香港の生命保険にはどのようなものがあるのか。全体像を知り、ライフステージ毎に適切な保障を得るようにしたい。

生命保険とは

生命保険というのは、大勢の加入者が保険料を負担し合い、その中でもしものことがあった人に対して保険金や給付金を出すことを約束する契約です。“もしも”というのは、最も一般的なものでは死亡ですし、その他の重篤な病気なども含みます。

生命保険は保険のうち、人間の身体や生活に関わるものを多くカバーしています。一方、保険の中には物や権利が損なわれたときに金銭的価値の補填をする損害保険も存在します。

香港においては、保険会社に対してはその事業内容に応じて保険監督庁(Insurance Authority、IA)からライセンスが付与されており、生命保険会社としてのライセンスを持つ会社しか生命保険商品を販売できません。生命保険はその目的に応じて、死亡保険、医療保険、がんなどの重大疾病保険、学資保険、年金保険などと分類されることもあります。

リスクと生命保険

生命保険は最初に触れたとおり、大勢の加入者が保険料を負担し合います。その目的は一人で取りきれないリスクをみんなで共有し、リスクが顕在化したときの負担を軽減することにあります。つまり、“何に備えるのか”、ということによって生命保険に加入する動機が変わってきます。

万が一に備える

死亡というリスクは人間である限り、いつかは向き合わねばならないものです。それに死亡の場合は、遺された家族の生活に与える影響を考えるもので、本人にとっては想像しづらい面があります。

家族を支える存在となっているのであれば、その支えがなくなった場合に備えることが、大きな安心感につながることを知っておくべきでしょう。あるいは、葬祭費用や、相続などで遺された家族が時間やお金を必要以上にかけることを防ぐことができます。

病気やケガに備える

病気やケガは程度の軽いものから重いものまで様々ですが、治療そのものに費用がかかると同時に、病気やケガの程度によっては、治療に専念するため、あるいはその後の後遺症などにより働けなくなり、収入が減少する可能性があります。

特に治療法の選択によっては高額な費用がかかりますが、逆にその高額な治療費を賄えれば日常生活への復帰が早くなったりします。健康だから大丈夫、というのではなく、病気やケガは誰にでもあるものだと考え、一定の保障を持っておくことがよいでしょう。

将来に備える

突発的に発生する費用以外にも、将来に見込まれる大きな支出があるのであればそれに向かって少しずつ準備することが必要です。

将来のライフイベント(進学、結婚、住宅購入など)に合わせて資金を取り置くことはもちろん貯金でも可能ですが、今すぐに使う予定のないお金なのであれば運用して増やすということを考えるべきです。

特に長生きによるリスクに備えて老後資金を蓄える場合などはわずかな物価上昇(インフレーション)が時間をかけてその資金をむしばみます。将来の金銭価値が現在と異なるというリスクにもまた上手に備えることが求められています。

香港の生命保険の主な種類4つ

死亡保険

死亡保険は被保険者が死亡した際に保険金が支払われるという非常にシンプルなものです。保障の期間の定めがある定期保険と、保障の期間が一生涯とされる終身保険があります。

定期保険の多くは、保険料が掛け捨てですが、その分安く、大きな保障を得られます。ただ、期間が過ぎて生存していた場合、保険金は支払われません。

一方、終身保険はいずれ保険金が支払われることになるため、保険料の一部を積み立てる必要があり、保険料は定期保険に比べて高く見えます。どのくらいの死亡保障が必要なのか、そしてどのくらいの保険料を支払うのが適切なのかは人によって異なりますので、数字のイメージを持っておくとよいでしょう。

重大疾病保険

死亡以外でも、生きている間に起こると生活に与える影響が大きいリスクが存在します。がんや脳卒中、心筋梗塞などは代表例ですが、治療に時間がかかったり、あるいはその後の後遺症が懸念されたりするものもあります。

そのようなリスクに備えるには重大疾病保険が適しています。病気の診断が下された時点で給付金が出るので、その後の治療に役立てることができます。

入院や手術の費用を補填する医療保険や、病気やけがで働けなくなり収入が減少することに対処する収入保障、あるいは死亡保険に重大疾病特約を付加することでも一部はカバーできますが、単独の保険商品であることにより、幅広い病気に備えられるようになっています。

学資保険

上記の2つと異なり、被保険者が健康なまま保険期間を満了することを意図したものが生存保険とされます。たとえば将来のお子さんの学費のための準備とする場合は学資保険という呼び方がなされます。もちろん学資保険と名前になくても構いませんが、年齢に応じて保険料が高くなることはないので貯蓄型保険とも呼ばれるのが特徴です。

一定の金額を目指して積み立てる、あるいはまとめて積み立てて時間をかけて増やす、といったイメージです。外貨建てでかつそれなりの利回りが期待できる、という点で、香港の保険が選ばれやすい面はあります。

年金保険

国などが提供する公的年金も保険ではありますが、ここでは個人で老後資金の準備をするための個人年金保険とします。年金保険も保険料を支払った本人がいずれ受け取ることを想定しています。

将来の自分に対して資金を用意しているイメージです。年金の受け取り開始は60歳だったり65歳だったりと指定があるものや、自分で決められるものもあったりします。

少ない保険料であっても、比較的長い期間かけてじっくりと増やすことができれば老後の資金としては非常によく機能します。香港で年金づくりをする場合は、そもそも老後を香港で過ごすのか、などをイメージしてみるといいと思います。

まとめ

生命保険が非常に歴史の長いものであることを鑑みると、生活を取り巻く基本的なリスクはこれまでもそしてこれからも変わらないことが想定されます。あるいは長生きという新しいリスクも登場してきているとも考えられます。

“もしも”を考え始めるとキリがないと思う人もいるかもしれませんが、想定されるリスクがあり、それに対処する能力があるのであれば、無視しないことが将来の安心に繋がることを忘れてはいけません。

どのようなリスクを考えるべきなのか、そしてそれに対してどのような計画で対処するのかは人それぞれ違いがあるため、一人ひとりが自分の置かれた状況に合わせて考えていくことが重要です。

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