低金利時代、レバレッジ投資は資産を急速に伸ばすための王道でもあったが、ここに来て曲がり角のようにも思える。果たして、成功法則は未だに有効なのだろうか。

レバレッジ投資とは

レバレッジ投資とは、元手の何倍もの資金を他のところから借りてきて、投資を行う手法である。投資用不動産に対する貸付もレバレッジの一例ではあるし、FXなどではレバレッジ○倍、といった設定も可能である。投資の世界では貸付は巨大ビジネスであるのは間違いない。借りる方だって、自分が持っていないお金を使って投資ができるし、自分が持っているお金が減らないことを心地よく感じる人だっている。

レバレッジを利用すると、お金を左から右に流して差分で儲けているような感覚を持つ人がいる。これが単なる手数料ビジネスならリスクは低いが、レバレッジとは貸借であるため、自らが大きなリスクを背負うことに繋がる。

レバレッジを上手く使えれば、投資における成功を後押ししてくれるだろう。

ただし、上手く使えればの話である。それはスキルの問題であり、同時にそのときの環境の問題でもある。

貸し手の思考回路を理解

レバレッジとは借入である。したがって貸付を行なっている相手方がいる。レバレッジの基本を理解する上で大切なことはこの貸付を行なっている相手の立場をよく理解することである。

誰かにお金を貸すとして、どのようなリスクを取りたいだろうか。恐らくリスクなど取りたくない。貸したお金が返ってこないことを最も恐れるし、返ってこないような可能性の残る不利な条件で貸付は行わない。

つまり、絶対に返せる金額以外を借りてはいけない、が原則である。そうでなければ返せない可能性のある局面が来たときに貸し手は資金を即座に引き上げる。リスクをとって稼ごうとする人を助けるために貸しているわけではない。融資は親切心ではないのである。

貸し手がリスクを取りたくないとしたら、貸せない金額を貸すことはないのではないかと思う人もいる。これはある意味で正しいが、それに依存した意思決定はしてはいけない。貸し手は借り手が返済に困ったら何としても返そうと努力することを知っている。高い金利で貸し付けて、全てを回収し終えたならば、そのとき借り手がどのようになっていようと関心はない。融資は味方とは限らない。

レバレッジの成功要素

借入を行うのにはコストがかかる。したがって、その投資でコストをまかなって余りある利益が得られなければならない。

借入は返済しなければならない。したがって、返済ができなくなるリスクは回避しなければならない。

  • ① 投資リターン(%) > 借入コスト(%)
  • ② 投資回収総額($) > 返済総額($)

を《投資期間にわたって常に》満たすことができれば、レバレッジは成功であろう。

まず投資リターンについてはこれが最も不確実性が高い。

株式に投資をすれば配当でリターンが得られるため、それが借入コストを上回っていればいい気はするが、株価は大きく変動するため、②がリスクに晒されるかもしれない。あるいは減配になって①がリスクに晒されるかもしれない。

債券に投資をすれば、利回りは①を満たすかもしれないが、これもやはり価値は変動するので②にリスクがない、とは言えない。だが、保守的な債券投資ほど、そもそも借入コストに近づいていく。当たり前だが、債券は企業にお金を貸し、レバレッジは個人にお金を貸しているわけであり、どちらが最終的に信用力があるか、が①における収益を決める。

FXで投資をするときにレバレッジのリスクがよく指摘されるのは、①の関係がないからである。単に②を追求しているだけで、しかもその投資回収額は大きく変動する。

①を無視して②を狙うのはバブル期にはよく見られる現象であり、そしてより投機的である、とは言える。

次に借入コストについて考える必要がある。

当たり前だが、借入コストは安い方がいいに決まっている。だから安く借入ができる=信用力がある方がレバレッジを行うのには有利である、というのは間違いない。

次に借入コストが大きくブレるのはレバレッジとしては致命的なので、恐らく多くの人は安定的なコストを想定する。だが、本当に借入コストは全くブレないのだろうか。

借入コストがブレる、借入コストが高い、などは当然レバレッジ投資の成功のハードルを高くする。

期間のマッチング

レバレッジにおいてはリターンやコストに目が行きがちであるが、できるならば投資期間と借入期間は一致している方がいい。

5年の投資をするのに1年の借入を行ったり、1年の投資をするのに5年の借入を行ったりすることは、資産と負債がいつかズレることを意味している。

前者であれば、1年の借入を5回借り換えることになるが、その方がコストは安いと当初は思うかもしれない。しかしいざ借り換えるとなったときにコストが上がっているかもしれない。そのときに投資を手放すことはできないかもしれない。

後者であれば、1年後に別の同じような投資機会に恵まれればいいが、それがなければ、単にコストが5倍だったという話になるかもしれない。投資はすぐにやめられても、借入には固定コストもあり、すぐにやめるわけにもいかないかもしれない。

期間のマッチングは非常に重要である。

富裕層にとっての借入

借入はお金がない人が行う、というのは必ずしも正しくない。資金が潤沢にあるであろう富裕層の間でも借入(ファイナンス)は普通に存在をする。それは、レバレッジという考え方に立っているからである。レバレッジを使って大きく資産を伸ばすことは可能である。株式、債券、不動産、保険、など価値のあるものにはリスクをとってお金を貸し出す人が必ずいる。

ただ、全ての富裕層がレバレッジを正しく使えているわけでもない。投資の失敗を語る人が少ないように、レバレッジの失敗を語る人も少ない。果たしてレバレッジというリスクを管理し切れるのかどうか考えるべきは万人共通であると言える。

とりわけ金利が上昇してきた今、これまでのレバレッジ投資が果たして適切に行われたのか、またこれからレバレッジ投資に取り組むべきなのか、よく考えるべき局面に来ている、とは言える。

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