私自身がジャパンデスクを立ち上げて以来、何人かの方から

「香港金融で働きたいのですが、何かライセンスをとる必要はありますか。」

という質問をいただいたので、そのあたりの話をまとめてみたいと思いました。

香港金融ライセンス(保険編)- IAということで、香港で保険代理店系のIFAを営むにあたって必要となるライセンスについて解説します。

ライセンスと資格の違い

資格を持っていることとライセンスが有効であることは別の話です。ライセンス(License)と資格(Qualification)は勘違いしやすいので気をつけましょう。

資格を持っている状態とは、試験をパスして合格証があることを意味しています。大事ですね。

一方で、ライセンスが有効である状態とは、申請を出し、当該活動を行うにあたって適切な人物であるとして認可されていることを意味します。つまり、特定の金融活動を行うにあたっては、認可を受ける必要があるわけです。

ライセンスなしでの活動?

これは現実問題として存在することですが、ライセンスなしでの活動を行う人も中にはいます。

ただし、香港では最終的に金融商品や金融サービスを提供するにあたってはライセンスが必要ということになっていますから、ライセンスなしで活動する人がいたとしたら、必ず背後にはライセンスを保有する人がいることを意味しています。

どうでしょう、日本で不動産営業にあって、契約時の重要事項説明のところだけ、宅地建物取引業者の資格を持つ人が現れて資格証を見せながら説明してもらったことはないでしょうか。これと似たような現象です。

また、ライセンスがなくても提供できてしまう金融商品や金融サービスもあるでしょう。それは認可されていない金融商品や金融サービスである可能性があります。

もちろんそれが即座に違法というわけではありません。ただ、「香港金融当局として存在を認識して、規制に則っているというお墨付きは与えていない」ということだけを意味しています。

ただ、これらは表面的には分かりづらいので、逐一確認をするか、あるいはいずれにしても大切なことは「ただ説明する」ことよりも「契約者が重要事項を理解したことを確認する」ことなのかもしれません。

ライセンスを持ってさえいればいいのか

ただコレクションとして資格を持っている人が多いように、ライセンスを持っているだけの人もそれなりにいる、ということは言えそうです。

しかし、ライセンスを維持するためには、登録料を払わなければならないので、全く活動しないのにライセンスを維持するということはただの見栄なのかもしれません。

次にライセンスを持っていれば優秀と言えるか、というとこればっかりは「人による」です。

少なくとも当該活動を行うにあたって最低限の知識と経験を持っている、という証明であって、ピカイチであることの証ではないのです。そもそも、ピカイチな人にしかライセンスを与えないということであれば産業そのものが衰退してしまうかもしれませんからね。

逆にライセンスを持っていなくても、保険のことがやたらに詳しい人が周りにいたって不思議ではありません。ライセンスを持つということは職業としていることを明らかにするためのものにすぎません。

ライセンスの登録はライセンスを保有する企業を通して行う

資格を持っていたとして、実際にライセンスを登録するには、一定の規模で経済活動をし、ライセンス登録を行なっている企業を通して行うことになります。完全なるソロの活動は金融活動としては行えません。

きちんとコンプライアンス責任者から監視されなければならないからです。したがって、正規の活動をしている場合は、必ずどこかの組織で登録を行なっており、それは公開情報ですので誰でも確認することができます。

ちなみに、ライセンスを保有している企業がどのような経営方針なのか、は知っておくとよいかもしれません。特に保険代理店系のIFAの場合は、販売仲介手数料がメインの売り上げですから、数を売ってなんぼ、結果的に頭数を用意することになります。平均売上高×人数という簡単な計算です。しかも、トップセールスがいる傍ら、ほとんど売上をあげない人もいるかもしれません。

保険のライセンスの種類

さて、前置きが長くなりましたが、保険会社の一員として働く場合は、その保険会社の商品だけを取り扱う保険エージェント、IFAの一員として働く場合は、様々な保険会社の商品を取り扱う保険ブローカーとなります。

保険のライセンスは取り扱う保険によって分類をされています。

大きく分けると、

  1. 生命保険(Life Insurance)
  2. 損害保険(General Insurance)

の2つです。強制積立金(MPF)のライセンスは非常に近く、同様に保有する人もいますが、カテゴリとしては別ですのでここでは割愛します。

ライセンス申請を出すにあたっての資格はPEAKという団体(https://www.peak.edu.hk/en/)が日々行なっている試験に合格することによって得られます。選択式の試験でそれぞれ得点率70%以上で合格です。英語か中国語で受けることになるのは一つのハードルであり、しかもそれが保険独特の用語であるというのがもう一つのハードルです。

勉強さえすれば誰でも受かりますし、一度不合格だったからといって何かペナルティがあるわけではありません。試験は外部から旅行に来ただけの人でもパスポートさえあれば受けることが可能ですので、会場の雰囲気を知るためにもまずは試験日程を予約するところから始めてもよいと思います。

試験にはさらに細かく種類がありますが、①生命保険を取り扱いたい場合、②損害保険を取り扱いたい場合、③投資性のある生命保険を取り扱いたい場合にそれぞれ必要な組み合わせがあります。まずはどのような仕事をする予定なのか、決めるところがスタートです。もちろん全部合格してから考えても構わないとは思います。

保険のライセンスの申請方法

昔は保険ブローカーの場合、PIBAとCIBという2つの業界団体がライセンスを出していましたが、現在は保険監督庁(Insurance Authority, IA)が直接ライセンスを付与します。申請にあたっては香港居留証(HKID)が必要になるので、適切な労働許可を得てから、登録するライセンス企業を経由して申請をすることになります。

登録企業の手際にもよりますが、約1ヶ月を見ておけば問題はないでしょう。申請にかかる費用については会社持ちなのか個人持ちなのかが変わってきますので、しっかりと事前確認しておくことが必要でしょう。概ね経費として扱ってくれるところが多いようです。

保険ライセンスの維持

晴れてライセンスが付与された場合、名刺にライセンス番号を記載し、営業活動を堂々と行うことができます。その後は毎年一定の勉強(Continuous Professional Development, CPD)が必要になります。基本は1時間1CPDなので、自分の必要獲得CPDを確認して、クリアするようにしましょう。足りなければペナルティがつき、その後も一定期間は記録が残ることになります。

CPDプログラムの提供先は保険会社や学校、教育センターなど様々なチャネルがありますので、費用や中身などを見ながら好きなものに参加をすれば大丈夫です。保険ライセンスは一度取れば生涯有効というわけではなく、こうした絶え間ない努力のもと、都度更新されているものです。

また、2024年以降は、ライセンスの更新などの手続きには費用がかかるようになっています。必要のないライセンスは維持しない(取得させない)というのが今後のスタンダードになっていきそうです。

最後に

私の場合、生命保険を取り扱うことのできるライセンスを持っていますが、保険をバンバン売ろうというよりは、必要に応じて証券での運用(別途SFCライセンスが必要)や保険を使い分けますし、仮にどちらもお取引がなくても長期的な関係を築けるようファイナンシャルプランニングにも重点を置いています。

香港保険は商品力があるという声も聞きますが、単なるモノ売りになってしまって、お客様の人生を適切にサポートするという重要なコミットメントも失ってしまってはいけませんからね。

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