”の状況を上の2つで考えたが、これからの自分自身はどのような海外滞在をする予定なのだろうか。海外で時間を過ごすのにも、短期の旅行目的、長期の出張目的、現地子会社への出向、家族の都合、永住目的など人それぞれであろう。

保険は一般的には長期だと思いがちであるが、大事なのは必要な期間、必要な保障を得ることである。旅行保険であれば、旅行していない期間に保障をかけていても意味はない。医療保険ならば、その保険が適用される地域に住んでいないのであれば意味はない。

保険は自分と家族を守ってくれる傘のような存在ではあるが、果たして自分と家族が新しい場所に移ったときにもそのまま頭上にいてくれる傘なのか、あるいは前いたところに置いてくるしかなく、傘の下に自分が戻らなければ意味がないのか、それは状況にとって大きく異なってくる。保険契約において、保険をかける“期間”は熟慮すべきであると言える。

生命保険なのか損害保険なのか

私のいる香港もそうだが、保険というのは国毎に定義が異なっている。ある国で保険と呼んでいたものは違う国にいって話しても外来種でしかない、というケースはあり得る。一般の人に、保険業界のことを詳しくなれ、とまでは言えないので、立ち返るべきは一体何に対してどのような保障をかけることを希望するのか、という点に尽きる。ざっくり話すならば、例えば死亡した、糖尿病と診断された、など一定のトリガーを経て一時金を受け取りたいならば生命保険、入院代がかかった、事故の賠償が必要だ、など既に発生した費用の穴埋めをするのであれば損害保険だ、ということは言えるだろうか。

何のための保険なのか

繰り返しにはなるが、保険は保障を提供する。つまり、何のための保険なのかは意識しておかないといけない。しかも健康な状態から、そうでない状態をイメージするのだから、難しい作業ではある。何のためか、もとい、“誰のためか”というのは保険においてイメージするべき最も重要なポイントかもしれない。資産運用のために保険を、という人も中にはいるが、基本的にはそうでない。貯蓄型保険に入るのなら、誰かのために保障をかけるが、その保障がしっかり増えていく必要がある、というのがベースになってくる。

日本に帰国した後のことも考えられるか

さて、日本から海外に来たら、保険の見直しをすることはよさそうだが、同じく日本に帰国したときも見直しが発生することは言うまでもない。海外にくることは人生の転機だったかもしれないが、日本に帰ることはどのくらい確度の高いものだろうか、そのことを考えるのは海外在中はいい機会であり、それをしっかりと設計に落とし込むことも必要である。保険料の支払いをどのように継続するか、これも大切なポイントになる。将来の不確実性があまりに大きいのであれば、長期の支払い期間は避けるべきことの一つになる。

上手くいってもいかなくても解約するという選択肢を持っているか

身も蓋もない話かもしれないが、保険はあくまで保険である。“万が一”の種類によっては助けてくれるかもしれないし、そうではないかもしれない。保険やあるいは不動産で資産形成をするのが不自然な点があるとすれば、手元からは少しだけ離れている資産(流動性のやや低い資産)ということである。つまり、解約をしようと思ったときに、やや遠い場所にあり、そして場合によっては解約という意思決定を通じて損失を被ることがある、ことは意識しておきたい。保険は必要なときに必要なだけ、これが鉄則であり、想定していたシナリオにかかわらず、不要になれば解約をするという選択肢を持つことは重要である。ただし、状況が変わらないのに解約せよと言っているのではない。

家族に保険について相談をしたか

保険は自分自身のためのものでは必ずしもない。したがって、どのような保険に入っているかは家族が知っておくべきであるし、まして海外の保険ともなれば英語での対応を余儀なくなれることもあろう。場合によっては保険加入時に家族に入ってもらうことが良い場合もあろう。可能な限り情報を共有し、何かあったときに家族も対応しやすい状況に持っていければ理想的である。

万が一の心配をするなら担当アドバイザーとも繋がっておくべき

日本であれば、どこであれ保険代理店で購入して、困ったら保険会社にと思うかもしれないが、海外の場合、その気軽さがどこまで通じるかは分からない。商品ありきの検討の弊害はここにも表れうる。万が一の心配はお金だけでなく、その万が一の状況を上手く乗り越えるためのヒューマンネットワークでもあるというのは心に留めておくといいかもしれない。もちろん”万が一”が起こらないに越したことはない。