米国での利上げに合わせて、香港でも銀行預金に対して目に見える利息がつくようになってきました。何もせずにお金を置いておいても多少の利息はつきますが、数ヶ月の定期預金にしておくとより高い利息が得られます。しかし、高い利息を得るために銀行間で資金を移動させて新規預金を装ったり、定期預金を満期に合わせて都度更新するのも面倒に思うかもしれません。

そんなとき、貯蓄型保険を検討する人が多いわけですが、そもそもどのようなメリット、デメリットがあるのか整理してみます。

香港の貯蓄型生命保険とは

そもそも生命保険で資産は増えない、という話を日本にいるときに聞いたことがある人は多いと思います。実際、低金利環境下では学資保険のようなものであっても、資産を増やすということは難しかったわけです。取り置いたり、貯めて置いたりすることももちろん大切なことですが、どうせなら増えていて欲しいものです。

一方、香港の場合は、米ドル建ての生命保険が多く、金利がある環境下では、生命保険を通じて資産を増やす、ということも現実的な選択肢ではあります。

もちろん生命保険は株式やファンドのような投資商品ではありませんが、これらは貯蓄型生命保険としてよく知られています。設計もそれほど複雑ではないので、学資保険やリタイヤメントの資金として利用されることが多いでしょう。

貯蓄型保険のメリット

海外に資産を置いておける

香港でなくてももちろん保険に加入することはできますが、海外にいるからこそ利用できる保険というのは確かに存在し、その後他の国に移ったとしても、貯蓄型保険の場合は継続が可能です。住んでいる国のリスクについて考えるのであれば、資産の一部が海外にあることはリスクヘッジになるとは言えるでしょう。

外貨建ての資産形成ができる

香港では米ドルペッグ制が前提にあるため、保険契約の多くは米ドル建てになっています。世界の基軸通貨である米ドルにて資産形成ができることは、いずれ海外に住む予定のある方、お子さんの海外留学資金を手当てしたい方、あるいは純粋に日本円との分散を考える方にとって貴重な機会です。

中期的(7-10年程度)には払込額以上が返ってくる

株式やファンドのような投資商品と異なり、保険商品の場合は、保障を提供することが軸となる考え方です。したがって保険会社に預けたお金も、遠からぬ未来には払込額以上の返戻が保証されていることが多いです。いつの間にか投資で失敗して資金がなくなっていた、ということにならないという安心感は大きいと思います。

年齢によって保険料が変わらない

通常、保険は健康で若いうちに入っておいた方が加入しやすいし保険料が安いと言われますが、貯蓄型保険の場合にはそれがありません。健康面の申告も非常に簡素なので、あらゆる年代のニーズには答えることができます。その分、安い保険料で高い死亡保障を得るという面は薄れます。

貯蓄型保険のデメリット

すぐに解約すると大きな損失になり得る

貯蓄型保険を資産運用目的で見る人もなかにはいますが、勘違いしてはいけないのはすぐに解約したら払い込んだ保険料は戻ってきません。そもそも保険契約とは長期のものなので、数年単位ではなく、数十年単位で保険会社と付き合っていくことが予想されます。定期預金と変わらない、と勘違いするといざお金が必要になったときに困ってしまいます。

保険料を外貨で払う必要がある

貯蓄型保険は一括払いから10年払いくらいまでで比較的短期の支払いが多いです。最初に支払って、それを時間をかけて増やす、というものだからですね。別の通貨での預金から支払うなら、一括払いならそのときの為替レートが、年払いなら毎年その時点の為替レートが適用されることになりますが、為替レートは正直にいって読めませんし、動きも大きくなる可能性があります。今すぐに貯蓄がないからといって長期での支払い契約を結ぶとかえって家計が苦しくなるかもしれないリスクには注意しましょう。

世の中の経済的変化の影響を受けづらい

保険とは非常に古くからある仕組みです。保険会社も長く経営されていることが多いです。保険商品も日々新しいものは開発されますが、基本原則は同じであり、だからこそ何十年先も安心できる面があります。

ただ、資産を増やすという観点において、例えば預金金利が非常に高くなったからといってすぐに保険商品が改定になるとは限りません。世の中の経済的変化によっては長期の契約によって損をした風に見えることもあります。利益をあげることよりも将来の不確実性を減らすことに重きをおいて保険は検討すべきでしょう。

資産が増えるのに時間はかかる

貯蓄型保険には確かに利回りが存在しますし、長期でみればそれはかなりの資産増幅効果があります。ただしそれは長期でみればの話であって、保険を買った翌年に億万長者になる、という類のものではありません。

保険会社は実際に資産運用をしていますが、大きな利益が上がったからといってそれをすぐに保険の加入者に分配するわけではなく、毎年の分配をなだらかにできるよう配慮するので、時間をかけないと資産は増えていかないと考えるべきです。

契約前の三段階チェック

ここまでは貯蓄型保険という商品ないしカテゴリーの話だけをしてきましたが、実際に加入するとなるとそれ以外の観点も必要になります。

  • 保険会社
  • 保険商品
  • 販売仲介者

単純化すれば、良い保険会社の、良い保険商品を、良い販売仲介者から買うことができるのが理想、という話です。

“良い”の基準は人によると思いますが、どのようなことを考えるのが一般的なのでしょうか。

香港で見る保険会社の中には日本に進出していない会社もあり、まずはそもそも大丈夫なのか、という不安がよぎる人もいると思います。ただ、世界的に見ると格付けも良く、顧客も非常に多いかどうかということは客観的に把握することは可能です。

保険会社の中にも、得意とする保険商品、そうでないものが存在するので、商品ラインナップ全体も参考にはできます。

短期で取り扱いをやめてしまう商品もあれば、ロングセラーとして幅広い層に選ばれているものもあります。あるいはご自身も最初は貯蓄型保険を検討していたが、目的に照らせば別の種類の保険の方が良いことに気づく、ということもあり得ます。

そして、その保険商品を提供している立場の人がどのような人なのか。はじめましてからスタートしてどのような会話に時間を割いたのか、今後どのようなサポートをしてくれそうなのかは大きなヒントになります。

いざとなれば販売仲介会社や保険会社に問い合わせて手続きをすることはできるにせよ、担当者が最もあなたとあなたの家族のことを知っていることに変わりはありません。

商品検討時は、利回りなどに目がいき、商品さえ良ければあとは何でも、と思いがちですが、保険は長期の契約ですから、慎重に選ぶに越したことはありません。

↓ この記事が気に入ったらシェア ↓