香港の保険って日本と少し違うよね、と感じる方が多いのですが、果たして何がその差、あるいはどのような差を生み出しているのか、おすすめされるその特徴、リスクなどを今回は考えてみたいと思います。

香港には世界中の保険会社が集まっている

香港の保険監督当局である、Insurance Authority(以下、IA)によると、香港には認可保険会社が合計164社(うち53社がLong Term Insurers、91社がGeneral Insurers、残りの20社が両方のビジネスを営む保険会社)あります(2021年1月13日時点)。Long Term Insuerersとは生命保険会社、General Insurersとは損害保険会社だとざっくりお考えください。それぞれの保険会社がどのような許可を得て保険業を行っているかはIAのホームページから一覧を確認できます。

ちなみに、日本の場合、生命保険会社42社、損害保険会社52社(金融庁公表、2021年1月4日時点)です。

数字を比べるだけで、香港という狭い地域にいかに保険会社が集中しているかが想像できます。日本も(加入率が高いという意味で)保険大国として世界的に有名なのですが、香港の人口はせいぜい700万人程度で、もちろん保険の人気もありますが、それだけでは説明できないですね。国内ビジネス以上に、グローバルなビジネスに積極的な会社が集まっていることは想像に難くないでしょう。ただし、全ての会社が日本人を受け入れてくれるとは限らない点、注意は必要です。

香港の保険が日本の保険と異なる点

香港では死亡保障の上限が高い

損害保険の場合、損失事由が確定した時点でその金額が決まりますから、色んな損害保険に入ったところで、損失額以上にお金が返ってくることは基本的にありません。一方、生命保険の場合、その人の命の価値がいくらだったかと問うことは簡単ではありません。したがって、複数の生命保険に入っている方も多いのではないでしょうか。

気をつけたいのは、日本の生命保険に関しては、加入者が亡くなった際に受取人が得られる死亡保障は3億円程度が上限になっているということです。過度な死亡保障は嫌われる傾向にあります。

一方、香港でサービスを展開する海外の保険会社についてはこの上限がグッと引き上がって100億円くらいまでのところもあります。もちろん死亡保障額が増えれば、保険料も増えるので、結局は必要と思う金額を設定することにはなりますが、シミュレーションをしてみると、死亡保障対比での総保険料支払額は香港の方が少ないという印象を受けますから、富裕層の方が利用されるのは納得できます。

香港の保険料が安く見える理由

日本円建てのものが多い日本の保険に対して、香港の保険では香港ドル建て、人民元建て、とりわけ米ドル建てが一般的なので、日本人からすると外貨建てであるという点は異なりますが、それでも安い保険料でしっかり増える、という印象はあります。同じ金額を払ったのに、20年も経てば倍くらいの差になってきます。日本にも拠点のある保険会社は多いですが、全く同じものを提供しているわけではないようです。一体なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

一つには、先述した、保険業界の競争度というのがありそうです。やはりたくさんの会社が競って顧客獲得をすれば、商品開発能力が高まり、自然と顧客にとってはメリットのある契約内容が増えると考えられます。香港はよくアジアの国際金融センターとして名前を挙げられますが、金融の中でも保険だけを取り上げるなら香港ほど栄えている都市は他にありません。保険は香港の一大産業なのです。

もう一つは、保険契約そのもののフレキシブルさでしょうか。日本であれば、死亡保障額が完全に未定のものは保険として扱われないため、例え変額保険であっても、一定の死亡保障額があるはずです。比較的契約がガチガチなのです。加入者からすれば加入時に出された数字がそのまま将来に受け取れるので安心感はありますが、保険会社としては保障額にコミットをするために費用をかけますので、このコミットを免除してあげるだけでやはり保険会社としての運営はとても楽になります。

また、毎月の保険料を変動させるような保険もあり、こうしたフレキシブルなものをユニバーサル生命保険といいます。本来、年齢等に合わせて、死亡確率は変動するわけですから、保険料も変動して当たり前というのがベースです。でも、保険料は一定の方がいいという顧客に合わせて、保険会社が固定の保険料をコミットすることでこれまた費用をかけています。保険会社も顧客ニーズに合わせて売れる商品を作っているわけです。でも、そうした努力は安い保険料という形で顧客に返ってくるわけではありません。

あとは、比較的自由に名義人や被保険者を変えることができたり、年齢によって保険料負担が変わることのない、貯蓄性の保険など、ライフステージの様々な局面に対応している傾向があります。

最後に、利回りがなぜいいか、というのが一番の不思議ポイントなわけですが、先ほど述べた契約としてのフレキシブルさが保険金の運用における「運用力」と結びついている、という考え方はできます。香港には運用会社も多数あります。一見すると、加入者が投資リスクを負っているように思えますが、各保険会社は毎年コミッティを開き、可能な限り毎年の利回りをなだらかにしようと試みるようです。結果として、運用利回りのアップサイドは抑えられる代わりに、ダウンサイドも相対的には少ない、ということになるようです。

香港の保険は節税の考え方は薄い

保険料以外で日本人の方が気にするとしたら、税負担が軽くなるかどうかでしょうか。もちろん節税効果はあった方がいいのですが、それが「保険を購入した方がいいかどうか」という意思決定に影響するのは個人的にはあまり好きではありません。とはいえ、「節税保険」があれだけ騒がれたのですから、税効果を意識していた人は少なくないというのが現実でしょうか。

もともと香港には贈与税も相続税もありません。所得税も世界的にみて決して高くないので、そもそも圧縮する税金がありません。まして、香港の保険は損金ではなく資産となるべきものと考えられていますから、「どれくらい増えるのか」しか気にしていません。節税という発想自体が多くないと考えられます。

多数派ではないと言っても、海外駐在員時代、あるいはもともと海外在住だった方は必要だと思って保険を購入されるケースも多いので、保険金を受け取るタイミングは日本というケースも少なくありません。ますますグローバル化する時代ですから、日本に限らず税制面での各国での対応は丁寧にしたいものです。

香港保険監督制度は洗練される過程へ

業界の動きに興味がある人は少ないかもしれませんが、少しだけ共有しておきます。

香港の保険監督当局はIAだと既に触れましたが、香港には以下の3つの自主規制組織(Self-Regulatory Organization、SRO)がかつて存在しており、特に保険仲介会社については、いずれかからライセンスを得て仲介を行うことになっていました。ただし、2019年9月23日からはIAが直接監督する体制に変わっています。

1 The Hong Kong Federation of Insurers(HKFI)

2 The Hong Kong Confederation of Insurance Brokers(CIB)

3 The Professional Insurance Brokers Association(PIBA)

現在は移行期間に入っており、名刺への記載の仕方やあるいは書類への記入方法も変わってきています。新型コロナウィルスの影響で多少移行スピードは緩やかになりましたが、方向性としては変わっていません。

この移行により、香港はより専門的でかつ透明性のある保険業界となること、またシステムインフラ面の向上、あるいは証券分野の監督局であるSFCとの連携強化などが期待されています。