円安が急速に進行している。このことから思い出されるのは過去に起こった資産の海外逃避である。何も円安が全てのトリガーだとは言っていないが、円安が一つのきっかけになる、というのも間違っていないようにも思われる。

円安を追いかける人たち

円安になった理由が資産の海外逃避だというならともかく、円安だから資産が海外逃避する、というのは必ずしもロジカルではない。円安なのだから外貨を日本円に換えればいいじゃないか、という人は一定数いるからだ。だが、人間の心理というのは不思議なもので、株価が下がり始めれば売却を試み、通貨が下がり始めれば、別の通貨を探し始めるものなのである。

追いかけて損をするか得をするかまでは分からないが、トレンドを追いかけようとするのは一つの特徴である。

なぜ資産が海外逃避するのか

もう少しロジカルな視点を持ってこよう。資産が海外逃避する最も素直な要因は、国内で投資機会が少ないことである。より高いリターンを求める上で、海外に投資機会が存在するならば海外に投資をしない手はない。実際に国内の株式よりも海外の株式に投資をする人は昔より増えたはずである。つまり、根本的なドライバーはここ数十年は何一つ変わっていない。実際に自分自身が投資先として海外を検討したかどうか振り返ってみるとよい。

人材の流出と資産の流出

ヒトや資産の流出を促す要因としてしばしば挙げられるのは以下のようなことだろうか。

外為規制の導入

今の日本には大きな障壁がないのが外為規制であるが、過去にはあったし、他のアジアの国では今でもある話である。別に憲法を改正しなければならないような大ごとでもないので、外為規制はそのニーズがあれば導入し得る。資産の流出が一部のニッチなトレンドくらいならなんてことはないが、これが国民全体に波及するなら大問題である。そのときになって焦って対処しても仕方がないのは預金封鎖などと同じである。時既に遅し、周りは火に囲まれている、ということになる前に対処すべきという考え方である。

こうした”懸念”は枚挙にいとまがないが、高いコストでないのであればやることに意味を見いだせるというのはあろう。

有利な税制

ヒトもお金もやはり有利な税制の国へシフトしやすい、というのは常にある。当たり前だが、働いて稼いだお金はできるだけ手元に残った方がいいし、ただ資産を持っているだけで課税されることをよしとする考え方はあまりない。単に税制がそうだからそうしているという状態から、他国で同じことをやったらもっと違ってくる、というのが分かった時点で人はアクションを起こす。税制というのは一つの流れを司っている。タックスヘイブンとオフショア地域に賛否はあれど、好まれるのもそれなりにロジカルなものなのである。

国際競争環境

そもそもヒトや資産が集まるところというのは国際競争環境として優れている場所であることが多い。何か特別なことをしなくても、そこを利用するだけで成長の機会があるのであれば、やはり魅力的である証拠になる。逆に、ヒトや資産が流出し始めるということは悪循環に突入することを意味するため、さっさと離れる方が勝ちということになる。最後に残ってババを引く意味なんてない。

日本の財政問題や、あるいは高齢化など社会が根本的に抱える問題に取り組んでいる間にも、世界はもっと成長し、産業を育てていく。技術や知識の面でどんどん差が開く、ということにもなりかねないわけだ。

最後に

海外逃避には感情的なものや経験的なもの、あるいは合理的なものなど様々な種類がある。たとえば戦時下を経験した人にとっては、国家による私的財産の接収は実際に起こり得るリスクとして認識されているかもしれないし、様々な制度の改正がその先の日本の未来への暗示に繋がっていると感じる若者だっている。

特に、土地に縛られて生活していない人にとっては万が一何かあったときのモビリティを確保するのは非常に重要なことなのかもしれない。資産の海外逃避は資本逃避(キャピタル・フライト)としても常に注目される。決して積極的な利益の追求だけにとどまらず、資産の保全、安全性を確保することに重きが置かれるものである。富裕層を中心に、よりよい環境を海外に求める動きが活発化・加速化する可能性は十分にある。そしてそれはどこなのか。

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