投資家として最も気にするのは“投資リターン”だと思いますが、果たしてどのくらい利回りがあれば投資家として納得できるのでしょうか。本稿では、利回り10パーセントのポートフォリオについて考えてみたいと思います。二桁のリターンを目線に持つことは果たして適切なのでしょうか。

さて、独立系でファイナンシャルプランニング/プライベートバンキングサービスを提供しております、宮脇健です。

「宮脇さんだったらどれくらいの利回りで運用してくれるのですか?」

初めてお会いして、資産運用の仕事をしています、と自己紹介したとき、この質問が来ることは意外と多いのですが、未だに正しいと思う回答を持ち合わせていません。というよりは、端的に答えるのは難しいのです。

心の中でだけ思う私の切り返しはこうです。

「あなたは今どれくらいの利回りを目指して運用しているのですか。」

いやいや、利回り勝負をしたいわけじゃないんですが、要は投資家としてのあなたが

“リーズナブルな”利回り目線

を持っているのかがこの質問をすれば見えてくるからです。

意地悪にも“リーズナブル”という言い方をしたのは、タイトルにある「利回り10パーセントのポートフォリオ」がいともたやすく実現できる時代もあれば、頑張れば頑張るほど失敗する時代もある、という含みがあります。時代に左右されない鉄壁の解があればいいのですけれども。

ポートフォリオの作り方は本来話せば長くなるのですが、ここではエッセンスだけをお伝えしたいと思います。

前提の共有

ポートフォリオというのは人によって違っていて当たり前だということはまず意識して欲しいです。これを意識しない人は意外と多いです。誰かの真似をするか、勝ち馬に乗ればいいんだと思っています。

もちろん、誰しも「必ず勝てる」「鉄板の運用」なんてものが欲しい気持ちにはなるものです。でも、必ず勝てる方法があるならみんなやってみんな勝ちます。だからそうではないんです。

誰かに任せるとしても、世界にはうじゃうじゃポートフォリオマネージャー(運用担当者)がいますから、一体誰が「優秀」なのか分からなくないですか?「優秀」の基準って何ですか?

いっそのことシンプルに、結果=リターンが全てであるということにしてみよう、という言い分は正しいです。実際、その結果を得るために、リスクをどれだけ抑えたか、はたまた分散投資したのか集中投資したのかなんて、後から振り返ってみれば何の意味もないように思えてきます。だから多くの人はリターンの目線を先に持っています。

利回り10パーセント境界仮説

超絶たわいもない意見ですが、様々な方とお話しした結果、「利回り10パーセントを境界にして、一般領域か、魑魅魍魎の領域かが分かれる」という仮説を私は持っています。

というのは、利回り10パーセントを始めから期待している人とというのはつまるところ“リーズナブルさ”を差し置いて、リターンに重きを置きすぎている人が多いのです。それゆえに利回り10パーセントとか20パーセントとかが示されると、リスクに目を瞑ってでも飛び込んでしまうケースが増えるのです。もちろん、世の中にそういう商品がないとは言いませんが、「多少無理のある商品」に出会う確率が増えるからです。

最近だと保険証券を担保にして8年で年率10%、なんていうのも私自身聞きました。ギリギリお話しできる堅い方だと思ったりはしますが、リスクを理解しないと非常に難しい案件ではあります。

一桁リターンに関しては、単年度で実現するのにそんなにハードルが高いとは普通は思わないものなのです。聞いてみましょう、そんなに難しくないよね?と言ってくる人は、大体の場合はこの“継続”が存在しません。複利だ複利、と言っていても、継続して実現することはそれだけ難しいのです。

投資においてはプロセスの話をしよう

もちろんリターンの目線はとても大事です。なぜなら、漠然と「儲けたい」と思っているのではなく、その人にはきっと「なぜそのリターンが欲しいか」という投資の目的がその裏側にあるはずだからです。

ただ、投資において一番大切なことは、

リターンを生む「プロセス」に納得ができるか

どうかだと私は思っています。

ポートフォリオでなくても、この「プロセス」の見極め方を磨くことで、儲け話に飛びついて詐欺にあうことも減らせるかもしれません。

なぜプロセスが大事なのか

理由は2つあります。

① 将来リターンが不透明だから

② 同じリターンを達成するためには色んな方法があるから

普通の人間は①を凄く嫌います。だから、「利回り△%保証」と言われると安心してしまいます。でも過去にやって成功したことに、“再現性”があるのであれば、将来の不透明さは改善されます。また同じことをやれば同じ成功が収まるからです。だからプロセスが大事なのです。

仮に利回り保証がついて①がクリアできたとしても、やはり②は無視してはいけません。利回りが保証できるのはなぜなのか、そして保証できるカラクリは何なのかを考えることです。そうすると、投資の持つリスクが見えてきます。一方、多くの投資はリターンが保証されていませんから、どういう方法でそのリターンを達成するのかを考え、それは実現しそうか、という評価をします。

なのでここでは、同じリターンを得るための複数の方法について話をしたいと思います。

米ドル1mln(約1億円)で利回り10%のポートフォリオを考える

プロセスの大切さを理解するために、いくつかのポートフォリオを紹介しますので、ご自身にとってどれが“しっくりくる”のかを考えてみてください。どれも利回り10%であることを忘れないでくださいね!

