投資は自己責任とも言われますが、果たしてご自身が商品内容を十分理解した上で意思決定をしている人はどれだけいるのでしょうか。確かに、自分で判断するよりは自分より詳しい誰かに勧めてもらった方がいい、と考える人はいます。実際そうかもしれません。

しかし、期待した通りの結果にはならず、かといって勧めてくれた人のことを責められるわけでもない、という状態になっている人をしばしばみかけます。なぜそんなことが起こるのか、本稿では考えてみます。

高い費用を払いすぎてしまう

金融商品の売買に絡む手数料には様々あります。購入手数料、信託報酬、売却手数料、成功報酬などです。もちろん金融商品の購入を通じて、買い手は利益を得ることを期待しており、そしてそれが手数料を上回ることができれば問題ないという人もいるでしょう。

しかし、高すぎる費用はすなわち期待利益に対するハードルを高めることに他なりません。あるいは、払った費用を取り戻すまでは解約できない、というある種のトラップのように働くことだってあります。

金融機関の担当者はあなたが払う費用がすなわち本人の、あるいは金融機関としての売上になりますから、「お勧めはありますか」という質問に対しては、売上を最大化するような提案をする可能性があるわけです。もちろんそれがお客様のためでないとは限りません。それに、サービスの対価としての費用を全面的に否定してしまってもいけません。担当者だって正当な報酬を受け取る必要があります。

しかし、金融商品の売買を通じて、どのような費用がどこで発生するのか、しっかりと情報開示を受け、費用について納得をすることもまた重要です。特に、予め埋め込まれた費用がある場合、直接顧客に請求していないがため、知らないか、あるいはよしとしてしまう傾向があります。

インセンティブ構造について考えない

費用について開示してもらったからといって何か意見があるわけではないという人もいると思います。しかし、担当者がどのようなインセンティブ=報酬を受け取るのかで、どのような提案をするか、あるいはどのような会話をするか、というのが変わっている事実は知っておくべきでしょう。

金融商品の売買で収益を上げているのであれば、当然売買を勧めてきます。預かり資産に対して一定の費用が発生しているなら、長く投資を継続することを勧めてきます。成功報酬が発生するなら、短期的に値上がりしやすいものを勧めてきます。考えてみれば当たり前の話です。

目の前の担当者が自分のことを考えてくれるいい人に見えても、そして実際いい人であったとしても、売上にならないことを提案し続けることは非常に難しいのです。

特に、相性の良い担当者と出会って、付き合いが長く続いて欲しいと思ったとしても、費用体系=報酬体系が売買に基づくものであれば、関係を続けるために売買をするしか術はなく、会うたびに何か取引を勧めてもらう関係にしかならないのです。

パーソナライズされていない

金融商品にはカタチがないので見落としがちですが、金融商品にも”自分に合ったもの”が存在します。運用して増やすだけじゃないのか、という気もしますが、実はそうではないのです。

どこかのアパレルショップに行って服を買うことをイメージしましょう。人形が着ているのは恐らく売れ筋の商品ですが、買いますか。あるいは店員さんにお勧めを聞いて買いますか。自分で探して気に入ったものを買いますか。

もちろん店員さんのセンスがよくて自分が考えたことのなかったものを勧めてくれ、結果満足することだってあります。よく似た話ではありつつも、金融商品の場合、服よりも長い付き合いになる傾向があること、金額的に大きいので気に入らなかったら捨てるというのがやりづらい点が異なっているようにも思います。

つまり、試しに何かを買ってみること自体は否定されませんが、より早い段階で、あるいはどの段階でも、“自分に合ったもの”について多くの時間を割くべきであることが分かります。

あまり時間を割かずに失敗が取り返しづらい状態になっているか、失敗したことを誰にも話さない人が多いのも特徴です。

しかし、そうしたパーソナライズされたものを勧めてもらうためにはまず自分自身について担当者に知ってもらう必要があり、同時に担当者があなたのことを知る必要がある、と考えていなければなりません。

頑張って自分のことを伝えたところで、あなたの人生に微塵も関心がなければ、やっぱり勧められるものは誰にでも勧めている同じもの、だからです。逆に、担当者があなたのことを知りたがったとしても、あなたが自分自身のことを何も話さなければ“自分に合ったもの”など提供されるはずがありません。

そもそも”自分に合ったもの”とは何かが分からない場合は、どんな金融商品がいいかを考える前に自分自身のライフプランについて考える必要があるわけです。

人生を誰かが決めてくれるわけではない以上、あなたが積極的にライフプランの策定に関わるべきであり、それは知りもしない金融商品の選択よりもストレスが少なく、かつより重要であることに気づくでしょう。

同時に担当者の頭の中からも、どんな金融商品がいいかという思考を取り除き、良いライフプランの策定に専念できるようにするのが肝心です。

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