「悪い円安」が起こると言われ、実際に急速な円安が進行。「インフレ懸念」があると言われて、実際にインフレが進行。

もちろんそうならなかった可能性もあるが、果たしてこれらのリスクに備えられている投資家はどのくらいいるのだろう。そして慌ててリスクに備えようとしても上手くいかない、と感じている人も多いのではないだろうか。

円安の説明要因

そもそも外国為替とは異なる2国の通貨の相対的な関係を表しているにすぎない。天秤のようなものだとすれば、大きくバランスが崩れるときというのは、どちらかに理由があるわけだ。

その瞬間において等価なものが、時間を経て動く要因としてはシンプルには金利差が挙げられる。2022年のテーマは米国の利上げであり、2021年には予想されていなかった規模とスピードで利上げされるという“予想”が出ている。

もちろん、実際に利上げがあったことは重要であるが、外国為替はこの“予想”にすら反応して動いていることが分かる。逆に、日本サイドは、利上げの予想がなく、そして実際に利上げもないということが両国の金利差を拡大に導いている。一見すると、円安は既定路線であるように思える。

だが、為替の説明要因とは、後からしか与えられないことの方が多い。これから先も円安なのか、またそれが数ヶ月先の話なのか、数年先の話なのか、明確な答えは誰も知らない。

為替の変動は大きい

外国為替において、本源的に価値を高め続ける通貨というのは存在しない。先に、天秤であると述べたとおりである。だからこそ、人々の心理は非常に大きく揺れ動き、為替の変動もまた大きくなる。

ほとんど動いていなかったように見えた為替が突如として動き出したとして、昨日と今日で決定的に何かが異なっているのだろうか。そういうわけではないことの方が多い。

動くものに対して投資すれば短期的に利益を上げられる可能性は高まる、しかし同時に短期的に損失を抱える可能性も高まる。いわゆるFXトレードがあまり投資初心者向けでない理由はここにある。

為替変動に備える

残念ながら、為替の水準を当てることは簡単ではない。為替は単純な生き物ではないのだ。

ただ、為替変動があるとどのような影響を受けるのかは知っておいた方がいいし、備えられるのだとすればそうした方がいい。当てられないと同時に、放っておいても動くのを止められはしないのだから。

シンプルな解としては、やはり資産の一部を外貨建てにしてみることである。

何度も天秤だと言っているとおり、バランスさえとれば動きは抑えられる。

ここで気をつけて欲しいのは、例えば米ドルを保有するからにはそれで利益が出なければならない、これからの円安に賭けるのだという意識を持ってはいけないことである。

円高でも構わない。円安でも構わない。とにかく米ドルを持つことによって、外国為替のリスクが減ったのだ、という感覚を理解してもらいたい。

急激な円安進行の心理的効果

1ヶ月前は円高だった、このことは人々の心に強く印象付けられる。もし何か損をした感覚があるのなら、じっと耐えればまた1ヶ月で元の位置に戻るのではと期待してしまうし、もし何か得をした感覚があるのなら、これを機に何かしてやろうと思う人もあるかもしれない。棚ぼた的意識である。

このような感覚は数ヶ月もすれば実は薄れていくことが知られている。

薄れていくというのは元に戻るわけではなく、単純に今の状態を受け入れてしまうだけのことである。先月も先々月も同じ為替レートだったなら、来月もやはり同じなのだろう、そんな風に人間は思う。

もちろん、実際に円安で恩恵を受けないわけではないが、結局のところ、“得/損をした”感覚というのは長続きはしないし、実はそれでいいのである。衝動的にやるべきこと、というのは基本的に多くない。

外貨で資産を持つ

外貨建ての資産を持つ方法は色々あるが、結局のところ外貨であるという一点を除いて、考えることは円貨建ての資産に対するアプローチと何一つ変わってはならない。投資対象は預金かもしれないし、債券や株式かもしれない。株式にしてもファンドなのか、巨大な企業の株式なのか、考えることはいくらでもある。

外貨で資産を持つモチベーションが為替リスクの排除にあったのであれば、一気に難しいことを考える必要はない。外貨で外国の株式に投資をすれば、外貨に投資をしたのが悪かったのか、外国の株式に投資をしたのが悪かったのか分からなくなることだってある。

米ドル建て運用の幅広さ

特に海外の金融機関を利用すれば気づくことだが、米ドル建てでの運用は世界的に見て極めて一般的である。

発行されている株式の時価総額でみても、債券の価値でみても、あるいは外国為替市場での取引をみても、米ドルが圧倒的に多い。もちろん、この米ドルの基軸通貨としての地位が未来永劫続くとは限らないが、少なくとも今は主流であり、そして近未来もそうであると考えられる。

日本で流通するのは日本円である。だから日本人である限り日本円をよく目にする。これは確かにそうだ。

しかし、その日本円が資産運用の世界において固執すべきほどに強大な存在かと言われると残念ながらそうではない。一旦そこから離れて見てみるだけで、幅広い選択肢があることに気づく。

利益を上げるための外貨投資ではなく、資産を守るための外貨投資に意識を向けてみてはいかがだろうか。

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