香港を代表する企業家である李嘉誠が築いた長江グループの不動産部門、長江実業集団(CK・アセット)。世代交代後の舵取りには逆風が多いが、独特の事業展開には注目したい。

サマリ

長江実業集団(CK・アセット・ホールディングス、CK Asset Holdings Limited)は、2015年に設立された、不動産開発業者で、香港を本拠とし、イギリス領ケイマン諸島に登記がある。

前身は1950年創業の長江実業(Cheung Kong Holdings、元1:HK)にあり、2015年に同社がその関連会社であった和記黄埔(Hutchison Whampoa、旧13:HK)と合併したことで長江和記実業(CK・ハチソン ・ホールディングス、1:HK)が新会社として誕生、上場した。

このとき、不動産事業は切り離され、長江実業集団(CK・アセット・ホールディングス、1113:HK)が分離上場したものである。

厳密には2015年に分離した際の名称は長江実業地産(CK・プロパティ・ホールディングス)であったが、その後不動産の売却が進み、インフラ事業への投資を盛んに行ったことを踏まえ、2017年に、長江実業集団(CK・アセット・ホールディングス)に名称変更を行った。

創業者は李嘉誠(Sir Li Ka-shing、り かせい)であり、長江実業を香港最大の企業集団にのし上げた「超人」の異名を持つ。アジア全域で最も裕福な人物とも言われる。

2018年3月に、李嘉誠は89歳にして現役引退を表明し、同年5月には長男の李沢鉅(ビクター・リー)に取締役会首席の座を引継ぎ、自らは会長職に就いた。30年以上にわたってグループ経営に携わってきたビクター・リーではあるが、超人の引退の影響は決して小さくはなかったとされる。

CK・アセット・ホールディングスは長江グループの中で不動産事業を受け持つ。

中核事業は不動産開発、不動産REIT運営、ホテル経営などであり、一部航空機リースも取り扱う。

香港上場REITはHui Xian REIT(87001:HK)、Fortune REIT(778:HK)、Prosperity REIT(808:HK)の3つを保有する。香港内のホテルで有名なのはHarbour Grand HotelやSheraton Hong Kongなどである。2019年に英パブ運営グリーン・キングを買収したのも記憶に新しい。

李嘉誠は退任前から、「脱・中国」「脱・香港」を進めていたとされており、それゆえに、中国・香港での売上寄与が少ないのが特徴。象徴的であったのが、2017年に香港島中心部にある、「中環中心(ザ・センター)」と呼ばれる73階建ての高層ビルの売却であった。

特徴

筆頭株主:李嘉誠(複数のトラストや財団を経由) 約45%

同銘柄は引き続き、李ファミリーによる家族経営銘柄であり、株価下落局面でも自己株買いが積極的に行われている。

配当利回り:4 – 6%程度

外部格付け:Moody’s A2 / フィッチ A(2021年11月時点)

株価推移

TradingView提供チャート 1113 CK ASSET

最近のトピック

米中対立などを背景に、長江実業の株価は下落が継続したため、2020年、李嘉誠やビクター・リーは数度にわたって、CK・ハチソン・ホールディングス、そしてCK・アセット・ホールディングスの株式の買い増しを行っている。

長江グループは英国におけるプレゼンスを近年高めてきたことにより、Brexitの影響で、英ポンドや英経済に不透明感が高まっていることがリスク要因として挙げられている。

ニュースピックアップ

李嘉誠氏の「長江実業」、上海の大型不動産を売却

東洋経済オンライン

香港の李嘉誠氏ら一族、CKアセットの保有比率引き上げ

日本経済新聞

長江実業集団、香港の高層ビルを5900億円で売却

日本経済新聞

香港のCKアセット、英パブ運営グリーン・キング買収へ – 3500億円

Bloomberg

Li Ka-shing’s CK Hutchison, CK Asset first-half profits hit as coronavirus pandemic weighs on businesses

South China Morning Post

*本稿の内容はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、当該銘柄の売買を推奨するものではありません。

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