海外生活は金融面でのプランニング(ファイナンシャルプランニング)をしっかりすれば素晴らしいライフスタイルと将来への適切な備えができるが、果たしてそれはどのようなものか、ケーススタディとして一例を紹介したい。
目次
海外生活における気づき
ロンドンに住んで約5年、突然やってきたのはドバイへの転勤であった。当時はドバイへの魅力にも気付かなかったが、2年経った今は違う。
ドバイは驚きの連続であった。何より、熾烈な暑さのせいで、スーツを着ることがなくなったのだが、これほど身が楽になるとは思っていなかった。駐在員で構成されるコミュニティがそこにはある。そこでは、ネットワーキングにしてもソーシャライジングにしても多種多様な文化が入り乱れる。充実感がものすごい。
確かに、生活費は高いが、税金がないことにより、将来の資産目標を達成することの障害にはなっていない。
海外転勤をどのような理由で選んだにせよ、出向だったにせよ、退職したにせよ、あるいはただ単に太陽を求めて逃げ出してきただけにせよ、金融面での効果的なプランニングをしておけば、ライフスタイルは保つことができるし、金融資産を将来のためにも有効に活用することができると思う。
人生目標の設定
人生を計画するにあたって、その人生を通じてあなた自身が一体何を欲しているのかを理解することは非常に重要である。例えば、人生目標を短期、中期、長期の目標に分けてみよう。
それは自分特有のものでなければならないが、同時に達成することが理論的に可能であることは大切だ。人生おける目標の典型的な例、自分と家族にとって最も大切なことを挙げてみよう。
- 短期 5年以内
- 日本に家を買う
- 海外生活を延長する
- 退職に向けての貯蓄
- 高齢の両親のサポート
- 中期 10年以内
- 早期退職
- コンサルタントになる
- 子どもの経済的自立支援
- 長期 10年超
- 田舎に大きな家を買う
- 長期的な健康維持
- 孫の教育への支援
目標とその達成に至るタイムラインに優先順位をつけることによって、どのくらいのお金がいつまでに必要になるかが推計できるだろう。
これによりロードマップを描くことができ、目標達成のための最も効果的な方法について、お金のマネジメントができるようになる。
ファイナンシャルプランニングを行う
計画を立てる、というのは、現在の収入と生活支出の記録をとり、資産目標のためにどのくらいの資金を置いておけるかを計算することである。
もちろん、生涯を通じて収入が同じであるというのはあり得ないが、資産計画を立てる上では組み込まなければならない要素だ。投資や年金、相続によって得られる収入もまた構成要素ではある。
それに対して、セカンドハウスの購入や、子どもの教育費用、帰国費用など、自分自身の短期的、中期的目標の費用とタイミングを考慮に入れる。
実際の行動に反映させる
例えば、いつかの時点で母国に帰るつもりがあるだろうか。もしそうだとしたら、考えなければならないのはそのアクションがスムーズであることと税金面で無駄がない状態にするための計画を立てることである。
通常、他の国の居住者になれば、現在の駐在ステータスでの資産状況はそのままではいられない。したがって、想定できる影響を検討することが肝心だ。
税金面の扱いは当然個々人によって異なるし、将来変わりうるので、専門家のアドバイスを仰ぐことは大切になってくる。税金のアドバイスは税理士のような堅い存在でなくてもよく、ウェルスマネージャーのような、その分野の知見を持っている人であれば、正しい方向に導くことはできる。
例えばもし日本に帰国するつもりがあるのなら、国民年金保険への支払いは継続することになる。加えて、帰国にあたって日本でそれなりの時間を過ごすことになれば、意図せず日本居住者のステータスを得てしまう可能性がある。
もし暖かい気候を好むのであれば、香港は人気があるし、香港では1年前もって税金を払うことになるのだが、この場合Tax Reserve Certificates(TRCs)というものを買うことで対処ができる。また、Pay As You Earn(PAYE)という方法で資金をとっておくこともできる。
ドバイや香港、シンガポールのような生活費の高さは長期的に負担になるが、寒くて暗い英国の冬に耐えられないのであれば、カナダやオーストラリアで働いたり投資家ビザを取得したりしてもいい。
退職後はキプロスやジブラルタル、マルタのような太陽の国で過ごしてもいい。最近はマレーシアに住むという友人の話も聞いた。
もし、価値が増加する資産を持っているのであれば、どこかの国で居住者となる前に、利益を確定させるために売却を考えるべきときがある。また、目標に沿って維持してきた、既にある年金や投資の見直しを行う。
もし日本に戻るつもりがあるならNISAにより税金の効率が良い仕組みを使うことを考えるべきである。もし海外で年金の受給資格を得ているのであれば、異なる国に移ることは伝えておく必要がある。
しかしながら税金とは一つの要素に過ぎない。
資金をどうやって貯めるか、不動産を買い、そして承継計画を練るか、また健康や子どもの教育にどれだけ支払うかは、計画の中に織り込まねばならない。
計画を着実に実行する
計画はできるだけ早く決めた方がいいが、計画ができたら終わりというわけではない。
定期的に見直しを行い、現在の状況が計画どおりのものなのか、目標にちゃんと向かっているかをチェックする必要がある。海外生活を満喫するには、資産そのものも将来目標に沿っていることを確認することが大事である。
必要性を感じたなら、自分で手を動かしてプランを練ってみることもいいし、もし自分だけでは途中で挫折しそうだというのであれば、ファイナンシャルプランナーの力を借りてみよう。