ポートフォリオ① 現物債券 100%

現物債券のみで構成したものです。債券価格は動きますが、満期まで持つのであれば、購入した時点で利回りは確定です。あとはデフォルトしないことだけを願います。

現物債券はあまり小さな金額では購入できませんので、4〜5銘柄くらいが目安です。

バイ&ホールドでは保有コストはかかりませんが、昨今の金融環境で現物債券のみで年率10パーセントは正直言って難しいとは言えそうです。

ポートフォリオ② 長期投資型 ファンド100%

様々な戦略に投資できるファンドの特徴を活かして、ファンドマネージャーを分散させることで、それぞれのファンドではリスクを積極的に取りにいきます。最近ではファンドの中でも保有コストが下がってきているものもあるので、長期投資に向いているものを選び、一部(20%くらい)はプライベートエクイティファンドなど、流動性リスクをとるものにしてみてもいいかもしれません。ファンド自体が分散が効いているので、4〜5銘柄くらいで十分です。

ポートフォリオ③ バランス型(保守的)ETF100%

小さな金額から購入できるETFの特徴を活かして、多くのETFに分散投資します。ただし、どんなに多くても15銘柄くらいがいいでしょう。

銘柄は原理的に増える見込みがありつつも、保守的なものを選び、可能な限り入れ替えは行わないことにします。保有コストを抑えられるのがポイントです。

ポートフォリオ④ バランス型(積極的)ETF80%、現金20%

様々なインデックスの選択肢があるETFの特徴を活かして、特定のセクターやアセットクラスに傾けたポートフォリオを組みます。ついつい色んなものに目がいきそうですが多くても10銘柄くらいがいいでしょう。

リスクを積極的に取りにいきますので、リターンがより上下にブレる可能性が高まります。市場環境を見ながらリバランスをしていきますので、現金を一部に保有します。保有コストは低めです。

ポートフォリオ⑤ 株式50%、現金50%

株式を中心に構成したものです。例はインデックスで構成していますが、比較的株価の安定した大型株でも構いません。景気サイクルの影響も色濃く出るので、リターンは大きく上下にブレる可能性があります。株価が下がったときに買い増せるよう、現金を持っておきましょう。適宜リバランスをしていきます。

管理のしやすさから、10銘柄程度が良いですが、長期保有に適した優良株を選ぶことがポイントです。株式で10%か、と聞こえてきそうですが、実はそんなに簡単なことではありません。

最初の質問に戻って、どのくらいの利回りで運用したいか

どうでしょう?ご自身が思い描くものに近いものはありましたか?そしてそれはなぜですか?出来るだけご自身の言葉で口に出して語ってみることをお勧めします。

上で紹介した5パターンに誰もが選ぶべき正解はあったかというと、答えは「ない」です。なぜなら市場環境次第では、リスクをとった人が勝つ場合もあれば、リスクを取らなかった人が勝つ場合もあるからです。

私の場合、お客様には細くても長いお付き合いをお願いしています。一朝一夕に出来上がった関係ほど、投資において脆弱なものはないと私は思うからです。過度に信じるでもなく、過度に疑うでもなく、お互いの視座が近い状態にあればきっとよい投資ができると思います。

もちろん「私はこのように運用します。」と質問にまっすぐ答えることもできます。なぜなら、投資一任で、お客様から大事な資産をお預かりする立場にあるからです。

でも、もう一つ大事にして欲しいこと、そして私が必ず聞くであろう質問は「あなたはどう運用なさりたいですか」です。その理由が、今回の「プロセス」の話を通じてご理解いただけていたら幸いです。

「プロセス」にご納得いただいたうえで、金融市場を見て、ファンドを選んだり、ETFを組み替えたりするのはまさに私の仕事ですから是非ご相談ください。納得がいくまでは取り組まないに限ります。お客様との会話を通じて、もう少し利回りの目線を上げられそう、といった話はもちろんいたします。

船に例えるならば、いわば船長がお客様、私たちは航海士なのです。資産運用はギャンブルではありませんから、目的地までお客様を案内できるよう、精一杯努めて参ります。